・抗PD-L1抗体薬バベンチオ単剤療法の安全性・有効性を検証
・客観的奏効率は9.6%、1年無増悪生存率10.2%、全生存期間の中央値は11.2ヶ月
2018年1月24日、医学誌『JAMA Oncology』にて再発難治性卵巣がん患者に対する抗PD-L1抗体薬であるアベルマブ(商品名バベンチオ;以下バベンチオ)単剤療法の安全性、有効性を検証した第1b相のJAVELIN Solid Tumor試験(NCT01772004)の結果がUW Medicine Cancer Vaccine Institute・Mary L. Disis氏らにより公表された。
本試験は、治療歴のある再発難治性卵巣がん患者(N=125人)に対して2週毎にバベンチオ10mg/kg単剤療法を病勢進行または予期せぬ有害事象(AE)が発現する投与し、主要評価項目として客観的奏効率(ORR)、安全性、副次評価項目として無増悪生存期間(PFS)、全生存期間(OS)などを検証した第1b相試験である。
本試験が実施された背景として、治療歴のある再発難治性卵巣がん患者の予後は不良であり、例えば3レジメンの治療歴のある患者に対するプラチナ製剤ベースの化学療法の全生存期間(OS)中央値は10.6ヶ月ほどである。また、プラチナ製剤ベースの化学療法の副作用は患者のQOLを低下させる。以上の背景より、再発難治性卵巣がん患者に対する新しい標準治療法としてのバベンチオ単剤療法の安全性、有効性を検証するため本試験が実施された。
本試験に登録された患者背景は下記の通りである。年齢中央値は62.0歳(27-84歳)。ECOG Performance Statusはスコア0が48.0%(N=60人)、スコア1が52.0%(N=65人)。全治療歴はレジメン中央値3レジメン(0-10レジメン)、0レジメンが4.0%(N=5人)、1レジメンが11.2%(N=14人)、2レジメンが20.0%(N=25人)、3レジメンが22.4%(N=28人)、4レジメンが17.6%(N=22人)、5レジメン以上が24.8%(N=31人)。
CA125値は35IU/ml未満が6.4%(N=8人)、35-70IU/mlが10.4%(N=13人)、70IU/ml以上は41.6%(N=52人)、不明41.6%(N=52人)。BRCA遺伝子ステータスは陰性30.4%(N=38人)、陽性6.4%(N=8人)、不明63.2%(N=79人)。
以上の背景を有する患者に対する本試験の結果は下記の通りである。主要評価項目である客観的奏効率(ORR)は9.6%、その奏効の内訳は完全奏効(CR)0.8%(N=1人)、部分奏効(PR)8.8%(N=11人)、病勢安定(SD)42.4%(N=53人)、病勢進行(PD)40.8%(N=51人)、評価不能7.2%(N=9人)を示した。副次評価項目である1年無増悪生存率(PFS)10.2%(95%信頼区間:5.4%-16.7%)、全生存期間(OS)中央値11.2ヶ月(95%信頼区間:8.7-15.4ヶ月)を示した。
一方の安全性として、全グレードの治療関連有害事象(TRAE)発症率は68.8%(N=86人)、10%以上の患者で確認された全グレードの治療関連有害事象(TRAE)は倦怠感13.6%(N=17人)、下痢12.0%(N=15人)、吐き気11.2%(N=14人)。全グレードの免疫関連有害事象(irAE)発症率は16.8%(N=21人)、多くの患者で確認された全グレードの免疫関連有害事象(irAE)は甲状腺機能低下症6.4%(N=8人)、黄斑疹2.4%(N=3人)、皮膚障害1.6%(N=2人)。
以上のJAVELIN Solid Tumor試験の結果より、Mary L. Disis氏らは以下のように結論を述べている。”複数治療歴のある再発難治性卵巣がん患者に対するバベンチオ単剤療法は、良好な抗腫瘍効果を示し、忍容性も良好でした。”