・術後療法としてのランマーク単剤療法の有効性・安全性を比較検証
・無病生存期間を統計学有意に改善し、忍容性も問題なかった
2019年2月19日、医学誌『The Lancet Oncology』にてアロマターゼ阻害薬治療中の閉経後ホルモン受容体陽性陽性閉経後非転移性乳がん患者に対する術後療法としての抗RANKL抗体薬であるデノスマブ(商品名ランマーク;以下ランマーク)単剤療法の有効性、安全性を比較検証した第3相試験(NCT00556374)の結果がMedical University of Vienna・Michael Gnant氏らにより公表された。
本試験は、アロマターゼ阻害薬治療中の閉経後ホルモン受容体陽性閉経後非転移性乳がん患者に対して6ヶ月毎にランマーク60mg単剤療法を投与する群(N=1711人)、またはプラセボ単剤療法を投与する群(N=1709人)に1対1の割合で無作為に振り分け、主要評価項目として無作為化より初回骨折までの期間、副次評価項目として無病生存期間(DFS)等を比較検証したプラセボ対照ランダム化二重盲検下の第3相試験である。
本試験が実施された背景として、閉経後ホルモン受容体陽性乳がん患者に対する術後療法としてのアロマターゼ阻害薬は乳がんの再発、死亡を減少させる有効性があるものの、骨密度を減少させ、骨折リスクを高める可能性が示唆されている。以上の背景より、本患者に対してRANKを特異的に阻害し、破骨細胞の形成を抑制することで骨吸収を抑制し、皮質骨及び海綿骨の骨量を増加させ、骨強度を増強させると効果のあるランマーク単剤療法の有用性が本試験で検証された。
本試験に登録された患者背景は下記の通りである。
年齢
ランマーク群=50歳未満が2.0%(N=34人)、50-59歳が27.6%(N=473人)、60-69歳が45.7%(N=782人)、70-79歳が21.7%(N=372人)、80歳以上が2.9%(N=50人)
プラセボ群=50歳未満が1.8%(N=31人)、50-59歳が26.2%(N=448人)、60-69歳が44.2%(N=755人)、70-79歳が24.2%(N=414人)、80歳以上が3.6%(N=61人)
TNM分類におけるT因子ステータス
ランマーク群=T0-T1が72%(N=1232人)、T2-T4が28%(N=479人)、不明0%
プラセボ群=T0-T1が72.3%(N=1236人)、T2-T4が27.3%(N=467人)、不明0.4%(N=6人)
TNM分類におけるN因子ステータス
ランマーク群=陰性72.5%(N=1240人)、陽性27%(N=462人)、不明0.5%(N=9人)
プラセボ群=陰性70%(N=1196人)、陽性29.6%(N=506人)、不明0.4%(N=7人)
エストロゲン受容体ステータス
ランマーク群=陰性1.2%(N=20人)、陽性98.8%(N=1691人)
プラセボ群=陰性0.9%(N=16人)、陽性99.1%(N=1693人)
プロゲステロン受容体ステータス
ランマーク群=陰性16.7%(N=286人)、陽性83.2%(N=1424人)、不明0.1%(N=1人)
プラセボ群=陰性15%(N=257人)、陽性84.8%(N=1450人)、不明0.1%(N=2人)
HER2ステータス
ランマーク群=陰性93.8%(N=1605人)、陽性6%(N=103人)、不明0.2%(N=3人)
プラセボ群=陰性93.2%(N=1592人)、陽性6.6%(N=113人)、不明0.2%(N=4人)
無作為化前の化学療法治療歴
ランマーク群=なし75.3%(N=1288人)、術後化学療法19.8%(N=338人)、術前化学療法5.0%(N=85人)
プラセボ群=なし75.3%(N=1287人)、術後化学療法19.3%(N=329人)、術前化学療法5.4%(N=93人)
なお、両群間で患者背景に大きな偏りはなかった。
以上の背景を有する患者に対する追跡期間中央値73ヶ月(58-95ヶ月)時点における本試験の結果は下記の通りである。無病生存期間(DFS)はプラセボ群に比べてランマーク群で統計学有意に改善しており、再発、遠隔転移、死亡などのリスク(DFS)を18%減少した(HR:0.82,95%信頼区間:0.69-0.98)。
また、5年無病生存率(DFS)はランマーク群89.2%(95%信頼区間:87.6-90.8%)に対してプラセボ群87.3%(95%信頼区間:85.7-89.0%)、その差は約2%。8年無病生存率(DFS)はランマーク群80.6%(95%信頼区間:78.1-83.1%)に対してプラセボ群77.5%(95%信頼区間:74.8-80.2%)、その差は約3%。
一方の安全性としては、最も多くの患者で確認されたグレード3の治療関連有害事象(TRAE)は下記の通りである。変形性関節症はランマーク群2.5%(N=43人)に対してプラセボ群2.3%(N=39人)、高血圧はランマーク群1.2%(N=20人)に対してプラセボ群0.6%(N=10人)、白内障はランマーク群1.1%(N=19人)に対してプラセボ群1.7%(N=28人)、半月板損傷はランマーク群0.8%(N=14人)に対してプラセボ群0.8%(N=14人)。
また、最も多くの患者で確認された重篤な治療関連有害事象(TRAE)は下記の通りである。変形性関節症はランマーク群3.6%(N=62人)に対してプラセボ群3.4%(N=58人)、椎間板突起はランマーク群0.8%(N=14人)に対してプラセボ群0.9%(N=15人)、半月板損傷はランマーク群1.3%(N=23人)に対してプラセボ群1.4%(N=24人)、手根管症候群はランマーク群0.8%(N=14人)に対してプラセボ群0.8%(N=13人)、白内障はランマーク群0.9%(N=16人)に対してプラセボ群1.7%(N=28人)、甲状腺腫はランマーク群1.2%(N=21人)に対してプラセボ群0.7%(N=12人)。なお、治療関連有害事象(TRAE)による死亡が0.1%未満の患者(N=3人)で確認されており、その原因は肺炎、敗血症性腎不全、代償不全であった。
以上の第3相試験の結果よりMedical University of Vienna・Michael Gnant氏らは以下のように結論を述べている。”アロマターゼ阻害薬治療中の閉経後ホルモン受容体陽性陽性閉経後非転移性乳がん患者に対する術後療法としてのランマーク単剤療法は、無病生存期間(DFS)を統計学有意に改善し、忍容性も問題ありませんでした。”