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PD-L1陽性の進行性非小細胞肺がん患者に対するファーストライン治療としてのキイトルーダ、KRAS遺伝子変異ステータスに関係なく有用性を示す

[公開日] 2019.12.25[最終更新日] 2019.12.25

この記事の3つのポイント ・PD-L1陽性の進行性非小細胞肺がん患者が対象の第3相試験の探索的解析
・ファーストライン治療としてのキイトルーダ単剤療法の有効性・安全性を検証
・KRAS遺伝子変異のステータスに関係なく、同患者の標準治療となり得る可能性が示唆

2019年12月11~14日、スイス・ジュネーブで開催された欧州臨床腫瘍学会 腫瘍免疫学シンポジウム(ESMO Immuno Oncology)にて、PD-L1陽性(TPS≥1%)の進行性非小細胞肺がん患者に対するファーストライン治療としての抗PD-1抗体薬であるペムブロリズマブ(商品名キイトルーダ;以下キイトルーダ)単剤療法の有効性、安全性を検証した第3相のKEYNOTE-042試験(NCT02220894)におけるKRAS遺伝子陽性患者を対象にした探索的解析の結果がSylvester Comprehensive Cancer CenterのGilberto Lopes氏らにより公表された。

KEYNOTE-042試験とは、PD-L1陽性(TPS≥1%)の進行性非小細胞肺がん患者(N=1274人)に対するファーストライン治療として3週を1サイクルとしてキイトルーダ200mg単剤療法を投与する群、または治験医師選択の化学療法(カルボプラチン+パクリタキセル、カルボプラチン+ペメトレキセドなど)を投与する群に1:1の割合で無作為に振り分け、主要評価項目としてPD-L1発現率1%以上、PD-L1発現率20%以上、PD-L1発現率50%以上の患者群における全生存期間(OS)、副次評価項目として無増悪生存期間(PFS)、客観的奏効率(ORR)を比較検証した国際多施設共同非盲検の第3相試験である。

探索的解析の結果、KRAS遺伝子陽性は23%(N=69人)の患者で有しており、その内KRAS(G12C)型は10%(N=29人)含まれていた。また、KRAS遺伝子陽性患者はPD-L1発現率が高い傾向にあり、腫瘍細胞における陽性率(TPS:Tumor Proportion Score)中央値はKRAS遺伝子陽性群60%に対して陰性群35%、遺伝子変異量(TMB)中央値はKRAS遺伝子陽性群191mut/exomeに対して陰性群105mut/exomeを示した。

以上の背景を有する患者に対する本試験の探索的解析の結果は下記の通りである。主要評価項目である全生存期間(OS)は、KRAS遺伝子陽性群(N=69人)においてキイトルーダ群(N=30人)で28ヶ月(95%信頼区間:23ヶ月-未到達)に対して化学療法群(N=39人)で11ヶ月(95%信頼区間:7-25ヶ月)を示し、キイトルーダ群で死亡(OS)のリスクを38%減少した(HR:0.42)。KRAS(G12C)陽性群においてキイトルーダ群(N=12人)で未到達(95%信頼区間:23ヶ月-未到達)に対して化学療法群(N=17人)で8ヶ月(95%信頼区間:5ヶ月-未到達)を示し、キイトルーダ群で死亡(OS)のリスクを72%減少した(HR:0.28)。KRAS遺伝子陰性群においてキイトルーダ群(N=127人)で15ヶ月(95%信頼区間:12-14ヶ月)に対して化学療法群(N=105人)で12ヶ月(95%信頼区間:11-18ヶ月)を示し、キイトルーダ群で死亡(OS)のリスクを14%減少した(HR:0.86)。

副次評価項目である無増悪生存期間(PFS)は、KRAS遺伝子陽性群においてキイトルーダ群で12ヶ月(95%信頼区間:8ヶ月-未到達)に対して化学療法群で6ヶ月(95%信頼区間:4-9ヶ月)を示し、キイトルーダ群で病勢進行または死亡(PFS)のリスクを49%減少した(HR:0.51)。KRAS(G12C)陽性群においてキイトルーダ群で15ヶ月(95%信頼区間:10ヶ月-未到達)に対して化学療法群で6ヶ月(95%信頼区間:4-8ヶ月)を示し、キイトルーダ群で病勢進行または死亡(PFS)のリスクを73%減少した(HR:0.73)。KRAS遺伝子陰性群においてキイトルーダ群で6ヶ月(95%信頼区間:4-7ヶ月)に対して化学療法群で6ヶ月(95%信頼区間:4-8ヶ月)を示し、病勢進行または死亡(PFS)のリスクは両群間で同等であった(HR:1.00)。

また、副次評価項目である客観的奏効率(ORR)はKRAS遺伝子陽性群においてキイトルーダ群で56.7%(95%信頼区間:37.4%-74.5%)に対して化学療法群で18.0%(95%信頼区間:7.5%-33.5%)を示した。KRAS(G12C)陽性群においてキイトルーダ群で66.7%(95%信頼区間:34.9%-90.1%)に対して化学療法群で23.5%(95%信頼区間:6.8%-49.9%)を示した。KRAS遺伝子陰性群においてキイトルーダ群で29.1%(95%信頼区間:21.4%-37.9%)に対して化学療法群で21.1%(95%信頼区間:13.6%-30.0%)を示した。

以上のKEYNOTE-042試験の探索的解析結果よりGilberto Lopes氏らは以下のように結論を述べている。”PD-L1陽性の進行性非小細胞肺がん患者に対するファーストライン治療としての抗PD-1抗体薬キイトルーダ単剤療法は、KRAS遺伝子変異のステータスに関係なく、本患者の標準治療になり得る可能性が示唆されました。”

Pembrolizumab May Be Considered as a First-Line Treatment Option in Non-Squamous NSCLC Even in the Presence of KRAS Mutations(ESMO IMMUNO-ONCOLOGY CONGRESS 2019, NEWS & PRESS RELEASES)
ニュース 肺がん NCT02220894

山田創

製薬会社、オンコロジーメディアの運営を経て、フリーのメディカルライターへ転身。Twitterアカウント「@So_Yamada_」

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