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免疫チェックポイント阻害薬の今後の臨床試験のあり方を考える

[公開日] 2019.01.15[最終更新日] 2019.01.15

目次

2006年以降に開始されたPD1/PDL1標的薬の臨床試験は計2250本 プログラム細胞死受容体(PD1)やそのリガンドPDL1を標的とするモノクローナル抗体、いわゆるPD1/PDL1免疫チェックポイント阻害薬は、抗PD1モノクローナル抗体であるニボルマブ(オプジーボ)が2014年に初めて実用化された。 オプジーボの臨床試験が初めて行われたのは2006年であった。以降、PD1/PDL1標的抗体の研究開発競争は激化し、2018年9月までに開始された臨床試験は合計2250本にのぼる。この間、米国食品医薬品局(FDA)が承認したPD1/PDL1抗体はオプジーボの他に、PD-1抗体のペムブロリズマブ(キイトルーダ)、PD-L1抗体のアテゾリズマブ(テセントリク)、デュルバルマブ(イミフィンジ)、アベルマブ(バベンチオ)の4品目であり、日本でも同様となる。 PD1/PDL1抗体の研究実績は、腫瘍免疫研究の根幹としてがん免疫療法のアプローチを支え、さらなる進化に寄与すると期待される。

より革新的なPD1/PDL1免疫チェックポイント阻害薬を創出するために

PD1/PDL1免疫チェックポイント阻害薬は革新が求められている。 新規のPD1/PDL1免疫チェックポイント阻害薬の創出に向けて取り組むべき課題は何か。腫瘍免疫研究に注力する非営利組織である米国National Cancer Research Institute(NCI)のJun Tang氏らは、PD1/PDL1標的薬を評価している現在の臨床試験の動向を分析し、2018年12月のNature Reviews Drug Discovery誌に発表した。 それによると、2018年9月現在、PD1/PDL1標的薬の臨床試験は、併用療法の患者登録で壁に直面していることが明らかになった。 単独、併用療法を問わず試験デザインの再考も必要で、科学的理論とアンメットメディカルニーズに基づき、資源配分の優先順位を見直すことも重要と考えられた。Tang氏らは、2017年9月にも同様の調査分析を実施しており、今回の分析では、前回の結果(2017年のAnnals of Oncology誌に発表)との比較解析も行っている。

2018年の臨床試験の現況

2017年9月から2018年9月までの間に748本の臨床試験が新たに開始された。Tang氏らは、2018年の特徴を以下の項目別に考察した。

併用療法について

PD1/PDL1標的薬を含む併用療法の臨床試験は、2018年9月までに計1716本が行われている。 併用パートナーの標的分子は240種で、2017年の前回調査より75分子以上増えた。CTLA4標的薬を併用パートナーとしている臨床試験が最も多く339本、次いで化学療法の283本、放射線療法の114本と続くが、過去1年の間で目立ってきた併用パートナーの標的分子は、インドールアミン2,3-ジオキシゲナーゼ1(IDO1)とポリADPリボースポリメラーゼ(PARP)で、それぞれ25本、23本の併用療法試験が行われている。

適応がん種について

PD1/PDL1標的薬の単独療法、並びに併用療法の臨床試験の対象となるがん種トップ5は、肺がん(254本)、悪性黒色腫(139本)、乳がん(106本)、リンパ腫(99本)、頭頸部がん(72本)であった。 悪性黒色腫については、ニボルマブ(商品名オプジーボ)とイピリムマブ(商品名ヤーボイ)の併用療法が承認されたこともあり、新規の臨床試験実施の伸びが鈍化傾向にあることが示された。

患者登録について

これまでに開始されたPD1/PDL1標的薬の臨床試験の患者登録目標は計38万900人で、過去5年間で目標登録数は顕著に増加してきた。 2017年では、FDAは新たなPD1/PDL1標的薬13種の臨床試験の実施を認め、計10万5489人の登録数が必要とされた。また過去4年間では、PD1/PDL1標的薬の臨床試験は、それ以外のがん治療の臨床試験と比べ患者登録のペースが速くなっている。 しかし、PD1/PDL1標的薬の併用療法試験は、2014年と比べ2018年の登録スピードが遅くなり、実施機関1施設当たり、2014年では月1.15人であったのが2018年には月0.35人まで落ち込んだ。近い将来、少なくとも特定のがん種では患者登録が困難になる可能性が示唆された。 The clinical trial landscape for PD1/PDL1 immune checkpoint inhibitors(Nature Reviews Drug Discovery volume17, pages854–855 (2018) )
ニュース 固形がん イミフィンジ

医療ライター 川又 総江

国内製薬企業研究所研究員、大学医学部研究室助手を経てフリーのメディカルライターに転身。医薬・バイオ関連出版社等の文献翻訳、医療記事作成を執筆すること20年。

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