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新規進行性卵巣がん患者に対するニラパリブ、相同組換え修復異常ステータスに関係なく無増悪生存期間を有意に改善

[公開日] 2020.01.09[最終更新日] 2020.01.09

この記事の3つのポイント ・プラチナ系抗がん剤ベースの化学療法後に奏効が確認された進行性卵巣がん患者が対象の第3相試験
・PARP阻害薬ニラパリブ単剤療法の有効性・安全性を比較検証
・プラセボ群と比べて、ニラパリブ群で病勢進行または死亡のリスクを38%統計学有意に改善

2019年12月19日、医学誌『The New England Journal of Medicine』にてプラチナ系抗がん剤ベースの化学療法後に奏効が確認された進行性卵巣がん患者に対するPARP阻害薬であるニラパリブ単剤療法の有効性、安全性を比較検証した第3相のPRIMA試験(NCT02655016)の結果がClínica Universidad de NavarraのAntonio González-Martín氏らにより公表された。

PRIMA試験とは、プラチナ系抗がん剤ベースの化学療法後に奏効が確認された進行性卵巣がん患者(N=733人)に対して1日1回ニラパリブ単剤療法を投与する群、または1日1回プラセボ単剤療法を投与する群に2対1の割合で無作為に振り分け、主要評価項目として無増悪生存期間(PFS)、副次評価項目として全生存期間(OS)を比較検証した第3相試験である。

本試験が実施された背景として、進行性卵巣がんの標準治療は手術、プラチナ系抗がん剤ベースの化学療法が確立されているが、これら治療完遂後の約85%の患者が再発を経験する。そのため、近年はベバシズマブが併用、維持療法として使用されているが、安全性、確固たる長期データが確立されていない。以上の背景より、BRCA遺伝子変異ステータスに関係なく進行性卵巣がん患者に対して無増悪生存期間(PFS)を改善する効果が確認されているPARP阻害薬であるニラパリブの有用性が本試験で確認された。

本試験に登録された患者背景は下記の通りである。

年齢中央値
ニラパリブ群=62歳(32‐85歳)
プラセボ群=62歳(33‐88歳)

ECOG Performance Status
ニラパリブ群=スコア0 69.2%、スコア1 30.8%
プラセボ群=スコア0 70.7%、スコア1 29.3%

原発巣部位
ニラパリブ群=卵巣 79.7%、卵管 13.3%、腹膜 7.0%
プラセボ群=卵巣 81.7%、卵管 13.0%、腹膜 5.3%

FIGO分類による進行病期
ニラパリブ群=ステージIIIA 1.4%、IIIB 3.3%、IIIC 58.5%、ステージIV 34.7%
プラセボ群=ステージIIIA 1.6%、IIIB 4.9%、IIIC 56.1%、ステージIV 35.8%

プラチナ系抗がん剤ベースの化学療法の奏効率
ニラパリブ群=完全奏効率 69.2%、部分奏効率 30.8%
プラセボ群=完全奏効率 70.0%、部分奏効率 30.0%

以上の背景を有する患者に対する本試験の結果は下記の通りである。相同組換え修復異常(HRD)陽性群における主要評価項目である無増悪生存期間(PFS)中央値はニラパリブ群21.9ヶ月に対してプラセボ群10.4ヶ月、ニラパリブ群で病勢進行または死亡(PFS)のリスクを57%(HR:0.43,95%信頼区間:0.31‐0.59,P<0.001)統計学有意に改善した。

全患者群における主要評価項目である無増悪生存期間(PFS)中央値はニラパリブ群13.8ヶ月に対してプラセボ群8.2ヶ月、ニラパリブ群で病勢進行または死亡(PFS)のリスクを38%(HR:0.62,95%信頼区間:0.50‐0.76,P<0.001)統計学有意に改善した。

また、相同組換え修復異常(HRD)陽性群における重要な副次評価項目である24ヶ月全生存率(OS)はニラパリブ群84%に対してプラセボ群77%、ニラパリブ群で死亡(OS)のリスクを30%(HR:0.70,95%信頼区間:0.44‐1.11)改善した。

全患者群における重要な副次評価項目である24ヶ月全生存率(OS)はニラパリブ群91%に対してプラセボ群85%、ニラパリブ群で死亡(OS)のリスクを39%(HR:0.61,95%信頼区間:0.27‐1.39)改善した。

一方の安全性として、全グレードの治療関連有害事象(TRAE)発症率はニラパリブ群96.3%に対してプラセボ群68.9%、グレード3以上の治療関連有害事象(TRAE)発症率はニラパリブ群65.3%に対してプラセボ群6.6%を示した。ニラパリブ群で最も多くの患者で確認されたグレード3以上の治療関連有害事象(TRAE)は貧血31.0%、血小板減少症28.7%、好中球減少症12.8%であった。

以上のPRIMA試験の結果よりAntonio González-Martín氏らは以下のように結論を述べている。”プラチナ系抗がん剤ベースの化学療法後に奏効が確認された進行性卵巣がん患者に対するPARP阻害薬であるニラパリブ単剤療法は、相同組換え修復異常(HRD)の有無に関係なく無増悪生存期間(PFS)を統計学有意に改善しました。”

Niraparib in Patients with Newly Diagnosed Advanced Ovarian Cancer(N Engl J Med 2019; 381:2391-2402 DOI: 10.1056/NEJMoa1910962)
ニュース 卵巣がん NCT02655016

山田創

製薬会社、オンコロジーメディアの運営を経て、フリーのメディカルライターへ転身。Twitterアカウント「@So_Yamada_」

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