・抗PD-1/PD-L1抗体薬、抗CTLA-4抗体薬などによる全生存期間の改善効果の男女差を比較検証
・死亡リスクは男性患者群で25%減少、女性患者群で23%減少しており、男女間で差は確認されず
2018年1月3日、医学誌『JAMA Oncology』にて抗PD-1/PD-L1抗体薬、抗CTLA-4抗体薬などの免疫チェックポイント阻害薬による治療を受けた進行性固形がん患者における全生存期間(OS)の男女差を比較検証したメタアナリシス試験の結果がUniversity of TorontoのChristopher J. D. Wallis氏らにより公表された。
本試験は、進行性固形がん患者(男性9322人、女性4399人)に対して免疫チェックポイント阻害薬単剤療法もしくは免疫チェックポイント阻害薬+標準治療併用療法を投与する群、または標準治療を投与する群に無作為に振り分け有効性を比較検証した23のランダム比較試験を対象に、免疫チェックポイント阻害薬による治療を受けた男性と女性の間で全生存期間(OS)の差があるかどうかを比較検証したメタアナリシス試験である。
本試験が実施された背景として、過去の臨床試験において免疫チェックポイント阻害薬の有効性は男女により差がある場合もあれば、差がない場合も確認されており、統一された見解が未だに見出されていないためである。そこでメタアナリシス試験により、免疫チェックポイント阻害薬による治療を受けた男女間で全生存期間(OS)の差があるかどうかが検証された。
メタアナリシスの対象となったランダム比較試験の内訳は下記の通りである。がん種は非小細胞肺がん48%、悪性黒色腫(メラノーマ)17%、腎細胞がん9%、小細胞肺がん9%、尿路上皮がん4%、頭頚部がん4%、悪性中皮腫4%、胃がん4%、食道がん4%。治療ラインは1次治療48%、2次治療以降52%。免疫チェックポイント阻害薬の種類は抗PD-1/PD-L1抗体薬78%、抗CTLA-4抗体薬26%。なお、患者の年齢中央値は70歳代である。
なお、抗PD-1/PD-L1抗体薬の種類としてはニボルマブ(商品名オプジーボ)、ペムブロリズマブ(商品名キイトルーダ)、アテゾリズマブ(商品名テセントリク)、アベルマブ(商品名バベンチオ)、デュルバルマブ(商品名イミフィンジ)、抗CTLA-4抗体薬の種類としてはイピリムマブ(商品名ヤーボイ)、トレメリムマブである。
以上の23のランダム試験を対象にしたメタアナリシス試験の結果は下記の通りである。全生存期間(OS)は免疫チェックポイント阻害薬以外の治療を受けた患者群に比べ、免疫チェックポイント阻害薬による治療を受けた患者群で死亡(OS)のリスクを25%統計学的有意に減少(HR:0.75, 95%信頼区間:0.70-0.81,P < .001)した。
また、男女別の全生存期間(OS)は免疫チェックポイント阻害薬以外の治療を受けた男性患者群に比べ、免疫チェックポイント阻害薬による治療を受けた男性患者群で死亡(OS)のリスクを25%統計学的有意に減少(HR:0.75, 95%信頼区間:0.69-0.81,P < .001)。免疫チェックポイント阻害薬以外の治療を受けた女性患者群に比べ、免疫チェックポイント阻害薬による治療を受けた女性患者群で死亡(OS)のリスクを23%統計学的有意に減少(HR:0.77, 95%信頼区間:0.67-0.88,P = .002)した。
しかしながら、免疫チェックポイント阻害薬による治療を受けた男性患者群、女性患者群における全生存期間(OS)の統計学有意な差は確認されなかった(P =.60)。また、がん種別、治療ライン別、免疫チェックポイント阻害薬の種類別によるサブ解析も実施したが、免疫チェックポイント阻害薬による治療を受けた患者おける男女別の全生存期間(OS)の統計学有意な差は確認されなかった。
以上のメタアナリシス試験の結果よりChristopher J. D. Wallis氏らは以下のように結論を述べている。”抗PD-1/PD-L1抗体薬、抗CTLA-4抗体薬などの免疫チェックポイント阻害薬による治療を受けた進行性固形がん患者において、男女間で全生存期間(OS)の統計学有意な差は確認されませんでした。”