・第3世代不可逆的EGFRチロシンキナーゼ阻害薬タグリッソ単剤療法の有効性、安全性を比較検証
・タグリッソ群で死亡のリスクを20%統計学的有意に改善
2020年1月2日、医学誌『The New England Journal of Medicine』にて未治療のEGFR遺伝子陽性の非小細胞肺がん患者に対する第3世代不可逆的EGFRチロシンキナーゼ阻害薬であるオシメルチニブ(商品名タグリッソ;タグリッソ)単剤療法の有効性、安全性を比較検証した第3相のFLAURA試験(NCT02296125)の全生存期間(OS)の結果がWinship Cancer InstituteのSuresh S. Ramalingam氏らにより公表された。
FLAURA試験とは、未治療のEGFR遺伝子陽性の非小細胞肺がん患者(N=556人)に対して1日1回タグリッソ80mg単剤療法を投与する群、またはその他のEGFRチロシンキナーゼ阻害薬である1日1回ゲフィチニブ250mgまたはエルロチニブ150mg単剤療法を投与する群に1対1の割合で無作為に振り分け、主要評価項目として無増悪生存期間(PFS)、副次評価項目として全生存期間(OS)などを比較検証した第3相試験である。
なお、既に公表されている2017年6月時点のカットオフデータによれば主要評価項目である無増悪生存期間(PFS)中央値はタグリッソ群で18.9ヶ月に対して他のEGFRチロシンキナーゼ阻害薬群で10.2ヶ月、他のEGFRチロシンキナーゼ阻害薬に比べてタグリッソで統計学的有意に改善し、病勢進行または死亡(PFS)のリスクを54%(HR:0.46,P<0.001)改善することが示されている。
本試験の結果、副次評価項目である全生存期間(OS)中央値はタグリッソ群で38.6ヶ月(95%信頼区間:34.5−41.8ヶ月)に対して他のEGFRチロシンキナーゼ阻害薬群で31.8ヶ月(95%信頼区間:26.6−36.0ヶ月)、タグリッソ群で死亡(OS)のリスクを20%(HR:0.80,95%信頼区間:0.64−1.00,P=0.046)統計学的有意に改善した。また、3年全生存率(OS)はタグリッソ群28%(N=79/279人)に対して他のEGFRチロシンキナーゼ阻害薬群9%(N=26/277人)を示した。
一方の安全性として、グレード3以上の有害事象(AE)発症率はタグリッソ群で42%に対して他のEGFRチロシンキナーゼ阻害薬群で47%を示した。最も多くの患者で確認されたグレード3以上の有害事象(AE)はタグリッソ群で下痢3%(N=7人)、貧血3%(N=7人)に対して他のEGFRチロシンキナーゼ阻害薬群でALT上昇8%(N=21人)、皮膚障害7%(N=20人)であった。
以上のFLAURA試験の全生存期間(OS)の結果よりSuresh S. Ramalingam氏らは以下のように結論を述べている。”未治療のEGFR遺伝子陽性の非小細胞肺がん患者に対する第3世代不可逆的EGFRチロシンキナーゼ阻害薬タグリッソ単剤療法は、他のEGFRチロシンキナーゼ阻害薬に比べて全生存期間(OS)を統計学的有意に改善しました。また、治療期間中央値はタグリッソ群が長いにも関わらず、安全性プロファイルは両群間で同等でした。”
Overall Survival with Osimertinib in Untreated, EGFR-Mutated Advanced NSCLC(N Engl J Med 2020; 382:41-50 DOI: 10.1056/NEJMoa1913662)