・フルベストラント+アナストロゾール併用療法の有効性・安全性を比較検証
・併用群で病勢進行または死亡のリスクを19%減少
2019年3月28日、医学誌『The New England Journal of Medicine』にて閉経後のホルモン受容体陽性転移性乳がん患者に対する抗エストロゲン薬であるフルベストラント+アロマターゼ阻害薬であるアナストロゾール併用療法の有効性、安全性を比較検証した第3相試験(NCT00075764)の結果がUniversity of California, SantaのRita S. Mehta氏らにより公表された。
本試験は、閉経後のホルモン受容体陽性転移性乳がん患者(N=707人)に対してフルベストラント+アナストロゾール併用療法を投与する群、またはアナストロゾール単剤療法を投与する群に1対1の割合で無作為に振り分け、主要評価項目として無増悪生存期間(PFS)、副次評価項目として全生存期間(OS)を比較検証した多施設共同ランダム化の第3試験の結果である。
本試験が実施された背景として、ホルモン受容体陽性転移性乳がん患者に対してアナストロゾールのような第3世代アロマターゼ阻害薬は有効性が確認されており、その全生存期間(OS)中央値は41.3ヶ月程である。しかしながら、エストラジオール低率である患者ではアロマターゼ阻害薬に対して耐性を示しており、抗エストロゲン薬であるフルベストラントとの併用療法が期待されている。以上の背景より本試験が実施された。
本試験の病勢進行または死亡(PFS)のイベント647件発生時点における主要評価項目である無増悪生存期間(PFS)の結果は下記の通りである。フルベストラント+アナストロゾール併用群15.0ヶ月に対してアナストロゾール単剤群13.5ヶ月、フルベストラント+アナストロゾール併用群で病勢進行または死亡(PFS)のリスクを19%減少(HR:0.81,95%信頼区間:0.69-0.94,P=0.007)した。
サブグループ解析では、前治療としてタモキシフェン投与歴の有無別で検証しており、その結果は下記の通りである。タモキシフェン投与なしの患者群における無増悪生存期間(PFS)中央値はフルベストラント+アナストロゾール併用群16.7ヶ月に対してアナストロゾール単剤群12.7ヶ月(HR:0.73,95%信頼区間:0.60-0.89)。また、タモキシフェン投与ありの患者群における無増悪生存期間(PFS)中央値はフルベストラント+アナストロゾール併用群13.9ヶ月に対してアナストロゾール単剤群13.6ヶ月(HR:0.93,95%信頼区間:0.73-1.19)。
本試験の死亡(OS)のイベント508件発生時点における副次評価項目である全生存期間(OS)中央値の結果は下記の通りである。フルベストラント+アナストロゾール併用群49.8ヶ月に対してアナストロゾール単剤群42.0ヶ月、フルベストラント+アナストロゾール併用群で死亡(OS)のリスクを18%減少(HR:0.82,95%信頼区間:0.69-0.98,P=0.03)した。
サブグループ解析では、前治療としてタモキシフェン投与歴の有無別で検証しており、その結果は下記の通りである。タモキシフェン投与なしの患者群における全生存期間(OS)中央値はフルベストラント+アナストロゾール併用群52.2ヶ月に対してアナストロゾール単剤群40.3ヶ月(HR:0.73,95%信頼区間:0.58-0.92)。また、タモキシフェン投与ありの患者群における全生存期間(OS)中央値はフルベストラント+アナストロゾール併用群48.2ヶ月に対してアナストロゾール単剤群43.5ヶ月(HR:0.97,95%信頼区間:0.74-1.27)。
一方の安全性として、グレード3の治療関連有害事象(TRAE)発症率はフルベストラント+アナストロゾール併用群15%(N=51/348人)に対してアナストロゾール単剤群13%(N=43/338人)の患者で確認された。また、多くの患者で確認されたグレード3の治療関連有害事象(TRAE)は筋骨格痛、疲労、ほてり、気分の変化、そして胃腸症状などであった。なお、治療関連有害事象(TRAE)による治療中止率は低率であり、フルベストラント+アナストロゾール併用群で12人、アナストロゾール単剤群で5人であった。
以上の第3相試験の結果よりRita S. Mehta氏らは以下のように結論を述べている。”閉経後のホルモン受容体陽性転移性乳がん患者さんに対してフルベストラント+アナストロゾール併用療法は、アナストロゾール単剤療法に比べて全生存期間(OS)を改善することが本試験の結果より示されました。”