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複数治療歴のあるHER2陽性進行性乳がん患者に対する抗HER2抗体薬物複合体トラスツズマブ デルクステカン、客観的奏効率60.9%を示す

[公開日] 2020.03.02[最終更新日] 2020.03.02

この記事の3つのポイント ・トラスツズマブ エムタンシンをはじめ複数治療歴のあるHER2陽性進行性乳がん患者が対象の第2相試験
・抗HER2抗体薬物複合体であるトラスツズマブ デルクステカン(DS-8201)単剤療法の有効性・安全性を検証
・客観的奏効率は60.9%を示し、全患者群における無増悪生存期間中央値は16.4ヶ月だった

2020年2月13日、医学誌『The New England Journal of Medicine』にて、トラスツズマブ エムタンシンをはじめ複数治療歴のあるHER2陽性進行性乳がん患者に対する抗HER2抗体薬物複合体であるトラスツズマブ デルクステカン(DS-8201)単剤療法の有効性、安全性を検証した第2相のDESTINY-Breast01試験(NCT03248492)の結果がMemorial Sloan Kettering Cancer CenterのShanu Modi氏らにより公表された。

本試験は、トラスツズマブ エムタンシンをはじめ複数治療歴のあるHER2陽性進行性乳がん患者に対して3週を1サイクルとしてトラスツズマブ デルクステカン(DS-8201)5.4mg単剤療法を投与し、主要評価項目として独立中央評価による客観的奏効率(ORR)、副次評価項目として奏効持続期間(DOR)、無増悪生存期間(PFS)、全生存期間(OS)などを検証した多施設共同シングルアームの第2相試験である。

本試験が開始された背景として、第1相試験にてHER2陽性進行性乳がん患者に対するトラスツズマブ デルクステカン(DS-8201)単剤療法は、客観的奏効率(ORR)59.5%(95%信頼区間:49.7%‐68.7%)、奏効持続期間(DOR)中央値20.7ヶ月を示した。以上の結果より、治療歴のあるHER2陽性進行性乳がん患者に対するトラスツズマブ デルクステカン(DS-8201)の有用性を検証する目的とした第2相試験である本試験が開始された。

本試験に登録された184人の患者背景は下記の通りである。年齢中央値は55.0歳(28.0‐96.0歳)。人種は白人54.9%、アジア人38.0%、その他4.9%。ECOG Performance Statusはスコア0が55.4%、スコア1が44.0%、スコア2が0.5%。ホルモン受容体ステータスは陽性52.7%、陰性45.1%、不明2.2%。

前治療歴中央値は6レジメン(2‐27)。前治療歴の種類はトラスツズマブ100%、トラスツズマブ エムタンシン100%、ペルツズマブ65.8%、ホルモン療法48.9%、その他全身療法99.5%。トラスツズマブ エムタンシンによる最良奏効率は完全奏効率(CR)または部奏効率(PR)42.9%、病勢進行率(PD)35.9%。

以上の背景を有する患者における本試験の結果は下記の通りである。主要評価項目である独立中央評価による客観的奏効率(ORR)は60.9%(95%信頼区間:53.4%‐68.0%)、奏効の内訳は完全奏効率(CR)6.0%、部分奏効率(PR)54.9%、病勢進行率(PD)1.6%を示した。なお、病勢コントロール率(DCR)は97.3%(95%信頼区間:93.8%‐99.1%)、初回奏効期間中央値は1.6ヶ月(95%信頼区間:1.4‐2.6ヶ月)を示した。

副次評価項目である奏効持続期間(DOR)中央値は14.8ヶ月(95%信頼区間:13.8‐16.9ヶ月)。全患者群における無増悪生存期間(PFS)中央値は16.4ヶ月(95%信頼区間:12.7ヶ月‐未到達)。脳転移のある24人の患者における無増悪生存期間(PFS)中央値は18.1ヶ月(95%信頼区間:6.7‐18.1ヶ月)。6ヶ月全生存率(OS)は93.9%(95%信頼区間:89.3%‐96.6%、12ヶ月全生存率(OS)は86.2%(95%信頼区間:79.8%‐90.7%)、全生存期間(OS)中央値は未到達であった。

一方の安全性として、全グレードの有害事象(AE)発症率は99.5%、グレード3の有害事象(AE)発症率は48.4%、グレード4の有害事象(AE)発症率は3.8%を示した。20%以上の患者で確認された全グレードの有害事象(AE)は吐き気77.7%、倦怠感49.5%、脱毛症48.4%、嘔吐45.7%、便秘35.9%、好中球数減少34.8%、食欲減退31.0%、貧血29.9%、下痢29.3%、白血球数減少21.2%、血小板数減少21.2%を示した。また、5%以上の患者で確認されたグレード3の有害事象(AE)は好中球数減少19.6%、貧血8.2%、吐き気7.6%、倦怠感6.0%、白血球数減少6.0%、リンパ球数減少6.0%を示した。

以上のDESTINY-Breast01試験の結果よりShanu Modi氏らは以下のように結論を述べている。”複数治療歴のあるHER2陽性進行性乳がん患者に対する抗HER2抗体薬物複合体トラスツズマブ デルクステカン(DS-8201)単剤療法は、客観的奏効率(ORR)60.9%、奏効持続期間(DOR)中央値14.8ヶ月を示しました。”

Trastuzumab Deruxtecan in Previously Treated HER2-Positive Breast Cancer(N Engl J Med. 2020 Feb 13;382(7):610-621. doi: 10.1056/NEJMoa1914510.)
ニュース 乳がん NCT03248492

山田創

製薬会社、オンコロジーメディアの運営を経て、フリーのメディカルライターへ転身。Twitterアカウント「@So_Yamada_」

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