進行性非小細胞肺がん患者に対する体幹部定位放射線治療後のキイトルーダ、客観的奏効率36%示すも主要評価項目を達成基準を達成できずJAMA Oncologyより


  • [公開日]2019.07.31
  • [最終更新日]2019.07.30
この記事の3つのポイント
・進行性非小細胞肺がん患者が対象の第2相試験
・体幹部定位放射線治療後のキイトルーダ単剤療法の有効性安全性を検証
・客観的奏効率は36%示したが、主要評価項目達成基準を達成できなかった

2019年7月11日、医学誌『JAMA Oncology』にて体幹部定位放射線治療(SBRT)後の進行性非小細胞肺がん患者に対する抗PD-1抗体薬であるペムブロリズマブ(商品名キイトルーダ;以下キイトルーダ)単剤療法の有効性、安全性を検証した第2相のPEMBRO-RT試験(NCT02492568)の結果がNetherlands Cancer InstituteのWillemijn S. M. E. Theelen氏らにより公表された。

PEMBRO-RT試験とは、進行性非小細胞肺がん患者(N=74人)に対して3週を1サイクルとしてキイトルーダ200mg単剤療法を投与する群、または体幹部定位放射線治療(SBRT)後に3週を1サイクルとしてキイトルーダ200mg単剤療法を投与する群に分け、主要評価項目として治療開始12週時点の客観的奏効率(ORR)、副次評価項目として無増悪生存期間PFS)、全生存期間OS)などを比較検証した多施設共同の第2相試験である。

本試験が実施された背景として、基礎試験にて体幹部定位放射線治療(SBRT)は抗PD-1抗体薬をはじめとした免疫チェックポイント阻害薬と併用することで腫瘍細胞を縮小する相乗効果が確認されている。以上の背景より、進行性非小細胞肺がん患者に対する抗PD-1抗体薬キイトルーダ+体幹部定位放射線治療(SBRT)の有用性を検証する目的で本試験が開始された。

本試験の主要評価項目である治療開始12週時点の客観的奏効率(ORR)はキイトルーダ+放射線治療群36%(95%信頼区間:21%-54%)に対してキイトルーダ単剤群18%(95%信頼区間:7%-33%)を示するも(P=0.07)、試験開始前に事前設定した主要評価項目達成基準を満たせなかった。なお、奏効の内訳としてはキイトルーダ+放射線治療群で完全奏効(CR)3人、部分奏効(PR)14人、キイトルーダ単剤群で完全奏効(CR)1人、部分奏効(PR)8人であった。

副次評価項目である無増悪生存期間(PFS)中央値はキイトルーダ+放射線治療群6.6ヶ月(95%信頼区間:4.0-14.6ヶ月)に対してキイトルーダ単剤群1.9ヶ月(95%信頼区間:1.7-6.9ヶ月)、キイトルーダ+放射線治療群で病勢進行または死亡(PFS)のリスクを29%減少するも統計学的有意な差は確認されなかった(ハザード比:0.71,95%信頼区間:0.42-1.18,P=0.19)。

なお、PD-L1発現率ステータス別の病勢進行または死亡(PFS)のリスクは、PD-L1陰性患者ではキイトルーダ+放射線治療群で統計学的有意な差(ハザード比:0.49,95%信頼区間:0.26-0.94,P =0.03)は確認されたのに対してPD-L1陽性患者ではキイトルーダ+放射線治療群で上乗せ効果は確認されなかった(ハザード比:1.14,95%信頼区間:0.45-2.89,P =0.79)。

もう1つの副次評価項目である全生存期間(OS)中央値はキイトルーダ+放射線治療群15.9ヶ月(95%信頼区間:7.1ヶ月-未到達)に対してキイトルーダ単剤群7.6ヶ月(95%信頼区間:6.0-13.9ヶ月)、キイトルーダ+放射線治療群で死亡(OS)のリスクを34%減少するも統計学的有意な差は確認されなかった(ハザード比:0.66,95%信頼区間:0.37-1.18,P=0.16)。

なお、PD-L1発現率ステータス別の死亡(OS)のリスクは、PD-L1陰性患者ではキイトルーダ+放射線治療群で統計学的有意な差(ハザード比:0.48,95%信頼区間:0.24-0.99,P =0.046)は確認されたのに対してPD-L1陽性患者ではキイトルーダ+放射線治療群で上乗せ効果は確認されなかった(ハザード比:1.4,95%信頼区間:0.42-4.66,P =0.58)。

一方の安全性として、最も多くの患者で確認された全グレード有害事象(AE)は疲労39%(N=28人)、インフルエンザ様症状32%(N=23人)、咳28%(N=20人)。なお、キイトルーダ単剤群よりもキイトルーダ+放射線治療群で多く確認された有害事象(AE)は疲労51%に対して27%(P=0.05)、肺炎26%に対して8%(P=0.06)を示した。

以上のPEMBRO-RT試験の結果よりWillemijn S. M. E. Theelen氏らは以下のように結論を述べている。”進行性非小細胞肺がん患者に対する体幹部定位放射線治療(SBRT)後の抗PD-1抗体薬キイトルーダは、キイトルーダ単剤療法に比べて2倍の客観的奏効率(ORR)を示すも、試験開始前に設定した主要評価項目達成基準を満たすことはできませんでした。”

Effect of Pembrolizumab After Stereotactic Body Radiotherapy vs Pembrolizumab Alone on Tumor Response in Patients With Advanced Non–Small Cell Lung Cancer Results of the PEMBRO-RT Phase 2 Randomized Clinical Trial(JAMA Oncol. 2019 Jul 11. doi: 10.1001/jamaoncol.2019.1478.)

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