・ニラパリブ+ベバシズマブ併用療法の有効性、安全性を比較検証
・ニラパリブ単剤療法と比較して、無増悪生存期間を統計学的有意に延長した
2019年5月31日から6月4日までアメリカ合衆国・イリノイ州・シカゴで開催された米国臨床腫瘍学会(ASCO 2019)にて、プラチナ系抗がん剤感受性のある再発卵巣がん患者に対するポリADP-リボースポリメラーゼ(PARP)阻害薬であるニラパリブ単剤療法、ニラパリブ+ベバシズマブ(商品名アバスチン;以下アバスチン)併用療法の有効性、安全性を比較検証した第2相のNSGO-AVANOVA2/ENGOT-OV24試験(NCT02354131)の結果がCopenhagen University HospitalのMansoor Raza Mirza氏らにより公表された。
NSGO-AVANOVA2/ENGOT-OV24試験とは、高悪性度漿液性または類内膜プラチナ系抗がん剤感受性のある再発卵巣がん患者(N=97人)に対して1日1回ニラパリブ300mg単剤療法を投与する群(N=49人)、または1日1回ニラパリブ300mg+3週を1サイクルとしてアバスチン15mg/kg併用療法を投与する群(N=48人)に1対1の割合で振り分け、主要評価項目として無増悪生存期間(PFS)を比較検証したランダム化比較の第2相試験である。
本試験が実施された背景として、プラチナ系抗がん剤感受性のある再発卵巣がん患者に対する標準治療はプラチナ系抗がんベースの治療であるが、この治療法では治癒が達成されない一方で蓄積毒性が懸念される。また、アバスチン、PARP阻害薬はそれぞれ本患者に対する有効性が確認されており、併用療法により有用性がある可能性がある。以上の背景より本試験が実施された。
本試験に登録された患者背景は下記の通りである。
年齢中央値
ニラパリブ単剤群=66歳(58-70歳)
ニラパリブ+アバスチン併用群=66.5歳(59-70歳)
ケモフリー期間
ニラパリブ単剤群=6-12ヶ月間 35%、12ヶ月を超える期間 65%
ニラパリブ+アバスチン併用群=6-12ヶ月間 42%、12ヶ月を超える期間 58%
前治療歴中央値
ニラパリブ単剤群=1レジメン 55%、2レジメン 39%、3レジメン以上 6%
ニラパリブ+アバスチン併用群=1レジメン 44%、2レジメン 50%、3レジメン以上 6%
BRCA遺伝子ステータス
ニラパリブ単剤群=陽性 37%
ニラパリブ+アバスチン併用群=陽性 31%
相同組換え修復欠損(HRD)ステータス
ニラパリブ単剤群=陽性 61%
ニラパリブ+アバスチン併用群=陽性 58%
以上の背景を有する患者に対する本試験の結果は下記の通りである。主要評価項目である無増悪生存期間(PFS)中央値はニラパリブ単剤群5.5ヶ月に対してニラパリブ+アバスチン併用群11.9ヶ月、ニラパリブ+アバスチン併用群で病勢進行または死亡(PFS)のリスクを65%統計学的に改善した(HR:0.35,95%信頼区間:0.21-0.57,P<0.001)。
また、サブグループ解析によるケモフリー期間、相同組換え修復欠損(HRD)ステータス、BRCA遺伝子ステータス別の無増悪生存期間(PFS)もそれぞれ検証されており、その結果は下記の通りである。ケモフリー期間別では6~12ヶ月、12ヶ月超えのどちらの群においてもニラパリブ+アバスチン併用群で病勢進行または死亡(PFS)のリスクを71%(HR:0.29,95%信頼区間:0.14-0.62,P<0.0006)、58%(HR:0.42,95%信頼区間:0.20-0.80,P<0.0062)改善した。
相同組換え修復欠損(HRD)ステータス別では、HRD陽性、陰性のどちらの群においてもニラパリブ+アバスチン併用群で病勢進行または死亡(PFS)のリスクを62%(HR:0.38,95%信頼区間:0.20-0.72,P=0.0019)、60%(HR:0.40,95%信頼区間:0.19-0.85,P=0.0129)改善した。
BRCA遺伝子ステータス別では、BRCA変異あり、なしのどちらの群においてもニラパリブ+アバスチン併用群で病勢進行または死亡(PFS)のリスクを51%(HR:0.49,95%信頼区間:0.21-1.15,P=0.0947)、68%(HR:0.32,95%信頼区間:0.17-0.58,P=0.0001)改善した。
一方の安全性として、ニラパリブ単剤群に比べてニラパリブ+アバスチン併用群で多くの患者で確認された有害事象(AE)はグレード3の高血圧、蛋白尿、深部静脈血栓症(DVT)であった。
以上のNSGO-AVANOVA2/ENGOT-OV24試験の結果よりMansoor Raza Mirza氏らは以下のように結論を述べている。”プラチナ系抗がん剤感受性のある再発卵巣がん患者に対するニラパリブ+アバスチン併用療法は、ケモフリー期間、相同組換え修復欠損(HRD)ステータス、BRCA遺伝子ステータスに関係なく無増悪生存期間(PFS)を改善し、忍容性も問題ありませんでした。”