肺がん(扁平上皮癌)患者に対する1次治療としての抗PD-1抗体薬キイトルーダ+化学療法、全生存期間、無増悪生存期間を統計学有意に延長するThe New England Journal of Medicineより


  • [公開日]2018.11.26
  • [最終更新日]2019.04.17
・扁平上皮非小細胞肺がんに対するキイトルーダ化学療法の併用
・すでに非扁平上皮癌に対しては有効性が確認済み
・扁平上皮癌に対しても有効性を確認。死亡リスク36%減少

2018年11月22日、『The New England Journal of Medicine』にて転移性非小細胞肺扁平上皮がん患者に対する1次治療としての抗PD-1抗体薬であるペムブロリスマブ(商品名キイトルーダ;以下キイトルーダ)+カルボプラチンパクリタキセルまたはナブパクリタキセル併用療法の有効性を比較検証した第III相のKEYNOTE-407試験(NCT02775435)の結果がLuis Paz-Ares氏らにより公表された。

KEYNOTE-407試験とは、転移性非小細胞肺扁平上皮がん患者(N=559 人)に対する1次治療として21日を1サイクルとして1日目キイトルーダ200mg+1日目カルボプラチン6AUC+1日目パクリタキセル200mg/m2もしくは1日目、8日目、15日目にナブパクリタキセル100mg/m2併用療法を投与する群(N=278人)、またはプラセボ+カルボプラチン+パクリタキセルもしくはアブラキサン併用療法を投与する群(N=281人)に1対1の割合で無作為に振り分け、主要評価項目として全生存期間OS)、無増悪生存期間PFS)、副次評価項目として客観的奏効率ORR)、奏効持続期間(DOR)を比較検証した国際多施設共同二重盲検下の第III相試験である。

本試験が実施された背景として、非小細胞肺扁平上皮がんは肺がんの20から30%の割合を占めるが、非小細胞肺非扁平上皮がんに比べて化学療法の効果は限られており、予後が不良であることが判っている。そのため、化学療法に他の薬剤を併用した治療方法が臨床で実施されるが、その治療方法では有効性がある反面、忍容性が不良であることが判っている。以上の背景より、有効性、忍容性も優れた治療方法の開発が必要なため、抗PD-1抗体薬であるキイトルーダ+化学療法の併用療法の有用性が本試験で検証された。

本試験が実施された背景は下記の通りである。年齢中央値はキイトルーダ群65歳(29-87歳)に対してプラセボ群65歳(36-88歳)。性別はキイトルーダ群で男性45.7%(N=127人)に対してプラセボ群で男性45.2%(N=127人)。人種はキイトルーダ群でアジア人19.4%(N=54人)に対してプラセボ群で18.5%(N=52人)。

ECOG Performance Statusはキイトルーダ群でスコア0が26.3%(N=73人)、スコア1が73.7%(N=205人)に対してプラセボ群でスコア0が32.0%(N=90人)、スコア1が68.0%(N=191人)。PD-L1発現率ステータスはキイトルーダ群で1%未満34.2%(N=95人)、1%以上63.3%(N=176人)に対してプラセボ群で1%未満35.2%(N=99人)、1%以上63.0%(N=177人)。なお、両群間における患者背景に大きな偏りはなかった。

以上の背景を有する患者に対する本試験の結果は下記の通りである。主要評価項目である全生存期間(OS)中央値はキイトルーダ群15.9ヶ月(95%信頼区間:13.2ヶ月-未到達)に対してプラセボ群11.3ヶ月(95%信頼区間:9.5-14.8ヶ月)、キイトルーダ群で死亡(OS)のリスクを36%統計学有意に減少した(HR:0.64,95%信頼区間:0.49-0.85,P<0.001)。なお、1年全生存率(OS)はキイトルーダ群65.2%に対してプラセボ群48.3%を示した。

またサブグループ解析より、PD-L1発現率1%未満の患者群における1年全生存率(OS)はキイトルーダ群64.2%に対してプラセボ群43.3%(HR:0.61,95%信頼区間:0.38-0.98)、PD-L1発現率1%~49%の患者群における1年全生存率(OS)はキイトルーダ群65.9%に対してプラセボ群50.0%(HR:0.57,95%信頼区間:0.36-0.90)、PD-L1発現率50%以上の患者群における1年全生存率(OS)はキイトルーダ群63.4%に対してプラセボ群51.0%(HR:0.64,95%信頼区間:0.37-1.10)を示した。

もう1つの主要評価項目である無増悪生存期間(PFS)中央値はキイトルーダ群6.4ヶ月(95%信頼区間:6.2-8.3ヶ月)に対してプラセボ群4.8ヶ月(95%信頼区間:4.3-5.7ヶ月)、キイトルーダ群で病勢進行または死亡(PFS)のリスクを44%統計学有意に減少した(HR:0.56,95%信頼区間:0.45-0.70,P<0.001)。

またサブグループ解析より、PD-L1発現率1%未満の患者群における無増悪生存期間(PFS)中央値はキイトルーダ群6.3ヶ月に対してプラセボ群5.3ヶ月(HR:0.68,95%信頼区間:0.47-0.98)、PD-L1発現率1%~49%の患者群における無増悪生存期間(PFS)中央値はキイトルーダ群7.2ヶ月に対してプラセボ群5.2ヶ月(HR:0.56,95%信頼区間:0.39-0.80)、PD-L1発現率50%以上の患者群における無増悪生存期間(PFS)中央値はキイトルーダ群8.0ヶ月に対してプラセボ群4.2ヶ月(HR:0.37,95%信頼区間:0.24-0.58)を示した。

副次評価項目である客観的奏効率(ORR)はキイトルーダ群57.9%(95%信頼区間:51.9%-63.8%)に対してプラセボ群38.4%(95%信頼区間:32.7%-44.4%)を示した。またサブグループ解析より、PD-L1発現率1%未満の患者群における客観的奏効率(ORR)はキイトルーダ群63.2%に対してプラセボ群40.4%、PD-L1発現率1%~49%の患者群における客観的奏効率(ORR)はキイトルーダ群49.5%に対してプラセボ群41.3%、PD-L1発現率50%以上の患者群における客観的奏効率(ORR)はキイトルーダ群60.3%に対してプラセボ群32.9%を示した。

一方の安全性として、全グレードの治療関連有害事象(TRAE)発症率はキイトルーダ群98.2%に対してプラセボ群97.9%を示し、プラセボ群よりもキイトルーダ群で10%以上多くの患者で確認された全グレードの治療関連有害事象(TRAE)は脱毛症、かゆみであった。

また、グレード3以上の治療関連有害事象(TRAE)発症率はキイトルーダ群69.8%に対してプラセボ群68.2%を示し、プラセボ群よりもキイトルーダ群で多くの患者で確認されたグレード3以上の治療関連有害事象(TRAE)は肺炎、自己免疫性肝炎であった。

以上のKEYNOTE-407試験の結果よりLuis Paz-Ares氏らは以下のように結論を述べている。”転移性非小細胞肺扁平上皮がん患者に対する1次治療としてカルボプラチン+パクリタキセルもしくはナブパクリタキセルの化学療法に抗PD-1抗体薬であるキイトルーダを上乗せすることで、全生存期間(OS)、無増悪生存期間(PFS)は統計学有意に延長を示しました。”

Pembrolizumab plus Chemotherapy for Squamous Non–Small-Cell Lung Cancer(N Engl J Med; November 22, 2018; 379:2040-2051)

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