・スチバーガ単剤療法の有効性・安全性を比較検証
・スチバーガ群で病勢進行または死亡のリスクを58%改善
2019年4月23日、医学誌『Journal of Clinical Oncology』にて治療歴のある転移性骨肉腫患者に対するマルチキナーゼ阻害薬であるレゴラフェニブ(商品名スチバーガ;以下スチバーガ)単剤療法の有効性、安全性を比較検証した第2相のSARC024試験(NCT02048371)の結果がOregon Health & Sciences UniversityのLara E. Davis氏らにより公表された。
SARC024試験とは、少なくとも1レジメンの前治療歴を有する転移性骨肉腫患者(N=42人)に対して28日を1サイクルとして1日1回スチバーガ160mg単剤療法を21日間投与し、7日間休薬する群(N=22人)、または28日を1サイクルとしてプラセボ単剤療法を21日間投与し、7日間休薬する群(N=20人)に無作為に振り分け、主要評価項目として無増悪生存期間(PFS)、副次評価項目として客観的奏効率(ORR)、安全性などを比較検証したランダム二重盲検下の第2相試験である。
本試験が実施された背景として、転移性骨肉腫の治療成績を向上させるため多数の研究が実施されているが、ここ30年間で重要な改善は見られていない。また、別のマルチキナーゼ阻害薬であるソラフェニブ(商品名ネクサバール)が転移性骨肉腫患者に対して無増悪生存期間(PFS)を改善する結果が第2相試験で示された。以上の背景より、第1相試験で持続的な抗腫瘍効果が確認されているスチバーガ単剤療法の有用性が本試験で確認される目的で実施された。
本試験に登録された患者背景は下記の通りである。
年齢中央値
スチバーガ群=33歳(18-70歳)
プラセボ群=47歳(19-76歳)
性別
スチバーガ群=男性6人、女性16人
プラセボ群=男性14人、女性6人
前治療歴中央値
スチバーガ群=1レジメン50%、1レジメン以上50%
プラセボ群=1レジメン50%、1レジメン以上50%
Performance Status
スチバーガ群=スコア0-1が100%、スコア2が0%
プラセボ群=スコア0-1が95%、スコア2が5%
原発腫瘍部位
スチバーガ群=四肢59.1%、頭頸部13.6%、骨盤/脊椎13.6%、その他13.6%
プラセボ群=四肢70%、頭頸部20%、骨盤/脊椎5%、その他5%
以上のように両群間の患者背景は、プラセボ群で高齢者、男性が多いものの、大きな偏りは確認されなかった。
以上の背景を有する患者に対する本試験の結果は下記の通りである。主要評価項目である無増悪生存期間(PFS)中央値はスチバーガ群3.6ヶ月(95%信頼区間:2.0-7.6ヶ月)に対してプラセボ群1.7ヶ月(95%信頼区間:1.2-1.8ヶ月)、スチバーガ群で病勢進行または死亡(PFS)のリスクを58%統計学的有意に改善した(HR:0.42,95%信頼区間:0.21-0.85,P=0.017)。また、8週無増悪生存率(PFS)、16週無増悪生存率(PFS)はそれぞれスチバーガ群で79.0%、44.4%に対してプラセボ群25.0%、10.0%を示した。
また、その他評価項目である全生存期間(OS)中央値はスチバーガ群11.1ヶ月(95%信頼区間:4.7-26.7ヶ月)に対してプラセボ群13.4ヶ月(95%信頼区間:8.5-38.1ヶ月)、スチバーガ群で死亡(OS)のリスクを26%増加(HR:1.26,95%信頼区間:0.51-3.13,P=0.62)するも両群間で統計学有意な差は確認されなかった。
一方の安全性として、全グレードの治療関連有害事象(TRAE)発症率はスチバーガ群91%に対してプラセボ群60%、グレード3以上の治療関連有害事象(TRAE)発症率はスチバーガ群64%に対してプラセボ群45%の患者で確認された。
スチバーガ群で最も多くの患者で確認された全グレードの治療関連有害事象(TRAE)は手足症候群36%、高血圧32%、吐き気23%、下痢18%、口内炎14%、黄斑疹14%、嘔吐14%。最も多くの患者で確認されたグレード3以上の治療関連有害事象(TRAE)は高血圧14%、口内炎9%、血小板減少性9%、低リン血症9%、四肢痛9%を示した。
以上のSARC024試験の結果よりLara E. Davis氏らは以下のように結論を述べている。”転移性骨肉腫患者に対するマルチキナーゼ阻害薬スチバーガ単剤療法は、主要評価項目である無増悪生存期間(PFS)の改善を達成しました。また、既存のスチバーガの安全性プロファイルと一致しており、本試験で新たに確認された治療関連有害事象(TRAE)はありませんでした。以上の結果より、転移性骨肉腫患者に対するスチバーガ単剤療法は治療選択肢として今後検討すべき治療法でしょう。”