キイトルーダ MSI-H固形がんに適応拡大~がん種横断的な適応、日本初~


  • [公開日]2018.12.21
  • [最終更新日]2019.02.15

12月21日、MSD株式会社は、抗PD-1抗体ペムブロリズマブ(商品名キイトルーダ)について、以下の国内製造販売承認事項一部変更の承認を取得したと発表した。

・がん化学療法後に増悪した進行・再発の高頻度マイクロサテライト不安定性(MSI-High)を有する固形癌(標準的な治療が困難な場合に限る)への適応拡大

・悪性黒色腫の術後補助療法としての適応拡大

・悪性黒色腫について、固定用量への用法・用量の変更

PD-L1発現にかかわらず切除不能な進行・再発の非小細胞肺癌(非扁平上皮癌)に対する初回治療としてペメトレキセドプラチナ製剤シスプラチンまたはカルボプラチン)との併用療法としての適応拡大

・PD-L1発現にかかわらず切除不能な進行・再発の非小細胞肺癌(扁平上皮癌)に対する初回治療としてカルボプラチン+パクリタキセルまたはnab-パクリタキセルとの併用療法としての適応拡大

・PD-L1陽性(TPS*1≧1%)の切除不能な進行・再発の非小細胞肺癌に対する初回治療としての単独療法としての適応拡大
*1: TPS:Tumor Proportion Score 腫瘍細胞のうちPD-L1発現陽性細胞の割合

非小細胞肺がんに対する情報は別記事を参照

今回の承認取得事項は、いずれも厚生労働省による優先審査の対象となっていた。

「がん化学療法後に増悪した進行・再発の高頻度マイクロサテライト不安定性(MSI-High)を有する固形がん(標準的な治療が困難な場合に限る)」への適応拡大については医薬品の条件付き早期承認制度の適用を、悪性黒色腫に関する適応拡大については希少疾病用医薬品の指定をそれぞれ受け、優先審査のもとで承認となった。

高頻度マイクロサテライト不安定性(MSI-High)を有する固形がんへの適応拡大

今回、「高頻度マイクロサテライト不安定性(MSI-High)を有する固形がん」に適応拡大されたが、遺伝子特徴に対する適応であり、がん種横断的に使用できるようになるのは今回が初。

一部のがんの遺伝特性として「高頻度マイクロサテライト不安定性(MSI-High)」が存在する。がんは遺伝子の傷により生じることがわかっており、遺伝子は様々なストレスにより傷ついているが、常にこの傷は修復されるために、滅多にがん化することはない。

この遺伝子を修復する機構の一種にDNAミスマッチ修復機構(MMR)が存在しする。しかしながら、この機構が欠損することを「ミスマッチ修復機構欠損(Mismatch Repair Deficient;dMMR)」といい、がん化のリスクは上がる。

マイクロサテライト不安定性とは、遺伝子に傷が生じたとき(遺伝子複製のミス)の修復機構に欠損があるため、遺伝子に複数の傷が生じている状態のことを指す。遺伝的にこの修復機構が欠損しているがんの場合をリンチ症候群といい、家族性大腸がんの一種と位置づけられる一方、その他の固形がんでもごく低い割合で存在する。

高頻度マイクロサテライト不安定性大腸がんとなる患者の割合は、約14~16%といわれ、そのうち、ステージ4の大腸がん患者の5~6%と予測されている。高頻度マイクロサテライト不安定性の頻度は、若くして大腸がんを発症した方が高い割合であるとされている。また、ステージ4の高頻度マイクロサテライト不安定性である場合は、そうでない場合に比べ予後が悪いとされている。一方、大腸がん以外は子宮内体がん、胃がん、小腸がんに多く、乳がん、前立腺がん、膀胱がん、甲状腺がんには少ないとされている。

なお、キイトルーダの適応判定を目的としたMSI-Highを検出するためのコンパニオン診断薬として、株式会社ファルコバイオシステムズの「MSI検査キット(FALCO)」が承認されている。

今回の適応拡大は、「がん化学療法後に増悪した進行・再発の高頻度マイクロサテライト不安定性(MSI-High)を有する固形癌(標準的な治療が困難な場合に限る)」への適応拡大にあたっては、治療歴を有するMSI-High固形がんを対象とした2つの国際共同第2相試験において、キイトルーダ®の有効性および安全性が示された。

治療歴を有するMSI-Highの結腸・直腸がん患者61名を対象にしたKEYNOTE-164試験(コホートA)では、奏効率ORR)は27.9%(95%CI: 17.1~40.8)。対象者の57.4%に副作用が認められ、主な副作用(10%以上)は、関節痛16.4%、悪心14.8%、下痢13.1%、無力症11.5%およびそう痒症11.5%だった。

治療歴を有するMSI-Highの結腸・直腸以外の固形がん患者94名を対象にしたKEYNOTE-158試験では、奏効率(ORR)は37.2%(95%CI: 27.5~47.8)。対象者の61.7%に副作用が認められ、主な副作用(10%以上)は、疲労11.7%およびそう痒症11.7%だった。

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