・抗Trop-2抗体薬物複合体Sacituzumab Govitecan単剤療法の有効性・安全性を検証
・客観的奏効率33.3%など持続的な抗腫瘍効果を示し、忍容性も問題なかった
2019年2月21日、医学誌『The New England Journal of Medicine』にて複数治療歴のある転移性トリプルネガティブ乳がん患者に対する抗Trop-2抗体薬物複合体であるSacituzumab Govitecan単剤療法の有効性、安全性を検証した第1/2相試験の結果がMass General HospitalのAditya Bardia氏らにより公表された。
本試験は、複数治療歴のある転移性トリプルネガティブ乳がん患者(N=108人)に対して21日を1サイクルとして1、8日目にSacituzumab Govitecan 10mg/kg単剤療法を病勢進行または予期せぬ有害事象(AE)が発現するまで投与し、主要評価項目として安全性、客観的奏効率(ORR)、無増悪生存期間(PFS)、全生存期間(OS)などを検証した多施設共同の第1/2相試験である。
本試験が実施された背景として、トリプルネガティブ乳がんは浸潤性乳がんの約15%を占め、その予後は不良である。近年、治療歴のある転移性トリプルネガティブ乳がん患者に対する抗PD-L1抗体薬であるアテゾリズマブ(商品名テセントリク)+ナブパクリタキセル併用療法が、無増悪生存期間(PFS)中央値7.2ヶ月を示すなど治療成績は向上している。
しかしながら、大半のトリプルネガティブ乳がん患者はファーストライン治療の化学療法で病勢進行を経験し、その治療選択肢は非常に限られている。以上の背景より、トリプルネガティブ乳がんを含む進行性固形がんにてその有用性が確認されている抗Trop-2抗体薬物複合体であるSacituzumab Govitecan単剤療法の有効性、安全性が本試験で検証された。
本試験に登録された患者背景は下記の通りである。年齢中央値は55歳(31-80歳)。性別は女性99.1%(N=107人)、男性0.9%(N=1人)。人種は白人75.9%(N=82人)、黒人7.4%(N=8人)、アジア人2.8%(N=3人)、その他13.9%(N=15人)。ECOG Performance Statusはスコア0が28.7%(N=31人)、スコア1が71.3%(N=77人)。
転移部位は肺または胸膜56.5%(N=61人)、肝臓41.7%(N=45人)、その他6.5%(N=7人)。前治療歴中央値は3レジメン(2-10レジメン)。前治療歴の種類はタキサン系抗がん剤98.1%(N=106人)、アントラサイクリン系抗がん剤86.1%(N=93人)。以上の背景を有する患者に対する本試験の結果は下記の通りである。
主要評価項目である有害事象(AE)は全グレードの治療関連有害事象(TRAE)発症率100%(N=108人)、グレード3の治療関連有害事象(TRAE)発症率66%(N=71人)、グレード4の治療関連有害事象(TRAE)発症率19%(N=21人)の患者で確認された。
最も多くの患者で確認された全グレードのp治療関連有害事象(TRAE)は吐き気67%(N=72人)、下痢62%(N=67人)、倦怠感55%(N=59人)、好中球減少症64%(N=69人)、貧血50%(N=54人)。5%以上の患者で確認されたグレード3以上の治療関連有害事象(TRAE)は好中球減少症26%(N=28人)、貧血11%(N=12人)、白血球数減少8%(N=9人)などであった。
一方の有効性として、客観的奏効率(ORR)は33.3%(95%信頼区間:24.6-43.1%)、臨床的有用率(CBR) は45.4%(95%信頼区間:35.8-55.2%)を示した。なお、奏効率の内訳としては完全奏効率(CR)2.8%、部分奏効率(PR)30.6%、病勢安定率(SD)37.0%。また、奏効持続期間(DOR)中央値は7.7ヶ月(95%信頼区間:4.9-10.8ヶ月)を示した。
無増悪生存期間(PFS)中央値は5.5ヶ月(95%信頼区間:4.1-6.3ヶ月)、6ヶ月無増悪生存率(PFS)41.9%、12ヶ月無増悪生存率(PFS)15.1%。全生存期間(OS)中央値は13.0ヶ月(95%信頼区間:11.2-13.7ヶ月)、6ヶ月全生存率(OS)78.5%、12ヶ月全生存率(OS)51.3%を示した。
以上の第1/2相試験の結果よりAditya Bardia氏らは以下のように結論を述べている。”複数治療歴のある転移性トリプルネガティブ乳がん患者に対する抗Trop-2抗体薬物複合体であるSacituzumab Govitecan単剤療法は、持続的な抗腫瘍効果を示し、忍容性も問題ありませんでした。”