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BRCA1/2遺伝子変異陽性卵巣がん、リムパーザ単剤療法で無増悪生存期間が統計学的に改善

[公開日] 2018.12.30[最終更新日] 2018.12.30

この記事の3つのポイント ・1次治療後の維持療法としてのリムパーザ単剤療法の有効性を比較検証した第3相試験の結果が公表された
・化学療法による前治療で完全奏効または部分奏効を示したBRCA1/2遺伝子変異陽性進行性卵巣がん患者が対象
・プラセボ群に比べてリムパーザ群で病勢進行または死亡のリスクを統計学有意に70%減少した

2018年12月27日、医学誌『The New England Journal of Medicine』にてBRCA1/2遺伝子変異陽性の進行性卵巣がん患者に対する1次治療後の維持療法としてのPARP阻害薬であるオラパリブ(商品名リムパーザ;以下リムパーザ)単剤療法の有効性を比較検証した第3相のSOLO-1試験(NCT01844986)の結果がThe Stephenson Cancer Center・Kathleen Moore氏らにより公表された。

SOLO-1試験とは、プラチナ製剤ベースの化学療法による前治療を受け、完全奏効(CR)または部分奏効(PR)を示したBRCA1/2遺伝子変異陽性進行性卵巣がん患者(N=391人)に対して1日2回リムパーザ300mg単剤療法を投与する群(N=260人)、または1日2回プラセボ療法を投与する群(N=131人)に2対1の割合で無作為に振り分け、主要評価項目として無増悪生存期間(PFS)、副次評価項目として二次治療までの無増悪生存期間(PFS2)、全生存期間(OS)を比較検証した無作為化二重盲検プラセボ対照多施設共同第3相試験である。

本試験が実施された背景として、新規進行性卵巣がん患者の約70%が3年以内に再発を経験するにも関わらず、その標準治療が確立していないためである。例えば、新規進行性卵巣がん患者に対するベバシズマブ+カルボプラチン+パクリタキセル併用療法後のベバシズマブ単剤療法の有効性を検証した第3相試験では無増悪生存期間(PFS)を改善したが、全生存期間(OS)の改善には至らなかった。以上の背景より、再発難治性卵巣がんに対する維持療法としての有効性が証明されているPARP阻害薬であるリムパーザの有用性が本試験により検証された。

本試験が実施された患者背景は下記の通りである。

プラチナ製剤ベースの化学療法後の奏効率

リムパーザ群=完全奏効(CR)82%、部分奏効(PR)18%
プラセボ群=完全奏効(CR)82%、部分奏効(PR)18%

プラチナ製剤ベースの化学療法の治療サイクル

リムパーザ群=4サイクルが1%、5サイクルが1%、6サイクルが76%、7サイクルが7%、8サイクルが7%、9サイクルが9%
プラセボ群=4サイクルが0%、5サイクルが1%、6サイクルが81%、7サイクルが8%、8サイクルが5%、9サイクルが5%

腫瘍部位

リムパーザ群=卵巣85%、卵管8%、腹膜6%、その他1%
プラセボ群=卵巣86%、卵管8%、腹膜5%、その他0%

FIGO分類による進行病期

リムパーザ群=ステージIIIが85%、ステージIVが15%
プラセボ群=ステージIIIが80%、ステージIVが20%

BRCA遺伝子ステータス

リムパーザ群=BRCA1陽性が73%、BRCA2陽性が25%、BRCA1/2陽性が1%
プラセボ群=BRCA1陽性が69%、BRCA2陽性が31%、BRCA1/2陽性が0%

なお、両群間の患者背景に偏りはなかった。

以上の背景を有する本試験の結果は下記の通りである。主要評価項目である治験医師判断による3年無増悪生存率(PFS)中央値はリムパーザ群60%に対してプラセボ群27%、プラセボ群に比べてリムパーザ群で病勢進行または死亡(PFS)のリスクを統計学有意に70%減少(HR:0.30,95%信頼区間:0.23-0.41,P<0.0001)した。

また、独立評価委員会による3年無増悪生存率(PFS)中央値はリムパーザ群69%に対してプラセボ群35%、プラセボ群に比べてリムパーザ群で病勢進行または死亡(PFS)のリスクを統計学有意に72%減少(HR:0.28,95%信頼区間:0.20-0.39,P<0.0001)した。

また、副次評価項目である3年全生存率(OS)はイベント数未到達のため未成熟な結果であるがリムパーザ群84%に対してプラセボ群80%、プラセボ群に比べてリムパーザ群で死亡(OS)のリスクを5%減少(HR:0.95,95%信頼区間:0.60-1.53)した。

一方の安全性として、全グレードの治療関連有害事象(TRAE)発症率はリムパーザ群98%に対してプラセボ群92%、グレード3または4の治療関連有害事象(TRAE)発症率はリムパーザ群39%に対してプラセボ群18%、重篤な有害事象(SAE)発症率はリムパーザ群21%に対してプラセボ群12%であった。なお、リムパーザ群で最も多くの患者で確認された重篤な有害事象(SAE)は貧血で、その発症率はプラセボ群0%に対してリムパーザ群7%であった。

以上のSOLO-1試験の結果よりKathleen Moore氏らは以下のように結論を述べている。”BRCA1/2遺伝子変異陽性の進行性卵巣がん患者に対する維持療法としてのリムパーザ単剤療法は無増悪生存期間(PFS)を統計学的有意に改善しました。”

Maintenance Olaparib in Patients with Newly Diagnosed Advanced Ovarian Cancer(N Engl J Med 2018; 379:2495-2505)

ニュース 卵巣がん NCT01844986

山田創

製薬会社、オンコロジーメディアの運営を経て、フリーのメディカルライターへ転身。Twitterアカウント「@So_Yamada_」

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