RetevmoがRET遺伝子に起因する進行性肺がんおよび甲状腺がんに対する承認をFDAより取得ー米イーライリリー・アンド・カンパニーー


  • [公開日]2020.05.15
  • [最終更新日]2020.05.15

5月13日、米イーライリリー・アンド・カンパニー(以下、米イーライリリー)は、RETキナーゼ阻害薬Retevmo(一般名Retevmo)について、米国食品医薬品局(FDA)が新規の適応承認を行ったと発表した。

Retevmoの処方対象は、転移性Rearranged During Transfection(RET)融合遺伝子陽性非小細胞肺がん(NSCLC)の成人患者、および全身療法を必要とする進行性または転移性RET遺伝子変異陽性甲状腺髄様がん(MTC)、または全身療法を必要とし放射性ヨウ素治療抵抗性(放射性ヨウ素が適応となった場合)の進行性または転移性RET融合遺伝子陽性甲状腺がんの成人患者および12歳以上の小児患者であり、RET遺伝子異常は遺伝子検査で判定することができる。

Retevmoは、高い選択性を有するRETキナーゼ阻害薬だが、腫瘍細胞のみでなく、正常細胞にも影響を与えるため、副作用を生じる可能性がある。

今回の承認は、RET遺伝子に起因するがん患者を対象にRET阻害薬による治療を評価した単群、他施設共同の第1/2相試験(LIBRETTO-001試験)に基づくもの。同試験は、用量漸増相(第1相)と用量拡大相(第2相)で行われ、評価項目である奏効率ORR)および奏功期間(DOR)の結果に基づき、FDAの迅速承認制度に則って承認された。

RET融合遺伝子陽性のNSCLC患者の半数程度が、脳に腫瘍が転移する可能性がある。測定可能な脳転移を認める前治療歴のあるNSCLC患者において、11症例中10症例で頭蓋内奏効率(CNS ORR)が認められ、CNS例におけるDORは10症例中いずれも6カ月以上であった。

同試験の治験統括医師であるAlexander Drilon医師は「臨床試験においてRetevmoを投与すると、治療困難な脳転移に対する奏効も含めて、進行性肺がん患者の大多数で臨床的に意味のある奏効が認められました。Retevmoの承認は、EGFRおよびALKの遺伝子異常を認めるがんに対する治療薬と同様に、RETに起因するがんも治療標的にできるようになりました。本薬剤の承認は、NSCLC治療のすべての治療体系にとって重要な出来事です」と述べている。

また、Massachusetts General Hospital Cancer Centerの頭頚部癌部門長であるLori J. Wirth 医師は「RET遺伝子異常は、甲状腺髄様がんの大半を占めており、その他の甲状腺がんでも意義のある割合で見られます。Retevmoの承認により、このようながん患者さんは、RET遺伝子を特異的かつ強力に阻害する治療選択肢を得ることができました。私自身の治療経験とともに、この新しい医薬品の公表データから、この医薬品は優れた治療選択肢になるであろうと考えています」と述べている。

Retevmoは、FDAから、今回適応となった疾患の治療について希少疾病用医薬品の指定を受けており、検証的試験において臨床的有益性の検証と説明を条件として、今回の適応に対する承認は継続される。現在2つの検証的第3相試験(LIBRETTO-431試験およびLIBRETTO-531試験)を実施しており、患者を登録中。

RET遺伝子に起因するがんとは
融合遺伝子と活性化変異を含むRETキナーゼの遺伝子異常は、過剰なRETシグナル伝達と制御不能な細胞増殖につながる。RET融合遺伝子は、非小細胞肺がんの約2%、乳頭様、Hurthle細胞、未分化、および低分化甲状腺がんの10~20%に認められている。RETの活性化変異は、散発性のMTCの約60%および生殖細胞系のMTCの約90%に認められる。RET融合遺伝子陽性のがんとRET遺伝子変異のMTCでは、RET分子内に存在する活性化キナーゼに依存しがん細胞が増殖・生存する。これを「がん遺伝子依存」と呼び、RET遺伝子を標的とする低分子阻害薬は、これらのがんに高い感受性を示す。RET遺伝子のドライバー変異は基本的には、他の発がんドライバーとは相互排他的である。

参照元:
日本イーライリリー株式会社 プレスリリース

×

この記事に利益相反はありません。

会員登録 ログイン