・未治療の切除不能局所進行性/転移性尿路上皮がん患者が対象の第3相試験
・イミフィンジ±トレメリムマブ併用療法の有効性・安全性を比較検証
・全患者における全生存期間はイミフィンジ+トレメリムマブ併用群で15.1ヶ月だった
2020年9月21日、医学誌『The Lancet Oncology』にて未治療の切除不能局所進行性転移性尿路上皮がん患者に対するファーストライン治療としての抗PD-L1抗体薬であるイミフィンジ(一般名:デュルバルマブ、以下イミフィンジ)±抗CTLA-4抗体薬であるトレメリムマブ療法の有効性、安全性を比較検証した第3相のDANUBE試験(NCT02516241)の結果がQueen Mary University of LondonのThomas Powles氏らにより公表された。
DANUBE試験とは、未治療の切除不能局所進行性転移性尿路上皮がん患者(N=1032人)に対するファーストライン治療として4週ごとに1500mg単剤療法を投与する群(N=346人)、または4週ごとに1500mg+トレメリムマブ75mg併用療法を最大4サイクル投与後、維持療法として4週ごとにイミフィンジ1500mg単剤療法を投与する群(N=342人)、または標準化学療法(ゲムシタビン+シスプラチン/カルボプラチン)を最大6サイクル投与する群(N=344人)に1対1対1の割合で無作為に振り分け比較検証した。主要評価項目は全患者とPD-L1の発現率の高い集団での全生存期間(OS)とした。
未治療の切除不能局所進行性転移性尿路上皮がんの予後は非常に不良であり、現在の標準治療後でも生存期間は短く、新しい治療選択肢の開発が必要とされている。以上の背景より、尿路上皮がんをはじめ複数のがん種で有用性が確認されている免疫チェックポイント阻害薬であるイミフィンジ、トレメリムマブの有用性を検証する目的で本試験が開始された。
本試験のフォローアップ期間中央値41.2ヶ月時点における結果は下記の通りである。主要評価項目であるPD-L1陽性群のOSはイミフィンジ単剤群14.4ヶ月(95%信頼区間:10.4-17.3ヶ月)に対して化学療法群12.1ヶ月(95%信頼区間:10.4-15.0ヶ月)、イミフィンジ単剤群で死亡(OS)のリスクを11%減少(HR:0.89、95%信頼区間:0.71-1.11、P=0.30)した。
全患者群のOSは、イミフィンジ+トレメリムマブ併用群15.1ヶ月(95%信頼区間:13.1-18.0ヶ月)に対して化学療法群12.1ヶ月(95%信頼区間:10.9-14.0ヶ月)と、イミフィンジ+トレメリムマブ併用群で死亡(OS)のリスクを15%減少(HR:0.85、95%信頼区間:0.72-1.02、P=0.075)した。
一方の安全性として、グレード3~4の治療関連有害事象(TRAE)発症率はイミフィンジ単剤群14%、イミフィンジ+トレメリムマブ併用群27%、化学療法群60%を示した。また、最も多くの患者で確認されたグレード3~4の治療関連有害事象(TRAE)はイミフィンジ単剤群でリパーゼ上昇2%、イミフィンジ+トレメリムマブ併用群でリパーゼ上昇5%、化学療法群で好中球減少症21%を示した。
重篤な有害事象(SAE)発症率はイミフィンジ単剤群9%、イミフィンジ+トレメリムマブ併用群23%、化学療法群16%を示した。なお、治療関連有害事象(TRAE)による死亡はイミフィンジ単剤群2人、イミフィンジ+トレメリムマブ併用群2人、化学療法群1人の患者で確認された。
以上のDANUBE試験の結果よりThomas Powles氏らは「未治療の切除不能局所進行性転移性尿路上皮がん患者に対するファーストライン治療としての抗PD-L1抗体薬イミフィンジ±抗CTLA-4抗体薬トレメリムマブ療法は、いずれも化学療法に比べて主要評価項目である全生存期間(OS)を改善しませんでした」と結論を述べている。
Durvalumab alone and durvalumab plus tremelimumab versus chemotherapy in previously untreated patients with unresectable, locally advanced or metastatic urothelial carcinoma (DANUBE): a randomised, open-label, multicentre, phase 3 trial(Lancet Oncol. 2020 Sep 21;S1470-2045(20)30541-6. doi: 10.1016/S1470-2045(20)30541-6.)