・ハーセプチン治療歴のある患者を対象に、オプジーボ単剤療法の有効性・安全性を検証
・全生存期間中央値はオプジーボ群8.3ヶ月に対してプラセボ群3.1ヶ月で、死亡のリスクを62%減少
2019年5月13日、医学誌『Gastric Cancer』にて複数治療歴のある進行性胃/胃食道接合部がん患者に対する抗PD-1抗体薬であるニボルマブ(商品名オプジーボ;以下オプジーボ)単剤療法の有効性、安全性を比較検証した第3相のATTRACTION-2試験(NCT02746796)における抗HER2抗体薬であるトラスツズマブ(商品名ハーセプチン;以下ハーセプチン)治療歴別のサブグループ解析の結果が大阪大学の佐藤太郎氏らにより公表された。
ATTRACTION-2試験とは、複数治療歴のある進行性胃/胃食道接合部がん患者に対して3レジメン以降の治療として2週に1回オプジーボ3mg/kg単剤療法を病勢進行または予期せぬ有害事象(AE)発現するまで投与する群、またはプラセボ単剤療法を投与する群に2対1の割合で振り分け、主要評価項目として無増悪生存期間(PFS)、全生存期間(OS)、副次評価項目として客観的奏効率(ORR)、安全性などを比較検証した第3祖試験である。
本サブグループ解析が実施された背景として、HER2陽性進行性胃/胃食道接合部がん患者に対する免疫チェックポイント阻害薬の有効性、安全性を検証したデータが不十分のためである。以上の背景より、ATTRACTION-2試験に参加した患者の内、ハーセプチン治療歴のある患者を対象にしてオプジーボ単剤療法の有効性、安全性が本サブグループ解析により検証された。
なお、ATTRACTION-2試験に参加した患者493人の中でハーセプチン治療歴のある患者は81人でその内訳はオプジーボ群59人に対してプラセボ群22人、ハーセプチン治療歴のない患者は412人でその内訳はオプジーボ群271人に対してプラセボ群141人である。以上の背景を有する患者に対する本試験の結果は下記の通りである。
主要評価項目であるハーセプチン治療歴のある患者群における全生存期間(OS)中央値はオプジーボ群8.3ヶ月(95%信頼区間:5.3–12.9ヶ月)に対してプラセボ群3.1ヶ月(95%信頼区間:1.9–5.3ヶ月)、オプジーボ群で死亡(OS)のリスクを62%減少した(HR:0.38,95%信頼区間:0.22–0.66,P =0.0006)。また、ハーセプチン治療歴のない患者群における全生存期間(OS)中央値はオプジーボ群4.8ヶ月(95%信頼区間:4.1–6.0ヶ月)に対してプラセボ群4.2ヶ月(95%信頼区間:3.6–4.9ヶ月)、オプジーボ群で死亡(OS)のリスクを29%減少した(HR:0.71,95%信頼区間:0.57–0.88,P =0.0022)。
また、もう1つの主要評価項目であるハーセプチン治療歴のある患者群における無増悪生存期間(PFS)中央値はオプジーボ群1.6ヶ月(95%信頼区間:1.5–4.0ヶ月)に対してプラセボ群1.5ヶ月(95%信頼区間:1.3–2.9ヶ月)、オプジーボ群で病勢進行または死亡(PFS)のリスクを51%減少した(HR:0.49,95%信頼区間:0.29–0.85,P =0.0111)。また、ハーセプチン治療歴のない患者群における無増悪生存期間(PFS)中央値はオプジーボ群1.6ヶ月(95%信頼区間:1.5–2.4ヶ月)に対してプラセボ群1.5ヶ月(95%信頼区間:1.5–1.5ヶ月)、オプジーボ群で病勢進行または死亡(PFS)のリスクを36%減少した(HR:0.64,95%信頼区間:0.51–0.80,P =0.0001)。
以上のATTRACTION-2試験のサブグループ解析の結果より佐藤太郎氏らは以下のように結論を述べている。”ハーセプチン治療歴のある進行性胃/胃食道接合部がん患者に対する抗PD-1抗体薬オプジーボ単剤療法は、良好な抗腫瘍効果を示し、忍容性も問題ありませんでした。”