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国内初のCAR-T療法キムリア、薬価は3349万円に

[公開日] 2019.05.20[最終更新日] 2019.05.20

目次

5月15日、厚生労働相の諮問機関である中央社会保険医療協議会(中医協)は、日本国内初のがん免疫療法キメラ抗原受容体発現T細胞(CAR-T)療法であるチサゲンレクル(商品名キムリア、ノバルティスファーマ株式会社)について、公定価格(薬価)を3349万円にすることを了承した。なお、同剤の投与に係る技術料として、末梢血の採取に約17万円、移植時は31万円が別途発生する。

4月18日に、ノバルティスファーマ株式会社がメディア向けに開催した記者会見では、発売直後は2~3医療機関への供給に限定して行うとしている。また、5月17日、株式会社スズケンはキムリアの国内流通を同グループが担当すると発表している。

この了承は、再発又は難治性のCD19陽性のB細胞性急性リンパ芽球性白血病(B-ALL)とびまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)を対象とした国際多施設共同第2相試験「ELIANA試験」「JULIET試験」の結果に基づくもの。2試験の詳細データは以下の通り。

ELIANA試験

再発または難治性のCD19陽性B-ALLの小児および若年成人患者が対象のELIANA試験では、主解析時点までに92名が登録され75名がキムリアの投与を受けた。主要評価項目の全寛解率(完全寛解(CR)または血球数回復が不十分な完全寛解(Cri))は、中間解析時点で82.0%(41/50名)(98.9%信頼区間:64.5%,93.3%)だった。また主解析時点で、寛解を達成した患者における寛解持続期間の中央値は未到達(追跡期間中央値:9.92ヶ月)であり、持続した寛解が得られている。

ELIANA試験において、キムリアが投与された患者で最も高頻度に認められた副作用はサイトカイン放出症候群(CRS)(77%,58/75名)であり、重篤なCRSは63%(47/75名)に発現したが、死亡に至ったCRSはなかった。また、高頻度に認められたその他の副作用(承認時までの集計)は、低γグロブリン血症(39%)、発熱性好中球減少症(27%)、発熱、低血圧(各25%)、頻脈(24%)、脳症(21%)、食欲減退(20%)などだった。

JULIET試験

それまでの治療に難治性あるいは、再発を繰り返して治療選択肢が限られた、再発または難治性のCD19陽性DLBCLの成人患者を対象としたJULIET試験では、追加解析時点までに165名が登録され、111名がキムリアの投与を受けた。主要評価項目の奏効率(完全奏効(CR)または部分奏効(PR))は、中間解析時点で58.8%(30/51名)(99.06%信頼区間:39.8%,76.1%)だった。また、追加解析時点では、奏効が得られた患者における奏効持続期間の中央値は未到達(追跡期間中央値:13.9ヶ月)であり、持続した奏効が得られている。

JULIET試験において、キムリアが投与された患者で最も高頻度に認められた副作用は、CRS(58%,57/99名)であり、重篤な事象のCRSは29%(29/99名)に発現したが、死亡に至ったものはなかった。また、高頻度に認められたその他の副作用(承認時までの集計)は、発熱(25%)、低血圧(21%)などだった。

なお、サイトカイン放出症候群(CRS)への対策としては、関節リウマチなどの適応を有するヒト化抗ヒトIL-6レセプターモノクローナル抗体トシリズマブ(商品名アクテムラ、中外製薬株式会社)が、「腫瘍特異的T細胞輸注療法に伴うサイトカイン放出症候群」の効能・効果、およびサイトカイン放出症候群に対する用法・用量の追加承認を3月26日付で取得している。

キムリアの製造過程と基本原理

キムリアの製造では、まず特殊な血液ろ過システムを通して、「白血球アフェレーシス」という方法で、T細胞を含む白血球を患者から採取する。製造過程全体を通して、患者ごとの細胞を確実に管理するため、細胞には個別のID番号が付与される。その後、細胞は凍結され、ノバルティスの製造施設に輸送される。

輸送後、細胞を解凍し、不活化ウイルスを用いて遺伝子導入を行い、T細胞を改変。改変されたCAR-T細胞は、特定の抗原を発現するがん細胞と健康な細胞を認識できるようになる。次に、改変したT細胞を増殖・洗浄した後、出荷前に品質検査を行う。そして、CAR-T細胞は凍結され、患者が治療を行う医療機関に輸送される。CAR-T細胞は、患者の血液に投与され、特定の抗原を発現するがん細胞やその他の細胞を認識し、がんを攻撃する。

(画像提供:ノバルティス社)

参照:
中央社会保険医療協議会 総会(第414回) 議事次第
ノバルティスファーマ株式会社プレスリリース
中外製薬株式会社ニュースリリース

ニュース 血液がん サイトカイン放出症候群

3Hメディソリューション株式会社 執行役員 可知 健太

オンコロジー領域の臨床開発に携わった後、2015年にがん情報サイト「オンコロ」を立ち上げ、2018年に希少疾患情報サイト「レアズ」を立ち上げる。一方で、治験のプロジェクトマネジメント業務、臨床試験支援システム、医療機器プログラム開発、リアルワールドデータネットワーク網の構築等のコンサルテーションに従事。理学修士。

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