再発卵巣がん患者に対するオーロラAキナーゼ阻害薬アリセルチブ+パクリタキセル併用療法、パクリタキセル単剤療法に比べて無増悪生存期間(PFS)を改善する医学誌『JAMA Oncology』より


  • [公開日]2018.11.19
  • [最終更新日]2019.04.17
・乳がんまたは卵巣がん患者を対象にアリセルチブの有効性を検証したⅠ/Ⅱ相試験
・アリセルチブ+パクリタキセル併用療法とパクリタキセル単剤療法とで比較した
・併用療法群は単剤療法群に比べ無増悪生存期間PFS)を改善した

2018年10月18日、医学誌『JAMA Oncology』にて進行性乳がんまたは再発卵巣がん患者に対するオーロラAキナーゼ阻害薬であるアリセルチブ(Alisertib)+パクリタキセル併用療法の有効性を検証した第I/II相試験(NCT01091428)の結果がSarah Cannon Research Institute・Gerald Falchook氏らにより公表された。

本試験は、第I相段階では進行性乳がんまたは再発卵巣がん患者(N=49人;乳がん11人、卵巣がん38人)に対して28日を1サイクルとして1、3、8、10、15、17日目に1日2回アリセルチブ10~50mg+1、8、15日目にパクリタキセル80mg/㎡併用療法を投与し、主要評価項目として安全性を検証している。

また、第II相段階では再発卵巣がん患者(N=142人)に対して28日を1サイクルとして1、3、8、10、15、17日目に1日2回アリセルチブ40mg+1、8、15日目にパクリタキセル60mg/㎡併用療法を投与する群(N=73人)、または28日を1サイクルとして1、8、15日目にパクリタキセル80mg/㎡単剤療法を投与する群(N=69人)に1対1の割合で無作為に振り分け、主要評価項目として無増悪生存期間(PFS)、副次評価項目として全奏効率ORR)などを検証している。

本試験が実施された背景として、オーロラAキナーゼ発現はがんの進行、または乳がん、卵巣がんを含む様々ながんの予後不良に関係していることが明らかであり、前臨床試験においても卵巣がんに対してオーロラAキナーゼを阻害することで抗腫瘍効果が発揮されたためである。以上の背景より、進行性乳がんまたは再発卵巣がん患者に対するオーロラAキナーゼ阻害薬であるアリセルチブ+パクリタキセル併用療法の有効性、安全性を検証するため本試験が開始された。

本試験の第II相段階に登録された患者背景は下記の通りである。年齢中央値はアリセルチブ+パクリタキセル群で63歳(30-81歳)に対してパクリタキセル群で61歳(41-81歳)。ECOG Performance Statusはアリセルチブ+パクリタキセル群でスコア0が59%(N=43人)、スコア1が41%(N=30人)に対してパクリタキセル群でスコア0が57%(N=39人)、スコア1が43%(N=30人)。進行病期はアリセルチブ+パクリタキセル群でステージIIIC56%(N=41人)、ステージIV25%(N=18人)に対してパクリタキセル群でステージIIIC52%(N=36人)、ステージIV33%(N=25人)。

原発腫瘍部位はアリセルチブ+パクリタキセル群で卵巣85%(N=62人)、卵管1%(N=1人)、原発性腹膜11%(N=8人)に対してパクリタキセル群で卵巣94%(N=65人)、卵管3%(N=2人)、原発性腹膜1%(N=1人)。前治療歴はアリセルチブ+パクリタキセル群で1レジメン19%(N=14人)、2レジメン40%(N=29人)、3レジメン18%(N=13人)、4レジメン以上23%(N=17人)に対してパクリタキセル群で1レジメン29%(N=20人)、2レジメン32%(N=22人)、3レジメン20%(N=14人)、4レジメン以上19%(N=13人)。

第I相段階における本試験の結果、主要評価項目である安全性は下記の通りである。アリセルチブ+パクリタキセル併用療法を投与した7人の患者で用量制限毒性DLT)を発現し、その内訳は発熱好中球減少症3人、好中球減少症1人、口内炎2人、下痢1人であった。また、10%以上の患者で確認されたグレード3以上の治療関連有害事象(TRAE)は好中球減少症59%、白血球減少症35%、貧血16%、発熱好中球減少症16%、口内炎14%であった。

一方、第II相段階における主要評価項目である無増悪生存期間(PFS)中央値はアリセルチブ+パクリタキセル併用群6.7ヶ月(80%信頼区間:5.8-7.6ヶ月)に対してパクリタキセル単剤群4.7ヶ月(80%信頼区間:3.8-4.9ヶ月)、アリセルチブ+パクリタキセル併用群で病勢進行または死亡(PFS)のリスクを25%減少(HR:0.75,80%信頼区間:0.58-0.96,P = .14)した。

第II相段階における副次評価項目である全奏効率(ORR)はアリセルチブ+パクリタキセル併用群60%(80%信頼区間:51%-68%)に対してパクリタキセル単剤群52%(80%信頼区間:43%-60%,P = .38)。奏効持続期間(DOR)中央値はアリセルチブ+パクリタキセル併用群6.6ヶ月に対してパクリタキセル単剤群5.6ヶ月。無増悪期間TTP)中央値はアリセルチブ+パクリタキセル併用群6.7ヶ月に対してパクリタキセル単剤群4.7ヶ月。

以上の第I/II相試験の結果よりGerald Falchook氏らは以下のように結論を述べている。”再発卵巣がん患者に対するアリセルチブ+パクリタキセル併用療法はパクリタキセル単剤療法に比べ、無増悪生存期間(PFS)を改善しました。”

Alisertib in Combination With Weekly Paclitaxel in Patients With Advanced Breast Cancer or Recurrent Ovarian Cancer A Randomized Clinical Trial(JAMA Oncol. Published online October 18, 2018. doi:10.1001/jamaoncol.2018.3773)

×

この記事に利益相反はありません。

会員登録 ログイン