・エンハーツ単剤療法の有効性・安全性を3つのコホートで検証
・主要評価項目であるコホートAにおける客観的奏効率は45.3%だった
2020年5月29日~31日、バーチャルミーティングで開催される米国臨床腫瘍学会(ASCO 2020)にて複数治療歴のあるHER2陽性RAS遺伝子陰性の進行性大腸がん患者に対するトラスツズマブ デルクステカン(商品名エンハーツ;以下エンハーツ)単剤療法の有効性、安全性を検証した第2相のDESTINY-CRC01試験 (NCT03384940)の結果がUniversità degli Studi di Milano and Niguarda Cancer CenterのSalvatore Siena氏らにより公表される。
DESTINY-CRC01試験とは、複数治療歴のあるHER2陽性RAS遺伝子陰性の進行性大腸がん患者に対して3週を1サイクルとしてエンハーツ6.4mg/kg単剤療法を投与し、主要評価項目として客観的奏効率(ORR)、副次評価項目として病勢コントロール率(DCR)、無増悪生存期間(PFS)、全生存期間(OS)などを検証した多施設共同非盲検下の第2相試験である。なお、患者はHER2ステータス別に3コホートに分かれており、コホートA(IHC3 +or IHC 2+/ISH+)、コホートB(IHC 2+/ISH−)、コホートC(IHC1+)である。
本試験に登録された患者背景は下記の通りである。コホートA 53人、コホートB 7人、コホートC 18人。年齢中央値は58.5歳(27-79歳)。性別は男性52.6%。腫瘍部位は左側もしくは直腸がん89.7%。前治療歴中央値は4レジメン(2-11レジメン)。
以上の背景を有する患者に対する本試験の結果は下記の通りである。主要評価項目であるコホートAにおける客観的奏効率(ORR)は45.3%(95%信頼区間:31.6%-59.6%)、奏効の内訳は完全奏効(CR)1人、部分奏効(PR)23人。一方、コホートB、コホートCにおいて奏効は確認されなかった。病勢コントロール率(DCR)83.0%(95%信頼区間:70.2%-91.9%)。なお、前治療として抗HER2抗体薬が投与されていた患者16人の内7人の患者における客観的奏効率(ORR)は43.8%(95%信頼区間:19.8%-70.1%)を示した。
副次評価項目である奏効持続期間(DOR)中央値は未到達(95%信頼区間:4.2ヶ月-未到達)。無増悪生存期間(PFS)中央値は6.9ヶ月(95%信頼区間:4.1ヶ月-未到達)。全生存期間(OS)中央値は未到達であった。
一方の安全性として、グレード以上の治療関連有害事象(TEAE)発症率は61.5%(N=48/78人)。10%以上の患者で確認された最も一般的な治療関連有害事象(TEAE)は好中球数減少21.8%、貧血14.1%。また、7人(9.0%)の患者で薬物の中止につながる治療関連有害事象(TEAE)が確認された。
DESTINY-CRC01試験の結果よりSalvatore Siena氏らは以下のように結論を述べている。”複数治療歴のあるHER2陽性RAS遺伝子陰性の進行性大腸がん患者に対するエンハーツ単剤療法は、非常に良好な客観的奏効率(ORR)を示しました。一方、安全性は既存の臨床試験で確認されているエンハーツの安全性プロファイルと一致しておりました。”
A phase II, multicenter, open-label study of trastuzumab deruxtecan (T-DXd; DS-8201) in patients (pts) with HER2-expressing metastatic colorectal cancer (mCRC): DESTINY-CRC01.(2020 ASCO VIRTUAL SCIENTIFIC PROGRAM,Abstract No:4000)