5月28日、メルクバイオファーマ株式会社(以下メルクバイオファーマ)とファイザー株式会社(以下ファイザー)は、共同で開発した抗PD-L1抗体薬バベンチオ(一般名アベルマブ(遺伝子組換え)以下バベンチオ)が局所進行または転移性の尿路上皮がんに対する一次化学療法の維持療法として適応追加を申請したことを発表した。
バベンチオはPD-L1と呼ばれるタンパク質を阻害するヒト型抗体(抗PD-L1抗体)であり、同剤がT細胞のPD-L1に結合することにより、免疫反応による抗腫瘍作用が活性化される。同剤は米国において局所進行または転移性の尿路上皮がんに対する一次化学療法の維持療法の治療薬として2020年4月に適応拡大の申請が行われていた。
今回の申請は、プラチナ製剤を含む化学療法後に病勢進行がみられなかった局所進行または転移性の尿路上皮がんを対象に、維持療法としてバベンチオを投与した国際他施設共同第3相試験(JAVELIN Bladder 100)の結果に基づいている。 同試験は日本も参加しており、バベンチオとベスト・サポーティブ・ケア(BSC)の併用療法群が、BSC単独療法群に対し主要評価項目である全生存期間(OS)を有意に延長した。
メルクバイオファーマ取締役研究開発本部長の松下氏は「本臨床試験で行ったバベンチオを用いた維持療法はこれまでにない概念であり、本治療が標準治療として定着することを期待しており、この度の申請は患者さんのベネフィットを向上する機会を創出するための、新たな第一歩です」と述べている。また、ファイザー社長である石橋氏は「「尿路上皮がんは進行すると治療が難しく、全生存期間(OS)を改善する新たな治療法が求められています。バベンチオは、進行尿路上皮がんに対する一次化学療法の維持療法として、臨床試験で統計学的に有意なOS延長が認められた最初の免疫チェックポイント阻害薬で、速やかに新効能追加を申請できたことを嬉しく思います。新たな治療選択肢を必要とする患者さんとご家族により多くの希望をお届けできるよう、今後も革新的な薬剤の開発を進めてまいります」と述べている。
尿路上皮がんとは 膀胱がんの約90%を占め、転移性の場合の5年生存率は5%程度である。複数薬剤を組み合わせた化学療法が、進行尿路上皮がんに対するファーストラインの標準治療であり、治療初期の奏効率は高い。しかし、長期持続および完全走行はまれで、多くが治療開始から9ヶ月以内に進行がみられる。
参照元:ファイザー株式会社 プレスリリース