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再発難治性多発性骨髄腫患者に対するイサツキシマブ+ポマリスト+デキサメタゾン併用療法、無増悪生存期間、客観的奏効率を有意に改善する

[公開日] 2019.06.25[最終更新日] 2019.06.25

この記事の3つのポイント ・再発難治性多発性骨髄腫患者が対象の第3相試験
・イサツキシマブ+ポマリスト+デキサメタゾン併用療法の有効性・安全性を比較検証
・ポマリスト+デキサメタゾン併用療法に比べて無増悪生存期間、客観的奏効率を統計学的有意に改善

2019年5月31日から6月4日までアメリカ合衆国・イリノイ州デキサメタゾン・シカゴで開催された米国臨床腫瘍学会(ASCO 2019)にて、再発難治性多発性骨髄腫患者に対する抗CD38モノクローナル抗体であるイサツキシマブ+ポマリドミド(商品名ポマリスト;以下ポマリスト)+低用量デキサメタゾン併用療法(Isa-Pd)の有効性、安全性を比較検証した第3相のICARIA-MM試験(NCT02990338)の結果がDana-Farber Cancer InstituteのPaul G. Richardson氏らにより公表された。

ICARIA-MM試験とは、2レジメン以上の治療歴のある再発難治性多発性骨髄腫患者(N=300人)に対して28日を1サイクルとして1、8、15、22日目にイサツキシマブ10mg/kg(2サイクル目以降は1、15日目)+1~21日目にポマリスト4mg+1、8、15、22日目にデキサメタゾン40mg併用療法を投与する群、または28日を1サイクルとして1~21日目にポマリスト4mg+1、8、15、22日目にデキサメタゾン40mg併用療法(Pd)を投与する群に1対1の割合で振り分け、主要評価項目として独立評価委員会(IRC)評価による無増悪生存期間(PFS)、副次評価項目として全奏効率(ORR)、全生存期間(OS)を比較検証した多施設共同ランダム化非盲検の第3相試験である。

本試験が実施された背景として、CD38は多発性骨髄腫細胞で高度に発現している膜貫通型糖タンパク質であり、受容体機能と細胞外酵素機能の両方を有している。抗CD38モノクローナル抗体であるイサツキシマブは本疾患に対する抗腫瘍効果が期待されており、実際第1b相試験ではイサツキシマブ療法の有用性を支持される内容であった。

本試験に登録された患者背景は下記の通りである。

前治療歴
Isa-Pd療法群=3レジメン(2-11レジメン)、プロテアソーム(PI)阻害薬100%、免疫調節薬(iMids)100%、自家造血幹細胞移植(ASCT)53.9%
Pd療法群=3レジメン(2-10レジメン)、プロテアソーム(PI)阻害薬100%、免疫調節薬(iMids)100%、自家造血幹細胞移植(ASCT)58.8%/

治療抵抗性ステータス
Isa-Pd療法群=免疫調節薬(iMids)抵抗性95.5%、レナリドミド抵抗性93.5%、プロテアソーム(PI)阻害薬抵抗性76.6%、免疫調節薬(iMids)+プロテアソーム(PI)阻害薬抵抗性73.4%
Pd療法群=免疫調節薬(iMids)抵抗性94.1%、レナリドミド抵抗性91.5%、プロテアソーム(PI)阻害薬抵抗性75.2%、免疫調節薬(iMids)+プロテアソーム(PI)阻害薬抵抗性71.9%

以上の背景を有する患者に対する本試験の結果は下記の通りである。追跡期間中央値は11.6ヶ月時点における主要評価項目である無増悪生存期間(PFS)中央値はIsa-Pd療法群11.53ヶ月に対してPd療法群6.47ヶ月、Isa-Pd療法群で病勢進行または死亡(PFS)のリスクを40.4%統計学的有意に改善した(HR:0.596,95%信頼区間:0.436-0.814)

追跡期間中央値は11.6ヶ月時点における副次評価項目である全生存期間(OS)中央値はIsa-Pd療法群、Pd療法群ともに未到達を示したが、Isa-Pd療法群で死亡(PFS)のリスクを改善する傾向が確認された(HR:0.687,95%信頼区間:0.461-1.023)。

客観的奏効率(ORR)はIsa-Pd療法群で60.4%に対してPd療法群で35.3%、最良部分奏効率(VGPR)以上はIsa-Pd療法群で31.8%に対してPd療法群で8.5%、MRD陰性達成率はIsa-Pd療法群5.2%に対してPd療法群0%を示した。

一方の安全性として、グレード3以上の治療関連有害事象(TRAE)発症率はIsa-Pd療法群86.8%に対してPd療法群70.5%、重篤な有害事象(SAE)発症率は61.8%に対してPd療法群53.7%。グレード3以上の治療関連有害事象(TRAE)発症率はIsa-Pd療法群で高かったものの、治療関連有害事象(TRAE)による投与中止、死亡に至る症例は変わらなかった。

以上のICARIA-MM試験の結果よりPaul G. Richardson氏らは以下のように結論を述べている。”再発難治性多発性骨髄腫患者に対する抗CD38モノクローナル抗体イサツキシマブ+ポマリスト+デキサメタゾン併用療法は、ポマリスト+デキサメタゾン併用療法に比べて無増悪生存期間(PFS)、客観的奏効率(ORR)を改善し、安全性プロファイルも管理可能なものであった。”

A phase III randomized, open label, multicenter study comparing isatuximab, pomalidomide, and low-dose dexamethasone versus pomalidomide and low-dose dexamethasone in patients with relapsed/refractory multiple myeloma (RRMM).(2019 ASCO Annual Meeting, Abstract No:8004)

ニュース 多発性骨髄腫 NCT02990338

山田創

製薬会社、オンコロジーメディアの運営を経て、フリーのメディカルライターへ転身。Twitterアカウント「@So_Yamada_」

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