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ウソ情報がツイッターやFacebookでより多く拡散されてしまう現実を科学的に検証

[公開日] 2019.03.14[最終更新日] 2019.03.14

目次

この記事の3つのポイント ・オンライン情報の事実とうその広がり方を科学的に検証 ・ツイッターでは、うその情報が6倍の速さで拡散する ・Facebookでも同じ傾向となる別の研究結果は存在
ツイッターで投稿されるオンライン情報は、話題の中身にかかわらず、うそ(フォルス:false)の方が事実(トゥルー:true)よりも有意に速く、広く、深く広がることが科学的、客観的に検証された。これはマサチューセッツ工科大学(MIT)のSinan Aral氏らによる研究成果で、2018年3月9日のScience誌に掲載された。パソコンやスマートフォンなどを介する情報の流れは、現実の社会通念とは異なり、うそと事実が同じ加速度を持つ。その上で、事実よりもうその拡散傾向が強いのは、人間自身がそれに加担している可能性があるとAral氏らは指摘している。

約12年間に発信された12万6000ツイートの拡散構造を定量分析

Aral氏らの研究グループは、2006年から2017年の間に発信されたツイッターの中で、新規ニュースのおよそ約12万6000件を分析した。合計で約300万人が、450万回以上発信したツイートである。調査対象としたこれらのツイートは、snopes.compolitifact.comといった独立した事実確認(ファクトチェック)組織6団体のチェックにより、発信時点で事実、またはうそが95%から98%の一致率で検証されている。 なお、研究グループは今回の調査研究において、ツイッターの中で発信されているすべての主張を「ニュース」、人々の間で意見や主張が共有されながらツイッターネットワークを介して拡散する社会現象を「うわさ」と分けて定義した。ニュースは共有の有無を問わないとしている。 研究グループはうわさのカスケード、すなわち、うわさが広がる道筋を辿り、その深さ(リツイート回数)、サイズ(ユーザー数)、最大幅(ユーザーの最大数)、および炎上現象を定量化した。分析の結果、うわさカスケードの深さやサイズなどは、リツイートされるごとに増大していくことが確認され、うわさのカテゴリーで最も大きかったのは政治に関する話題で、カスケードの数は約4万5000本であった。次いで都市伝説、ビジネス、テロ、科学、娯楽、自然災害であった。

うそは事実よりも多くの人々に届き、炎上はその傾向を強化する

事実は1000人以上に拡散するのがまれであるのに対し、うその上位1%の話題は必ず1000人から10万人に拡散していること、事実が1500人に届くまでにはうその約6倍の時間を要することなどが分かった。つまりカスケードの深さにかかわらず、うそは事実よりも多くの人々に到達し、事実よりもうそをリツイートしている人の方が多い。炎上現象はうその拡散を強く後押しし、いわゆる口コミで伝播される様々な視点から、うそ拡散の動力学が強化されることが明らかになった。 ニュースカテゴリーで政治とそれ以外に分け、うそ拡散の動力学を比較した場合、政治ニュースは他の如何なるうそ情報と比べても深く、広く、速く、より多くの人々に届いていた。政治以外のうそのニュースが1万人に届く時間と比べ、約3倍の速さで約2万人に届いた。

うそ拡散の強靭な動力学を支えるのは人間の感情か

拡散の動力学がうそと事実ではなぜこれまで違うのかについて、研究グループは様々な角度から解析した。 例えば、うそを拡散しているユーザーのフォロワー数やフォロー数、使用頻度などは、ニュースとうわさの場合で反対の傾向がみられた。拡散の速さや広がりといった動力学の差は、ユーザーが持つ特性やネットワーク構造では説明できないことが分かった。 そこで研究グループは、情報理論とベイズ決定理論に基づき、情報内容の新規性とリツイート動向について調べた。その結果、全ての新規性基準において、うそのうわさの方が事実よりも有意に新しい情報であることが検証された。しかし、ユーザーはその新規性自体を認識していない可能性もある。 次に研究グループは、うそまたは事実のうわさに対するリプライ(返答)から感情を表す語彙を抽出し、カナダ国立研究機構(NRC)監修の感情表現カテゴライズで解析した。その結果、話題が新規という前提で、ツイートへのリプライから心理状態の違いが明らかになった。すなわち、うそは驚きや恐怖感、嫌悪感を喚起し、事実は期待、悲しみ、喜び、信頼の感情を引き起こすことが統計学的に検証された。リプライに現れる感情表現が、話題の新規性を越えて別の因子に注目を集め、うそを共有する人々を刺激することが示唆された。 研究グループは、今回検証したうその広がり方について、その信頼性と安定性を複数の手法で検証した。ツイッターの自動発言システム「bot」によりカスケードがスタートした場合を除いた検証でも、うそと事実の拡散動力学の違いについて一致した結論を得た。そして、拡散に加担するヒトの行動や判断を左右する因子を同定することを目的とした研究の必要性を指摘した。うその情報が広がる原因と結果を突き止め、同時に、その結果として起こる悪影響を回避、または改善する方策を探るための大規模研究に発展させようと呼びかけている。

うそ拡散傾向はフェイスブックも同じ

フェイスブックの情報も、正確な投稿よりもうその投稿ほど多くの人々が閲覧していることが分かった。 米国Tulane大学のKeith C. Ferdinand氏らのグループによる研究成果で、2017年3月1日のAmerican Journal of Infection Control誌に掲載された。感染症パンデミックにおける群衆の心理や行動を左右する情報の重要性について警鐘を鳴らしている。 研究グループは2016年6月、ジカウイルス感染症パンデミックに関するフェイスブックの投稿計200本を解析した結果、信頼できる有用な情報は81%で、世界保健機関(WHO)が発信していた動画を含むプレスリリースが最も多く閲覧されていた。 誤解を招く情報は12%で、感染した妊娠女性から小頭症の新生児が生まれる原因はウイルスではなく幼虫を殺す化学物質であるとか、国際的な巨大企業による陰謀説など、「10 reasons why Zika virus fear is a fraudulent medical hoax(ジカウイルスの恐怖が詐欺的な医療デマである10の理由)」と呼ばれる動画が最も多く閲覧されていた。 信頼できる有用な情報数の方が、誤解を招く情報よりも圧倒的に多いにもかかわらず、閲覧総数はそれぞれ4万3000、53万5000と10倍以上の開きがあり、シェア総数(各964、19600)は後者の方が20倍以上多かった。 The spread of true and false news online(Science. 2018 Mar 9;359(6380):1146-1151.) Zika virus pandemic—analysis of Facebook as a social media health information platform(Am J Infect Control. 2017 Mar 1;45(3):301-302. )
ニュース がん一般

3Hメディソリューション株式会社 執行役員 可知 健太

オンコロジー領域の臨床開発に携わった後、2015年にがん情報サイト「オンコロ」を立ち上げ、2018年に希少疾患情報サイト「レアズ」を立ち上げる。一方で、治験のプロジェクトマネジメント業務、臨床試験支援システム、医療機器プログラム開発、リアルワールドデータネットワーク網の構築等のコンサルテーションに従事。理学修士。

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