イミフィンジが進展型小細胞肺がんの適応を取得ーアストラゼネカー


  • [公開日]2020.09.02
  • [最終更新日]2020.11.25

8月21日、アストラゼネカ株式会社は、イミフィンジ(一般名:デュルバルマブ、以下イミフィンジ)が進展型小細胞肺がん(ES-SCLC)に対して化学療法(エトポシド+カルボプラチンまたはシスプラチン)との併用療法で厚生労働省より適応拡大の承認を取得したことを発表した。

イミフィンジは抗ヒトPD-L1モノクローナル抗体であり、PD-L1に結合し、PD-L1の受容体であるPD-1とCD80の相互作用を阻害することで、抗腫瘍免疫反応を誘発する。

今回の承認は、ES-SCLCの一次治療として、イミフィンジ+化学療法とイミフィンジ+化学療法+免疫チェックポイント阻害剤トレメリムマブ)と化学療法単剤を比較検証した第3相CASPIAN試験の2019年6月時点の中間結果に基づく。同試験において、主要評価項目である全生存期間OS)はイミフィンジ+化学療法群13.0ヵ月、化学療法単独群が10.3ヵ月と統計学的有意に延長し、死亡リスクを27%減少(HR:0.73、95%信頼区間(CI):0.59-0.91、p=0.0047)した。また、客観的奏効率ORR)は化学療法単独群58%に対してイミフィンジ+化学療法群が68%であり、化学療法にイミフィンジを上乗せすることで、肺がん関連の症状悪化までの期間を延長することが示された。

アストラゼネカのエグゼクティブバイスプレジデント兼オンコロジービジネスユニット責任者Dave Fredrickson氏は「今回のイミフィンジの承認により、日本の進展型小細胞肺がん患者さんに重要な新しい免疫治療薬の選択肢を提供できることとなりました。ES-SCLC患者さんの予後は特に悪く、5年を超えて生存する割合は僅か2%です。イミフィンジと化学療法との併用療法後のイミフィンジ単独療法による維持療法期は4週間ごとの投与となる利便性の高い治療法であり、生存期間の延長と持続的な奏効をもたらします」と述べている。

CASPIAN試験の最新の解析によると、追跡期間中央値が2年を超えた時点におけるOSはイミフィンジ+化学療法群で12.9ヵ月、化学療法単独群で10.5ヵ月(HR:0.75、95%CI:0.62-0.91、p=0.0032)で持続的な有効性が示された。また、安全性に関しては既知の安全性プロファイルと同様であり、イミフィンジに関連した抗薬物抗体陽性の患者はいなかった。

なお、イミフィンジは同時化学放射線療法後の限局型SCLCを対象とした第3相ADRIATIC試験も進行中である。

小細胞肺がんについて
肺がんはがん死亡の約20%を占めるがん腫であり、日本では2018年に約12万人が肺がんと診断された。肺がんは非小細胞肺がん(NSCLC)とSCLCに大別され、約15%の方がSCLCである。また、SCLCの約3分の2の患者は進展型と診断され、診断時に既にがんが肺の大部分またはほかの部位に広がっており、5年生存率は6%である。

イミフィンジについて
抗PD-L1抗ヒトモノクローナル抗体であり、PD-L1に結合する。PD-L1とその受容体であるPD-1、CD80の相互作用を阻害することで、腫瘍の免疫逃避機構を抑制する。SCLCだけでなく、他の固形がんにおいても単剤療法、抗CTLA4モノクローナル抗体であるトレメリムマブとの併用療法も検討されている。

CASPIAN試験について
ES-SCLC患者(N=805人)に対し、一次治療としてイミフィンジ+化学療法群とイミフィンジ+化学療法+トレメリムマブ群と化学療法群に分け、有効性と安全性を検証した第3相国際多施設共同試験。イミフィンジを投与する群には3週間1サイクルとして固定用量であるイミフィンジ1500mgを4回投与し、その後は病勢進行するまで4週間1サイクルとして投与した。中間解析、最新の解析において、イミフィンジ+化学療法群は化学療法単独群に対してOSを統計学的有意に延長した。しかし、イミフィンジ+化学療法+トレメリムマブ併用療法では主要評価項目であるOSは達成しなかった。

参照元:
アストラゼネカ株式会社 プレスリリース

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