新型コロナウイルスの流行に伴うイベントの開催可否について

外科治療を補完する術前補助療法(ネオアジュバント)~ASCOが注目するがん研究の最新動向と今後の課題(2)Clinical Cancer Advances 2020(第15版)より


  • [公開日]2020.05.12
  • [最終更新日]2020.05.12

米国臨床腫瘍学会(ASCO)が発表した15th Clinical Cancer Advances 2020では、がん手術の意義が非常に高まっている状況から、Advance of the Yearとして外科治療の進歩を選んだ。手術の貢献度を高めている要因は、ネオアジュバントとして行う術前の全身薬物療法や放射線療法が非常に進歩したことである。効果があるネオアジュバントを施すことで腫瘍量を予め減らし、切除する組織量を少なく済ます戦略だ。手術自体を回避できることもある。手術負担が減ることで術後の臨床転帰改善が見込まれる。

ASCO Clinical Cancer Advances 2020のAdvance of the Yearでは、ネオアジュバントと手術の組み合わせで高い治療成績が得られたとする悪性黒色腫(メラノーマ)、腎細胞がん、および膵臓がんの臨床試験を紹介している。

局所進行悪性黒色腫を対象とする分子標的薬・免疫療法薬のネオアジュバント

(1) ダブラフェニブ+トラメチニブのネオアジュバントで手術負担軽減を実現
BRAF V600遺伝子変異のあるステージIIIC悪性黒色腫患者を対象としてオーストラリアで行われた第2相試験(NeoCombi、NCT01972347)では、BRAF阻害薬ダブラフェニブ(商品名タフィンラー)とその併用薬であるMEK阻害薬トラメチニブ(商品名メキニスト)をネオアジュバントとして投与した。両剤ともに標準的な用法用量で12週間にわたり連日経口投与した後、リンパ節郭清を行い、術後も投与を継続した。

86%の患者(35例)は術前にネオアジュバントに反応し、46%の患者が完全寛解(CR)に達した。そして、このネオアジュバントの効果により、46%の患者の腫瘍とその周辺組織の摘出が容易に実行できた。毒性転移性の悪性黒色腫患者に投与した場合と全般的に同様であった。

(2)イピリムマブ+ニボルマブのネオアジュバントの毒性低減アプローチ
切除可能なステージIII悪性黒色腫患者を対象としてオーストラリア、オランダなどで行われた第2相試験(OpACIN-neo、NCT02977052)では、抗CTLA-4抗体イピリムマブ(商品名ヤーボイ)と抗PD-1抗体ニボルマブ(商品名オプジーボ)を併用投与した。切除可能の悪性黒色腫に対するこれら2剤の併用療法はアジュバントとしての有効性が報告されているが、毒性の増大が課題になっているため、OpACIN-neoの試験者らは、毒性を抑えるために推奨用量を変えて探索した。

ヤーボイ3mg/kg、オプジーボ1mg/kgが標準用量のところ、これを逆にしてヤーボイ1mg/kg+オプジーボ3mg/kgを3週間隔2コースで点滴静注した群で高い効果が得られ、放射線学的奏効率は57%、病理学的奏効率は77%であった。これら奏効例は、腫瘍近傍の少なくとも1カ所のリンパ節まで浸潤しているいわゆる高リスクであったが、ネオアジュバントによる有効性が得られるとともに、投与開始後12週間におけるグレード3またはグレード4の発熱が、標準用量(3週間隔4コース)よりも少なく、奏効を維持しつつ忍容性が高まったことが示された。低毒性のアプローチ候補として期待される。

腎細胞がんを対象とする分子標的薬スーテントの役割

(1) スニチニブ単剤で手術回避、生存ベネフィットも
中リスクから高リスクの転移性腎細胞がん患者を対象としてフランスで行われた第3相試験(CARMENA、NCT00930033)では、450例をスニチニブ(商品名スーテント)単独療法群、または腎摘出術後にスーテントを投与する併用療法群に無作為に割り付けた。単独療法群は割り付け後21日以内にスーテントの投与を開始し、併用療法群は割り付け後28日以内に腎摘出術を行った。

腎摘出術を行わなかったスーテント単独療法群は、併用療法群と比べ生存期間が延長した(各18.4カ月、13.9カ月)。中リスク集団(各23.4カ月、19.0カ月)、高リスク集団(各13.3カ月、10.2カ月)ともに単独療法群の方が併用療法群より生存ベネフィットが高かった。グレード3以上の有害事象は、単独療法群の方が併用療法群よりわずかに多く認められた(各42.7%、32%)。

(2)即時手術とスーテント後の手術で比較、PFSは同程度
原発性明細胞型転移性腎細胞がん患者を対象としてカナダや欧州で行われた第3相試験(SURTIME、NCT01099423)では、99例を即時の腎摘出術群、またはスーテント(3コース)後の腎摘出術群に割り付け、3年以上にわたり臨床転帰を追跡した。

28週時点での無増悪生存率PFS rate)の割合は両群間に差がなかったことから(42%から43%)、即時手術で増悪を阻止するとは証明できなかった。全生存期間OS中央値はスーテント後の腎摘出術(32.4カ月)の方が即時手術(15カ月)より2倍以上に延長した。ネオアジュバントとしてのスーテントでも病勢が悪化した患者は、腎摘出術をしても病勢が好転する可能性は低いと考えられた。

膵臓がんを対象とするネオアジュバント化学療法

(1) 術前の化学・放射線療法で無増悪生存期間が大幅延長
摘出境界不明瞭の膵管腺がん患者48例を対象として米国で行われた第2相試験(NCT01591733)では、3剤併用化学療法FOLFIRINOX、カペシタビンの治療後、陽子線治療、そして手術を行った。同試験の一部は、米国立がん研究所(NCI)が資金を提供した。

実際に手術を施行できたのは31例で、そのうち67%が病理学検査でがん細胞がないことが確認された。手術施行集団では全解析対象と比べ、無増悪生存期間(PFS)中央値が有意に延長し(各48.6カ月、14.7カ月)、OS中央値は解析時点で特定に至らず(全解析対象は37.7カ月)、2年生存率は72%(全解析対象は56%)であった。

(2) ネオアジュバントに降圧薬ロサルタン追加で約6割が手術を実現
局所進行膵臓がん患者49例を対象として米国で行われた第2相試験(NCT01821729)では、上記(1)と同様の3剤併用化学療法FOLFIRINOXとアンジオテンシンII受容体拮抗薬ロサルタンを投与した後、陽子線治療、そして手術を行った。同試験も、一部はNCIが資金を提供した。

61%の患者が手術を施行し、摘出境界周辺にがん細胞がないことが確認された。全49例のPFS中央値(17.5カ月)、ならびにOS中央値(31.4カ月)と比べ、手術を施行した34例(各21.3カ月、33カ月)は3カ月程度延長した。

ロサルタンを追加した理由について試験者らは、血圧や電解質などの制御に加え、細胞の増殖や代謝などを調節しているレニン-アンジオテンシン-アルドステロン(RAA)系に作用するロサルタンが膵臓がんのサイズを縮小することで、手術可能性が高まると想定したとしている。なお、同様の試験報告は2018年にもあり、膵臓がんのネオアジュバントにロサルタンを追加することの意義が認められている。

参照元:
Clinical Cancer Advances 2020 Advance of the Year

×

リサーチのお願い


この記事に利益相反はありません。