・ビタミンD補充療法による再発抑制効果を検証
・再発または死亡のリスクを24%減少するも有意差は確認されず
2019年4月9日、医学誌『JAMA Network』にて術後消化管がん日本人患者に対するビタミンD補充療法による再発抑制効果を検証したランダム化のAMATERASU試験(UMIN000001977)の結果がJikei University School of MedicineのMitsuyoshi Urashima氏らにより公表された。
本試験は、術後食道、大腸などの消化管がん日本人患者(N=417人)に対してビタミンD 2000IU/日を投与する群(N=251人)、またはプラセボを投与する群(N=166人)に無作為に振り分け、主要評価項目として5年無再発生存率(RFS)、副次評価項目として5年全生存率(OS)を検証したプラセボ比較二重盲検下ランダム化試験である。
本試験が実施された背景として、過去のコーホート試験にて血清25-ヒドロキシビタミンDが20ng/mlより多い人は、20ng/ml以下の人に比べてがんの発症率、死亡率、特に消化管がんによる死亡率が低いことが判っている。以上の背景より、術後消化管がん患者に対するビタミンD補充療法による再発抑制効果が検証された。
本試験に登録された患者背景は下記の通りである。
年齢
ビタミンD群=35-59歳20%、60-65歳22%、66-73歳25%、74-90歳33%
プラセボ群=35-59歳30%、60-65歳25%、66-73歳29%、74-90歳16%
合併症
ビタミンD群=高血圧41%、糖尿病18%、内分泌疾患13%、心血管疾患9%、慢性腎疾患2%、喘息1.2%、骨系統疾患0.4%
プラセボ群=高血圧35%、糖尿病14%、内分泌疾患11%、心血管疾患5%、慢性腎疾患1%、喘息0%、骨系統疾患0.6%
がんの種類
ビタミンD群=食道がん9%、胃がん42%、小腸がん0.4%、大腸がん49%
プラセボ群=食道がん11%、胃がん41%、小腸がん0.6%、大腸がん48%
がんの進行期
ビタミンD群=ステージIが46%、ステージIIが25%、ステージIIIが29%
プラセボ群=ステージIが40%、ステージIIが29%、ステージIIIが31%
ベースライン時点の血清25-ヒドロキシビタミンD値
ビタミンD群=20ng/ml未満が41%、20-40ng/mlが58%、40ng/mlより大きいが1.6%
プラセボ群=20ng/ml未満が44%、20-40ng/mlが56%、40ng/mlより大きいが0.6%
以上の背景を有する患者で再発または死亡イベントがビタミンD群20%、プラセボ群26%の患者で発生した時点における結果は下記の通りである。主要評価項目である5年無再発生存率(RFS)はビタミンD群77%に対してプラセボ群69%、ビタミンD群で再発または死亡(RFS)のリスクを24%減少(HR:0.76,95%信頼区間:0.50-1.14,P=0.18)するも統計学的有意な差は確認されなかった。
副次評価項目である5年全生存率(OS)はビタミンD群82%に対してプラセボ群81%、ビタミンD群で死亡(OS)のリスクを5%減少(HR:0.95,95%信頼区間:0.57-1.57,P=0.83)するも統計学的有意な差は確認されなかった。
また、サブグループ解析では、ベースライン時点の血清25-ヒドロキシビタミンD値が20ng/ml未満であるLow群(N=173人)、20-40ng/mlであるMiddle群(N=232人)別で検証されており、その結果は下記の通りである。
Middle群における5年無再発生存率(RFS)はビタミンD群85%に対してプラセボ群71%、ビタミンD群で再発または死亡(RFS)のリスクを統計学有意に54%減少(HR:0.46,95%信頼区間:0.24-0.86,P=0.02)した。一方で、Low群における5年無再発生存率(RFS)は、ビタミンD群で再発または死亡(RFS)のリスクを15%増加(HR:1.15,95%信頼区間:0.65-2.05,P=0.63)し、両群間に統計学的有意な差は確認されなかった。
Middle群における5年全生存率(OS)はビタミンD群で死亡(OS)のリスクを40%減少(HR:0.60,95%信頼区間:0.28-1.30)するも両群間に統計学的有意な差は確認されなかった。一方で、Low群における5年全生存率(OS)はビタミンD群で死亡(OS)のリスクを36%増加(HR:1.36,95%信頼区間:0.66-2.81)し、両群間に統計学的有意な差は確認されなかった。
以上のAMATERASU試験の結果よりMitsuyoshi Urashima氏らは以下のように結論を述べている。”術後消化管がん日本人患者に対するビタミンD補充療法は、プラセボに比べて5年無再発生存率(RFS)を統計学有意に改善しませんでした。”