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未治療の進行性卵巣がん患者に対する化学療法+アバスチン併用療法後の維持療法としてのオラパリブ、無増悪生存期間を有意に改善

[公開日] 2020.01.14[最終更新日] 2020.01.14

この記事の3つのポイント ・未治療の進行性卵巣がん患者が対象の第3相試験
・化学療法+下アバスチン併用療法後の維持療法としてのオラパリブ単剤療法の有効性・安全性を比較検証
・プラセボ群と比べて、ニラパリブ群で病勢進行または死亡のリスクを38%統計学有意に改善

2019年12月19日、医学誌『The New England Journal of Medicine』にて未治療の進行性卵巣がん患者に対する導入療法としての化学療法+ベバシズマブ(商品名アバスチン;以下アバスチン)併用療法後の維持療法としてのPARP阻害薬オラパリブ単剤療法の有効性、安全性を比較検証した第3相のPAOLA-1試験(NCT02477644)の結果がClinical Science at the Centre Leon BerardのIsabelle Ray-Coquard氏らにより公表された。

本試験は、化学療法+アバスチン併用療法後に奏効を達成した進行性卵巣がん患者に対する維持療法としての1日1回オラパリブ300mg単剤療法を最大24ヶ月投与する群(N=537人)、またはプラセボ単剤療法を投与する群(N=269人)に2対1の割合で無作為に振り分け、主要評価項目として無増悪生存期間(PFS)、副次評価項目として全生存期間(OS)などを比較検証した第3相試験である。なお、全ての患者群は3週を1サイクルとしてアバスチン15mg/kgをトータルで最大15ヶ月間投与している。

本試験が実施された背景として、進行性卵巣がん患者の多くは治療終了後の10~18ヶ月の間で再発が発生する。そのため、現在の標準治療としては導入療法としての化学療法+アバスチン併用療法後に維持療法としてアバスチン単剤療法を投与される。近年、オラパリブをはじめとしてPARP阻害薬が進行性卵巣がんの維持療法として無増悪生存期間(PFS)を改善するなど良好な結果を示している。以上の背景より、本試験が開始された。

本試験に登録された患者背景は下記の通りである。

年齢中央値
オラパリブ群=61.0歳(32.0‐87.0歳)
プラセボ群=60.0歳(26.0‐85.0歳)

ECOG Performacne Status
オラパリブ群=スコア0 70%、スコア1 28%
プラセボ群=スコア0 70%、スコア1 28%

原発巣部位
オラパリブ群=卵巣 85%、卵管 7%、腹膜 8%
プラセボ群=卵巣 88%、卵管 4%、腹膜 7%

FIGO分類による進行病期
オラパリブ群=ステージIII 70%、ステージIV 30%
プラセボ群=ステージIII 69%、ステージIV 31%

前治療の奏効率
オラパリブ群=完全奏効率 20%、部分奏効率 26%
プラセボ群=完全奏効率 20%、部分奏効率 28%

相同組換え修復異常(HRD)ステータス
オラパリブ群=陽性 53%、陰性 36%
プラセボ群=陽性 51%、陰性 32%

BRCA遺伝子変異ステータス
オラパリブ群=陽性 30%、陰性 70%
プラセボ群=陽性 30%、陰性 70%

以上のように両群間で患者背景に大きな偏りはなかった。

本試験のフォローアップ期間中央値22.9ヶ月時点における結果は下記の通りである。主要評価項目である無増悪生存期間(PFS)中央値はオラパリブ群22.1ヶ月に対してプラセボ群16.6ヶ月、オラパリブ群で病勢進行または死亡(PFS)のリスクを41%(HR:0.59,95%信頼区間:0.49‐0.72,P<0.001)減少した。

BRCA遺伝子変異群における無増悪生存期間(PFS)中央値はオラパリブ群37.2ヶ月に対してプラセボ群21.7ヶ月、オラパリブ群で病勢進行または死亡(PFS)のリスクを69%(HR:0.31,95%信頼区間:0.20‐0.47,P<0.001)。BRCA遺伝子野生群における無増悪生存期間(PFS)中央値はオラパリブ群18.9ヶ月に対してプラセボ群16.0ヶ月、オラパリブ群で病勢進行または死亡(PFS)のリスクを29%(HR:0.71,95%信頼区間:0.58‐0.88,P<0.001)減少した。

相同組換え修復異常(HRD)変異群における無増悪生存期間(PFS)中央値はオラパリブ群37.2ヶ月に対してプラセボ群17.7ヶ月、オラパリブ群で病勢進行または死亡(PFS)のリスクを67%(HR:0.33,95%信頼区間:0.25‐0.45)。相同組換え修復異常(HRD)野生群における無増悪生存期間(PFS)中央値はオラパリブ群16.9ヶ月に対してプラセボ群16.0ヶ月、オラパリブ群で病勢進行または死亡(PFS)のリスクを8%(HR:0.92,95%信頼区間:0.72‐1.17)減少した。

一方の安全性として、全グレードの有害事象(AE)発症率はオラパリブ群99%に対してプラセボ群96%、グレード3以上の有害事象(AE)発症率はオラパリブ群57%に対してプラセボ群51%。オラパリブ群で最も多くの患者で確認された全グレードの有害事象(AE)は吐き気53%、高血圧46%、貧血41%、グレード3以上では高血圧19%、貧血17%の患者で確認された。

以上のPAOLA-1試験の結果よりIsabelle Ray-Coquard氏らは以下のように結論を述べている。”未治療の進行性卵巣がん患者に対する導入療法として化学療法+アバスチン併用療法後の維持療法としてのPARP阻害薬オラパリブは、無増悪生存期間(PFS)を統計学有意に改善しました。”

Olaparib plus Bevacizumab as First-Line Maintenance in Ovarian Cancer(N Engl J Med 2019; 381:2416-2428 DOI: 10.1056/NEJMoa1911361)
ニュース 卵巣がん NCT02477644

山田創

製薬会社、オンコロジーメディアの運営を経て、フリーのメディカルライターへ転身。Twitterアカウント「@So_Yamada_」

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