がん患者さん、患者さんご家族対象 保険に関するグループインタビュー調査にご協力ください

「第1回希少がん患者サミット」報告(上) まれながんでも適切な診断と治療にたどりつくためには


  • [公開日]2019.06.05
  • [最終更新日]2019.06.19

 日本希少がん患者会ネットワーク(RCJ)が、4月27日、東京・築地の国立がん研究センターで、「第1回希少がん患者サミット」を初開催した。

 希少がんとは、罹患する患者数が年間10万人に6人未満のまれながん。

 サミットには、希少がんの患者・家族、医療関係者など約250人が参加し、希少がん診療の課題の提示、希少がん患者アンケートの結果の公表、がんゲノム医療などをテーマにした講演やパネルディスカッションを行った。その内容を3回に分けてレポートする。

希少がんは治療成績が悪く保険診療で使える薬が少ない

 サミットでは、まず、日本希少がん患者会ネットワーク理事長の眞島喜幸氏が、「希少がん患者に最善の医療を届けるために」と題し、RCJ設立の目的や事業内容について講演した。

 「RCJを作った背景には、希少がんの状況は5大がん(肺がん、乳がん、胃がん、大腸がん、肝臓がん)に比べて治療開発が遅れていること、全がん罹患者の20%は希少がんであるにも関わらず、全がん死では35%と治療成績が悪いことがあります。我々はネットワークを立ち上げ、希少がんの研究促進、患者・家族支援、それから政策提言を通して、希少がんの治療や研究を行う先生方の支援もしたいと考えています」と眞島氏。


(日本希少がん患者会ネットワーク理事長 眞島喜幸氏)

 RCJは2017月7月に設立され、昨年2月に一般社団法人化。現在16団体(下表)が加盟している。16団体とは違うがん種の患者・家族や各団体に所属していない人でも、RCJの入会は可能だ。

 国内外の学会、海外の希少がん患者団体とも連携し、2018年10月には日本癌治療学会の会期中に、「第1回国際希少がんシンポジウム(ESMO/JSCO/JSMO/JCA/RCJ合同セッション)」を開催した。

 2019年7月の日本臨床腫瘍学会学術集会では「希少がんinアジア」、10月の日本癌治療学会では「第2回国際希少がんシンポジウム」を学会と共催する予定だ。

 RCJでは、国立がん研究センターが進める希少がん患者向けの産学協働プロジェクト「マスターキー(MASTER KEY)プロジェクト」への協力も進めている。

 「マスターキープロジェクトは、希少がんの患者さんが遺伝子解析を受けることによって、他のがん種で使っている薬が使えるようになるかもしれない道筋を作る画期的なプロジェクトです。今日の会のように希少がん患者さんとの交流、学会・学術研究機関との連携とゲノム医療・研究を促進し、国際的な学会や患者団体とも連携して、希少がんの患者さんに1日でも早く新しい薬、新しい治療を届けるのが我々の願いです」。眞島氏は、そう強調した。

希少がんでは病理診断が病理医によって異なり治療方針を間違う恐れも

 続いて、「希少がんを取り巻く状況と希少がんセンターの取り組み」と題して、国立がん研究センター希少がんセンター長の川井章氏が講演した。

 腎盂・尿管・尿道の上皮性腫瘍、軟部肉腫、神経内分泌腫瘍、皮膚のメラノーマなど、希少がんには約190種類あることを紹介。希少がんの治療成績ががん全体と比べて悪い理由として、以下の6つ挙げた。

 その6つの理由とは、(1)医療者の経験不足、(2)情報の不足、(3)教育・訓練不足、(4)最適化されていない不適切な診療、(5)基礎研究の不足、(6)臨床研究の不足。


 (左の棒グラフは欧州、右のグラフは日本の患者数が多いがんと希少がんの生存率を比較した結果(川井章氏資料より))

 がんの診断・治療には、腫瘍の細胞や組織を顕微鏡で見て病型を判断する病理診断が不可欠だが、川井氏は、希少がんでは病理診断が病理医によって異なることがあると指摘した。

 フランスで軟部肉腫と診断された1463例を検討した結果では、軟部肉腫を専門とする病理医と、専門外の病理医と診断結果が完全に一致したのは824例(56%)で、40%以上の症例で何らかの不一致がみられたとの報告がある。

 川井氏は、悪性腫瘍である「脊索腫(せきさくしゅ)」として紹介されてきた例が、実際にはそのまま放っておいてもよい良性腫瘍の「神経鞘腫(しんけいしょうしゅ)」、「横紋筋肉腫(悪性)」とされたケースが良性の「結節性筋膜炎」だった事例を紹介した。

希少がんホットラインなどを活用して最適な病院で治療を

 「もしかしたら、希少がんの診断では同じようなことが起きる可能性があります。日本では、どのくらい不一致が起こっているのかというデータすらないので、現在、当センター中央病院の西田俊朗院長が主任研究者の厚生労働省の研究班が、『希少がんの病理診断と診療体制の実態と診療体制の実態とあり方に対する研究』を行っています」


(国立がん研究センター希少がんセンター長 川井章氏)

 川井氏はそう語り、希少がん診療・研究を遂行する拠点として、2014年6月に国立がん研究内に開設された希少がんセンターについて説明した。

 同センターでは、希少がんに関する情報不足解消のために、患者・家族向けのセミナー「希少がんMeet the Expert」を認定NPO法人キャンサーネットジャパン、がん情報サイト「オンコロ」などと一緒に共催している他、専任の看護師による電話相談「希少がんホットライン」(https://www.ncc.go.jp/jp/rcc/hotline/index.html)も開設している。

 希少がんホットラインに寄せられた相談は、約1万5000件以上(14年1月~17年12月)に達し、希少がんセンターの専門医ネットワークを用いて、できるだけ自分の家の近くで適切な治療が受けられるように希少がんの診療施設の紹介も行っている。

 18年4月には、国立がん研究センター希少がんセンターが希少がん中央機関に任命され、希少がん研究開発プロジェクトチーム、希少がん医療プロジェクトチームを構築した。

 希少がん医療推進プロジェクトチームの柱は、希少がんの病理診断の正確性の向上を目指す「病理診断プロジェクトチーム」、望ましい診療体制を構築する「希少がんネットワークプロジェクトチーム」、患者さんが最適な治療を受けられるよう支援する「患者支援プロジェクトチーム」の3つである。

 川井氏は、「マスターキープロジェクトのような新しい研究、医療者・アカデミア、製薬企業、政府・厚生労働省、最も大事な患者さん・患者会が手を携えて、希少がんの診療・研究が抱えるさまざまな問題に対処し解決していきたいと考えています」と訴えた。

 次回は、注目の「がんゲノム医療」と「マスターキープロジェクト」をテーマにした講演を中心に取り上げる。
(取材・文/医療ライター・福島安紀)

第1回希少がん患者サミットシリーズ


×

リサーチのお願い


この記事に利益相反はありません。