・オプジーボ単剤療法の有効性・安全性を検証
・奏効率は0%を示し、15人中11人の患者が病勢安定を示していた
2019年3月、医学誌『European Journal of Cancer』にて放射線を含む化学療法治療歴を有する切除不能または再発胸腺がん患者に対する抗PD-1抗体薬であるニボルマブ(商品名オプジーボ;以下オプジーボ)単剤療法の有効性、安全性を検証した第2相のPRIMER試験(UMIN000022007)の結果がNational Cancer Center HospitalのYuki Katsuya氏らにより公表された。
PRIMER試験とは、放射線を含む少なくとも1種類のプラチナ系抗がん剤治療歴を有する切除不能または再発胸腺がん患者(N=15人)に対して2週間に1回オプジーボ3mg/kgを投与し、主要評価項目としてRECIST v1.1中央判定による奏効率(RR)、副次評価項目として疾患制御率(DCR)、無増悪生存期間(PFS)、全生存期間(OS)、疾患制御率(DCR)、安全性などを検証した医師主導の多施設共同非盲検下単群の第2相試験である。
本試験が実施された背景として、胸腺がんは100万あたり0.15~0.32人の発症率であり、非常な稀な悪性腫瘍である。また、胸腺がんの初期は無症状であり、診断時は進行期で発見されることから5年全生存率(OS)は50.5%と予後不良である。現在、プラチナ系抗がん剤治療後の切除不能または再発胸腺がん患者に対する治療としてはスニチニブ単剤療法、およびS-1単剤療法が良好な抗腫瘍効果を示しているが、標準治療としては確立していない。以上の背景より、本試験が実施された。
本試験に登録された患者(N=15人)背景は下記の通りである。年齢中央値は55歳(34-70歳)。人種は日本人100%。性別は男性12人、女性3人。肺がんの種類は扁平上皮がん13人、腺がん1人、その他1人。
以上の背景を有するオプジーボの治療期間中央値8サイクル(3-33サイクル)時点における結果は下記の通りである。主要評価項目である奏効率(RR)は0%(95%信頼区間:0%-21.8%)を示した。なお、11人の患者が病勢安定(SD)を示していた。
また、副次評価項目である疾患制御率(DCR)は73.3%(95%信頼区間:44.9%–92.2%)、無増悪生存期間(PFS)中央値は3.8ヶ月(95%信頼区間:1.9-7.0ヶ月)、12ヶ月無増悪生存率(PFS)9.0%(95%信頼区間:0.6%-32.7%)、全生存期間(OS)中央値は14.1ヶ月(95%信頼区間:11.1ヶ月-未到達)、12ヶ月全生存率(OS)は60.0%(95%信頼区間:31.8%-79.7%)を示した。
一方の安定性として、最も多くの患者で確認された全グレードの有害事象(AE)は低アルブミン血症13人、貧血13人、リンパ球減少8人、高血糖8人、高カリウム血症7人、低ナトリウム血症6人、倦怠感4人。また、グレード3または4の有害事象(AE)は低アルブミン血症1人、リンパ球減少1人、低ナトリウム血症1人で確認された。
また、最も多くの患者で確認された全グレードの免疫関連有害事象(irAE)はAST上昇8人、皮膚障害4人、ALT上昇3人、下痢3人、CPK増加3人。また、グレード3または4の免疫関連有害事象(irAE)はAST上昇1人で確認された。
以上のPRIMER試験の結果よりTakashi Seto氏は以下のように結論を述べている。”放射線を含む化学療法治療歴を有する切除不能または再発胸腺がん患者に対する抗PD-1抗体薬オプジーボ単剤療法は、小集団にも関わらず奏効を示しませんでした。”