新たな放射性医薬品F-1515、神経内分泌腫瘍の適応で製造販売承認を申請ー富士フイルム富山化学ー


  • [公開日]2020.09.09
  • [最終更新日]2020.09.03

8月31日、富士フイルム富山化学株式会社は、膵臓、消化管、肺の神経内分泌腫瘍に対する新たな治療薬として、放射性医薬品であるF-1515(一般名:lutetium (Lu177) oxodotreotide)の製造販売承認を厚生労働省に申請したと発表した。

神経内分泌腫瘍は、ホルモンやペプチドを分泌する役割を持つ神経内分泌細胞に発生する腫瘍で、全身のあらゆる臓器に起こる。特に発生頻度が高い臓器は膵臓、消化管、肺である。治療は、手術が第一選択だが、進行し切除できない状態であれば薬物療法が行われる。しかし、薬物療法では治療薬の選択肢が少なく、神経内分泌腫瘍のアンメットメディカルニーズは高い。

神経内分泌腫瘍の治療薬は、神経内分泌腫瘍に高頻度で発現しているソマトスタチン受容体を標的とする場合が多い。F-1515はソマトスタチン類似物質に放射性同位元素であるLu177を標的とした治療用放射性医薬品であり、放射性リガンド療法の一種であるペプチド受容体放射性核種療法(PRRT)に用いられる。

今回の申請は日本国内において実施された第1/2相臨床試験の結果に基づくもの。同試験では、ソマトスタチン受容体を発現している膵臓、消化管、肺における神経内分泌腫瘍の日本人患者において、その有効性安全性を確認した。また今回、併用する輸液LysaKare(一般名:L-リシン塩酸塩、L-アルギニン塩酸塩、国内開発コード:F-1520)も合わせて製造販売承認申請を行った。

F-1515(Lutathera)とは
F-1515は、ソマトスタチン類似物質に放射性同位元素のルテチウム177を標識した治療用放射性医薬品。放射性リガンド療法の一種であるPRRTに用いられる。富士フイルム富山化学株式会社は2015年に、ノバルティス社のグループ会社であるAdvanced Accelerator Applications International S.A.(以下 AAA社)と、PRRTに用いる薬剤「Lutathera(R)」の日本国内における開発・販売権に関するライセンスを締結し、F-1515として臨床開発を進めていた。Lutatheraはこれまでに欧州32カ国、米国、カナダ、イスラエル、韓国、シンガポール、香港などで承認を取得している。

LysaKareとは
Lutatheraを用いた治療による腎臓の被曝を軽減するための輸液。

ソマトスタチンとは
視床下部、脳下垂体、膵臓のランゲルハンス島デルタ細胞などで産生される、14個のアミノ酸から構成されるペプチドホルモンであり、成長ホルモンやインスリンなどの分泌を抑制する作用を持つ。神経内分泌腫瘍ではソマトスタチン受容体が多く発現しているため、神経内分泌腫瘍の治療標的とされている。

放射性リガンド療法
腫瘍に発現している受容体に対して特異的に結合する化合物に、放射性物質を投与しそれを標識として体内から病巣に放射線を照射する治療法。放射性リガンド療法には、PRRTなどがある。PRRTは、腫瘍に発現しているペプチド受容体を標的とする治療法である。

参照元:
富士フイルム富山化学株式会社 ニュースリリース

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