・nab-Paclitaxel療法の有効性・安全性をsolvent-based Paclitaxelと比較検証
・無浸潤疾患生存リスクは全患者においてnab-Paclitaxel群で34%減少
2019年5月13日、医学誌『Journal of Clinical Oncology』にて早期乳がん患者に対するnab-Paclitaxel(nab-PTX)療法の有効性、安全性を比較検証した第3相のThe GeparSepto試験(NCT01583426)の結果がMichael Untch氏らにより公表された。
本試験は、早期乳がん患者に対して1週に1回nab-Paclitaxel(nab-PTX)150mg/m2療法を12サイクル投与する群、または1週に1回solvent-based Paclitaxel(sb-PTX)80mg/m2療法を12サイクル投与する群に1対1の割合で振り分け、主要評価項目として組織学的寛解率(pCR)、副次評価項目として無浸潤疾患生存期間(iDFS)、無イベント生存期間(EFS)、無病生存期間(DFS)、全生存期間(OS)などを比較検証したオープンラベルランダム化の第3相試験である。
なお、両群ともに初回治療後に3週に1回エピルビシン90mg/m2+シクロホスファミド600mg/m2療法を4サイクル投与し、HER2陽性患者の場合には3週に1回トラスツズマブ6~8mg/kg+ペルツズマブ420~840mg併用療法を1年間投与している。
本試験が実施された背景として、nab-Paclitaxel(nab-PTX)は血清アルブミンにパクリタキセルを結合させナノ粒子化した薬剤であり、solvent-based Paclitaxel(sb-PTX)の溶媒(ポリオキシエチレンヒマシ油および無水エタノール)による有害事象がないことから、有効性が期待されている。実際、The GeparSepto試験にてnab-Paclitaxel(nab-PTX)療法はsolvent-based Paclitaxel(sb-PTX)療法に比べて組織学的寛解率(pCR)を改善することが示されている。以上の背景より、本試験はnab-Paclitaxel(nab-PTX)療法の有効性を長期にフォローアップした結果を検証することを目的にして実施されている。
本試験にフォローアップ期間中央値49.6ヶ月時点における結果は下記の通りである。副次評価項目である無浸潤疾患生存(iDFS)リスクは全患者においてnab-Paclitaxel(nab-PTX)群で34%減少(HR:0.66,95%信頼区間:0.51-0.86)し統計学的有意に改善した。トリプルネガティブ乳がん患者において34%減少(HR:0.66,95%信頼区間:0.42-1.05)、HER2陰性/ホルモン受容体陽性患者において33%減少(HR:0.66,95%信頼区間:0.47-0.96)、HER2陽性/ホルモン受容体陽性患者において32%減少(HR:0.68,95%信頼区間:0.33-1.41)、HER2陽性/ホルモン受容体陰性患者において50%減少(HR:0.50,95%信頼区間:0.18-1.41)を示した。
無イベント生存(EFS)リスクは全患者においてnab-Paclitaxel(nab-PTX)群で38%減少(HR:0.62,95%信頼区間:0.48-0.80)、トリプルネガティブ乳がん患者において38%減少(HR:0.62,95%信頼区間:0.39-0.99)、HER2陰性/ホルモン受容体陽性患者において35%減少(HR:0.65,95%信頼区間:0.45-0.94)、HER2陽性/ホルモン受容体陽性患者において43%減少(HR:0.57,95%信頼区間:0.26-1.23)、HER2陽性/ホルモン受容体陰性患者において58%減少(HR:0.42,95%信頼区間:0.14-1.25)を示した。
無病生存期間(DFS)リスクは全患者においてnab-Paclitaxel(nab-PTX)群で33%減少(HR:0.67,95%信頼区間:0.52-0.87)、トリプルネガティブ乳がん患者において34%減少(HR:0.66,95%信頼区間:0.42-1.04)、HER2陰性/ホルモン受容体陽性患者において33%減少(HR:0.67,95%信頼区間:0.47-0.96)、HER2陽性/ホルモン受容体陽性患者において25%減少(HR:0.75,95%信頼区間:0.38-1.50)、HER2陽性/ホルモン受容体陰性患者において50%減少(HR:0.50,95%信頼区間:0.18-1.41)を示した。
全生存期間(OS)リスクは全患者においてnab-Paclitaxel(nab-PTX)群で18%減少(HR:0.82,95%信頼区間:0.59-1.16)するも両群間に統計学的な差は確認されなかった。トリプルネガティブ乳がん患者において26%減少(HR:0.74,95%信頼区間:0.40-1.38)、HER2陰性/ホルモン受容体陽性患者において19%減少(HR:0.81,95%信頼区間:0.51-1.29)、HER2陽性/ホルモン受容体陽性患者において6%増加(HR:1.06,95%信頼区間:0.37-3.01)、HER2陽性/ホルモン受容体陰性患者において5%減少(HR:0.95,95%信頼区間:0.26-3.54)を示した。
以上のThe GeparSepto試験の結果よりMichael Untch氏らは以下のように結論を述べている。”早期乳がん患者に対するnab-Paclitaxel(nab-PTX)療法は、solvent-based Paclitaxel(sb-PTX)療法に比べて組織学的寛解率(pCR)、無浸潤疾患生存率(iDFS)を改善しました。”