転移性前立がん腺患者に対するファーストライン治療としてのテストステロン抑制療法+イクスタンジ、現在の標準治療に比べて全生存期間、無増悪生存期間を改善するNEJMより


  • [公開日]2019.08.07
  • [最終更新日]2019.08.08
この記事の3つのポイント
転移性前立腺がん患者が対象の第3相試験
・1stライン治療としてのテストステロン抑制療法+イクスタンジ併用療法の有効性安全性を検証
標準治療に比べて、全生存期間無増悪生存期間を統計学的有意に改善

2019年7月11日、医学誌『The New England Journal of Medicine』にて転移性前立腺がん患患者に対するファーストライン治療としてのテストステロン抑制療法+アンドロゲン受容体阻害薬であるエンザルタミド(商品名イクスタンジ;以下イクスタンジ)併用療法の有効性、安全性を比較検証した第3相のENZAMET/ANZUP1304試験(NCT02446405)の結果がMonash University and Eastern HealthのIan D. Davis氏らにより公表された。

ENZAMET/ANZUP1304試験とは、転移性前立腺がん患者(N=1125人)に対するファーストライン治療としてのテストステロン抑制療法+1日1回イクスタンジ160mgを投与する群(N=563人)、または標準治療であるテストステロン抑制療法+非ステロイド性抗アンドロゲン薬を投与する群(N=562人)に無作為に振り分け、主要評価項目として全生存期間(OS)、副次評価項目として前立腺特異抗原PSA)値に基づく無増悪生存期間(PFS)、臨床的無増悪生存期間(PFS)、有害事象などを比較検証した非盲検無作為化第3相試験である。

本試験が実施された背景として、アンドロゲン受容体阻害薬であるイクスタンジは去勢抵抗性前立腺がん患者に対して全生存期間(OS)を改善することが他の臨床試験で示されている。しかしながら、転移性ホルモン感受性前立腺がん患者に対するテストステロン抑制にイクスタンジを追加する治療は、早期のドセタキセル投与に関わらず生存期間が延長するかは明らかにされていない。以上の背景より、転移性前立腺がん患者に対するテストステロン抑制療法+イクスタンジ併用療法の有用性を検証するために本試験が開始された。

本試験に登録された患者背景は下記の通りである。

年齢中央値
イクスタンジ群=69.2歳(63.2-74.5歳)
標準治療群=69.0歳(63.6-74.5歳)

臓器転移のある患者割合
イクスタンジ群=11%
標準治療群=12%

診断時よりの経過経過月
イクスタンジ群=1.9ヶ月(0.9-2.8ヶ月)
標準治療群=1.9ヶ月(1.0-2.8ヶ月)

グリソンスコアの患者割合
イクスタンジ群=7以下 27%、8-10 60%、不明 13%
標準治療群=以下 29%、8-10 57%、不明 14%

以上の背景を有する患者に対する本試験の結果は下記の通りである。本試験のフォローアップ期間中央値34ヶ月、死亡イベント発生件数245件(イクスタンジ群102件、非ステロイド性抗アンドロゲン薬群143件)時点における結果、標準治療群に比べてイクスタンジ群で死亡(OS)のリスクを33%統計学的有意に改善した(ハザード比 0.67,95%信頼区間:0.52~0.86,P=0.002)。また、3年全生存率(OS)はイクスタンジ群80%に対して標準治療群72%を示した。

副次評価項目である前立腺特異抗原(PSA)値に基づく無増悪生存期間(PFS)は、標準治療群に比べてイクスタンジ群で前立腺特異抗原(PSA)値に基づく病勢進行(PFS)のリスクを61%統計学的有意に改善した(ハザード比0.39,P<0.001)。臨床的無増悪生存期間(PFS)は、標準治療群に比べてイクスタンジ群で臨床的病勢進行(PFS)のリスクを60%統計学的有意に改善した(ハザード比0.40,P<0.001)。

一方の安全性として、グレード別の有害事象(AE)発症率はイクスタンジ群でグレード1が7%、グレード2が36%、グレード3が49%、グレード4が7%、グレード5が1%に対して標準治療群ででグレード1が14%、グレード2が41%、グレード3が35%、グレード4が7%、グレード5が1%。なお、有害事象(AE)により治療中止に至った患者割合はイクスタンジ群33人に対して標準治療群14人であった。

最も多くの患者で確認されたグレード3~5の有害事象(AE)はイクスタンジ群で高血圧8%、発熱好中球減少症7%、好中球数減少6%、疲労6%に対して高血圧6%、発熱好中球減少症4%、好中球数減少3%であった。

以上のENZAMET/ANZUP1304試験の結果よりIan D. Davis氏らは以下のように結論を述べている。”転移性前立腺がん腺患者に対するファーストライン治療としてのテストステロン抑制療法+アンドロゲン受容体阻害薬イクスタンジは、現在の標準治療に比べて全生存期間(OS)、無増悪生存期間(PFS)を統計学的有意に改善しました。”

Enzalutamide with Standard First-Line Therapy in Metastatic Prostate Cancer(New England J Med; July 11, 2019 DOI: 10.1056/NEJMoa1903835)

×

この記事に利益相反はありません。

会員登録 ログイン