・早期トリプルネガティブ乳がん患者が対象の第3相試験
・抗PD-L1抗体薬テセントリク+化学療法の有効性・安全性を比較検証
・病理学的完全奏効率はテセントリク群58%に対してプラセボ群41%だった
2020年9月20日、医学誌『The Lancet』にて早期トリプルネガティブ乳がん患者に対する術前化学療法としての抗PD-L1抗体薬であるアテゾリズマブ(商品名テセントリク;以下テセントリク)+化学療法の有効性、安全性を比較検証した第3相のIMpassion031試験(NCT03197935)の結果がDana-Farber/Brigham and Women's Cancer CenterのElizabeth A Mittendorf氏らにより公表された。
IMpassion031試験とは、早期トリプルネガティブ乳がん患者(N=333人)に対する術前化学療法として2週を1サイクルとしてテセントリク840mg+パクリタキセル125mg/m2併用療法後、2週を1サイクルとしてドキソルビシン60mg/m2+シクロホスファミド600mg/m2併用療法を投与する群(N=165人)、または2週を1サイクルとしてプラセボ+パクリタキセル125mg/m2併用療法後、2週を1サイクルとしてドキソルビシン60mg/m2+シクロホスファミド600mg/m2併用療法を投与する群(N=168人)に1対1の割合で無作為に振り分け、主要評価項目としてITT解析集団、PD-L1発現率陽性群における病理学的完全奏効率(pCR)を比較検証した多施設共同二重盲検ランダム化の第3相試験である。
本試験のフォローアップ期間中央値20.6ヶ月(8.7-24.9ヶ月)時点における結果は下記の通りである。主要評価項目である病理学的完全奏効率(pCR)はテセントリク群58%(95%信頼区間:50%-65%)に対してプラセボ群41%(95%信頼区間:34%-49%)、テセントリク群で17%(95%信頼区間:6%-27%,P=0.0044)高率であった。
また、PD-L1発現率陽性群における病理学的完全奏効率(pCR)はテセントリク群69%(95%信頼区間:57%-79%)に対してプラセボ群49%(95%信頼区間:38%-61%)、テセントリク群で20%(95%信頼区間:4%-35%,P=0.021)高率であった。
一方の安全性として、グレード3以上の有害事象(AE)は両群間で大きな偏りはなく、重篤な有害事象(SAE)発症率はテセントリク群23%に対してプラセボ群16%を示した。
以上のIMpassion031試験の結果よりElizabeth A Mittendorf氏らは以下のように結論を述べている。”早期トリプルネガティブ乳がん患者に対する術前化学療法としての抗PD-L1抗体薬テセントリク+化学療法は、プラセボ+化学療法に比べて病理学的完全奏効率(pCR)を統計学的有意に改善し、安全性も良好でした。”
Neoadjuvant atezolizumab in combination with sequential nab-paclitaxel and anthracycline-based chemotherapy versus placebo and chemotherapy in patients with early-stage triple-negative breast cancer (IMpassion031): a randomised, double-blind, phase 3 trial(Lancet . 2020 Sep 18;S0140-6736(20)31953-X. doi: 10.1016/S0140-6736(20)31953-X.)