遺伝子変異量 20%以上の進行性非小細胞肺がんに対するファーストライン治療としてイミフィンジ+トレメリムマブ、全生存期間を統計学有意に改善JAMA Oncologyより


  • [公開日]2020.04.27
  • [最終更新日]2020.04.27
この記事の3つのポイント
・上皮成長因子受容体および未分化リンパ腫キナーゼ野生型進行性非小細胞肺がん患者が対象の第3相試験
ファーストライン治療としてのイミフィンジ±トレメリムマブ療法の有効性安全性を比較検証
遺伝子変異量20%以上の患者では、化学療法に比べて死亡のリスクを51%減少した

2020年4月9日、医学誌『JAMA Oncology』にて上皮成長因子受容体(EGFR)および未分化リンパ腫キナーゼ(ALK)野生型進行性非小細胞肺がん患者に対するファーストライン治療として抗PD-L1抗体薬であるデュルバルマブ(商品名イミフィンジ;以下イミフィンジ)±抗CTLA-4抗体薬であるトレメリムマブ療法の有効性、安全性を比較検証した第3相のMYSTIC試験(NCT02453282)の結果がColumbia University Medical CenterのNaiyer A. Rizvi氏らにより公表された。

MYSTIC試験とは、上皮成長因子受容体(EGFR)および未分化リンパ腫キナーゼ(ALK)野生型進行性又は転移性ステージIV)NSCLC患者に対するファーストライン治療として4週を1サイクルとしてイミフィンジ20mg/kg単剤療法を投与する群、4週を1サイクルとしてイミフィンジ20mg/kg+トレメリムマブ1mg/kg併用療法を投与する群、または白金製剤を用いた標準化学療法を投与する群に1対1対1の割合で無作為に振り分け、主要評価項目としてPD-L1発現率25%以上の患者群における標準化学療法に対するイミフィンジ+トレメリムマブ療法の全生存期間OS)、全患者における標準化学療法に対するイミフィンジ+トレメリムマブ療法の全生存期間(OS)、無増悪生存期間PFS)を比較した多施設共同無作為化非盲検国際第3相試験である。

本試験が開始された背景として、遺伝子変異量(TMB)は抗PD-L1抗体薬をはじめとした免疫チェックポイント阻害薬の無増悪生存期間(PFS)改善効果のPD-L1発現ステータスとは独立した予測因子になり得る可能性が示唆されている。しかしながら、遺伝子変異量(TMB)は対照群を化学療法に設定し、全生存期間(OS)の改善効果の独立した予測因子になり得るかどうかは明らかになっていない。以上の背景より、本試験が開始された。

本試験の結果、主要評価項目であるPD-L1発現率25%以上の患者群(N=488人)における全生存期間(OS)中央値はイミフィンジ+トレメリムマブ群11.9ヶ月(95%信頼区間:9.0-17.7ヶ月)、イミフィンジ単剤群16.3ヶ月(95%信頼区間:12.2-20.8ヶ月)、化学療法群12.9ヶ月(95%信頼区間:10.5-15.0ヶ月)。化学療法に比べてイミフィンジ+トレメリムマブ群で死亡(OS)のリスクを15%減少(HR:0.85,98.77%信頼区間:0.61-1.17,P=0.20)、化学療法に比べてイミフィンジ単剤群で死亡(OS)のリスクを24%減少(HR:0.76,98.77%信頼区間:0.56-1.02,P=0.04)を示した。

PD-L1発現率25%以上の患者群(N=488人)における無増悪生存期間(PFS)中央値はイミフィンジ+トレメリムマブ群3.9ヶ月(95%信頼区間:2.8-5.0ヶ月)、イミフィンジ単剤群4.7ヶ月(95%信頼区間:3.1-6.3ヶ月)、化学療法群5.4ヶ月(95%信頼区間:4.6-5.8ヶ月)。化学療法に比べてイミフィンジ+トレメリムマブ群で病勢進行または死亡(PFS)のリスクを5%増加(HR:1.05,99.5%信頼区間:0.72-1.53,P=0.71)、化学療法に比べてイミフィンジ単剤群で病勢進行または死亡(PFS)のリスクを13%減少(HR:0.87,99.5%信頼区間:0.59-1.29)を示した。

また、遺伝子変異量(TMB)測定可能であった患者809人の内、遺伝子変異量(TMB)20%以上の患者における全生存期間(OS)中央値はイミフィンジ+トレメリムマブ群21.9ヶ月(95%信頼区間:11.4-32.8ヶ月)に対して化学療法群10.0ヶ月(95%信頼区間:8.1-11.7ヶ月)、化学療法に比べてイミフィンジ+トレメリムマブ群で死亡(OS)のリスクを51%減少(HR:0.49,95%信頼区間:0.32-0.74)した。

一方、遺伝子変異量(TMB)20%未満の患者における全生存期間(OS)中央値はイミフィンジ+トレメリムマブ群8.5ヶ月(95%信頼区間:6.7-9.8ヶ月)に対して化学療法群11.6ヶ月(95%信頼区間:9.6-13.1ヶ月)、化学療法に比べてイミフィンジ+トレメリムマブ群で死亡(OS)のリスクを16%増加(HR:1.16,95%信頼区間:0.93-1.45)した。

安全性としては、グレード3以上の治療関連有害事象(TRAE)発症率はイミフィンジ+トレメリムマブ群22.9%、イミフィンジ単剤群14.9%、標準化学療法群33.8%を示した。なお、治療関連有害事象(TRAE)により死亡に至った患者はイミフィンジ+トレメリムマブ群1.6%、イミフィンジ単剤群0.5%、標準化学療法群0.9%を示した。

以上のMYSTIC試験の結果よりNaiyer A. Rizvi氏らは以下のように結論を述べている。”MYSTIC試験では主要評価項目である標準化学療法に対するイミフィンジ±トレメリムマブの全生存期間(OS)、無増悪生存期間(PFS)の優越性を示すことはできませんでした。しかしながら、遺伝子変異量(TMB)20%以上の患者における全生存期間(OS)はイミフィンジ+トレメリムマブ群で統計学有意に改善しました。”

Durvalumab With or Without Tremelimumab vs Standard Chemotherapy in First-line Treatment of Metastatic Non–Small Cell Lung Cancer(JAMA Oncol. 2020 Apr 9. doi: 10.1001/jamaoncol.2020.0237. )

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