ALK融合遺伝子陽性進行性非小細胞肺がん患者に対するALK阻害薬ローブレナLancet Oncologyより


  • [公開日]2018.11.12
  • [最終更新日]2019.04.17
この記事の3つのポイント
ALK融合遺伝子陽性非小細胞肺がん患者に対するローブレナ有効性
・ローブレナは第三世代ALKチロシンキナーゼ阻害薬
奏効率は初回治療で90%、2剤以上のALK阻害薬使用していても38.7%

2018年11月6日、医学誌『Lancet Oncology』にてALK融合遺伝子またはROS1融合遺伝子陽性進行性非小細胞肺がん患者に対するALK阻害薬であるロルラチニブ(商品名ローブレナ)単剤療法の有効性を検証した第II相試験(NCT01970865)のALK融合遺伝子非小細胞肺がん患者に限定された結果がPeter MacCallum Cancer Centre・Benjamin J Solomon氏らにより公表された。

本試験は、ALK融合遺伝子またはROS1融合遺伝子陽性進行性非小細胞肺がん患者(N=276人)に対してローブレナ単剤療法を投与し、主要評価項目として客観的奏効率(ORR)、頭蓋内病変の奏効率 (IRR)を検証した国際多施設共同の第II相試験である。

本試験が実施された背景として、第I/II相試験にてクリゾチニブ(商品名ザーコリ)を含む複数治療歴のあるALK融合遺伝子陽性進行性非小細胞肺がん患者に対してローブレナが奏効を示したためである。ALK融合遺伝子陽性進行性非小細胞肺がん患者は、ザーコリ、第2世代ALK阻害薬に対して有効性を示すものの、その後耐性を獲得し病勢が進行する。そこで、ザーコリ、第2世代ALK阻害薬に対して耐性を獲得した患者に対しても効果の期待できるローブレナの有効性が本試験で確認されることになった。

本試験に登録された患者背景は下記の通りである。治療歴は未治療(N=30人)、ザーコリ±化学療法(N=59人)、ザーコリ以外のALK阻害薬±化学療法(N=28人)、2剤以上のALK阻害薬±化学療法(N=111人)。年齢は未治療群59.0歳(48.0-68.0歳)、ザーコリ±化学療法群54.0歳(46.0-66.0歳)、ザーコリ以外のALK阻害薬±化学療法群54.0歳(46.5-64.0歳)、2剤以上のALK阻害薬±化学療法群51.0歳(43.0-59.0歳)。

以上の背景を有する患者に対する本試験の結果は下記の通りである。主要評価項目である客観的奏効率(ORR)は未治療群90.0%(95%信頼区間:73.5-97.9%)、クリゾチニブ±化学療法群69.5%(95%信頼区間:56.1-80.8%)、ザーコリ以外のALK阻害薬±化学療法群32.1%(95%信頼区間:15.9-52.4%)、2剤以上のALK阻害薬±化学療法群38.7%(95%信頼区間:29.6-48.5%)を示した。

なお、奏効持続期間(DOR中央値は未治療群6.9ヶ月(95%信頼区間:5.6-12.5ヶ月)、ザーコリ±化学療法群6.9ヶ月(95%信頼区間:4.2-7.0ヶ月)、ザーコリ以外のALK阻害薬±化学療法群7.0ヶ月(95%信頼区間:5.6-8.3ヶ月)、2剤以上のALK阻害薬±化学療法群7.2ヶ月(95%信頼区間:5.6-9.8ヶ月)を示した。

また、中枢神経系CNS)への転移を有する患者群における頭蓋内病変の奏効率 (IRR)は未治療群66.7%(N=2/3,95%信頼区間:9.4-99.2%)、ザーコリ±化学療法群87.0%(N=20/23,95%信頼区間:66.4-97.2%)、ザーコリ以外のALK阻害薬±化学療法群55.6%(N=5/9,95%信頼区間:21.2-86.3%)、2剤以上のALK阻害薬±化学療法群53.1%(N=26/49,95%信頼区間:38.3-67.5%)を示した。

なお、奏効持続期間(DOR)中央値は未治療群未到達(95%信頼区間:未到達)、ザーコリ±化学療法群未到達(95%信頼区間:8.4ヶ月-未到達)、ザーコリ以外のALK阻害薬±化学療法群未到達(95%信頼区間:4.1ヶ月-未到達)、2剤以上のALK阻害薬±化学療法群14.5ヶ月(95%信頼区間:6.9-14.5ヶ月)を示した。

一方の安全性として、最も多くの患者で確認された全グレードの治療関連有害事象(TRAE)は高コレステロール血症81%(N=224人)、高トリグリセリド血症60%(N=166人)、浮腫43%(N=119人)、末梢神経障害30%(N=82人)。また、グレード3または4の治療関連有害事象(TRAE)は高コレステロール血症16%(N=43人)、高トリグリセリド血症16%(N=43人)、重篤な治療関連有害事象(TRAE)は認知障害1%(N=2人)であった。

以上の第II相試験の結果よりBenjamin J Solomon氏らは次のように結論を述べている。”ALK融合遺伝子陽性進行性非小細胞肺がん患者に対するローブレナ単剤療法はファーストライン治療としても、それ以降の治療ラインでも有効性を示しました。”

Lorlatinib in patients with ALK-positive non-small-cell lung cancer: results from a global phase 2 study(Lancet Oncology; November 06, 2018)

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