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再発難治性多発性骨髄腫に対するエンプリシティ+ポマリスト+デキサメタゾンで無増悪生存期間を有意に延長

[公開日] 2018.11.08[最終更新日] 2018.11.08

この記事の3つのポイント ・複数治療歴のある再発難治性多発性骨髄腫患者対象の第2相試験
・エンプリシティ+ポマリスト+デキサメタゾン併用療法の無増悪生存期間等を検証
・無増悪生存期間を統計学有意に改善し、客観的奏効率も非常に高率

2018年11月8日、医学誌『The New England Journal of Medicine』にて複数治療歴のある再発難治性多発性骨髄腫患者に対するヒト化抗ヒトSLAMF7モノクローナル抗体薬であるエロツムマブ(商品名エンプリシティ;以下エンプリシティ)+免疫調節薬であるポマリドミド(商品名ポマリスト;以下ポマリスト)+デキサメタゾン併用療法の有効性検証したELOQUENT-3試験(NCT02654132)の結果がNational and Kapodistrian University of Athens School of MedicineのMeletios A. Dimopoulos氏らにより公表された。

ELOQUENT-3試験とは、プロテアソーム阻害薬(PI)、免疫調節薬(IMiDs)であるレナリドミド(商品名レブラミド)を含む2レジメン以上の治療歴のある再発難治性多発性骨髄腫(RRMM)患者(N=117人)に対して28日を1サイクルとして1、8、15、22日目にエンプリシティ10mg/kg(3サイクル目以降は1日目にエンプリシティ20mg/kg)+1~21日目にポマリスト4mg+デキサメタゾン40mg(76歳以上は20mg)併用療法を投与する群(EPd,N=60人)、またはポマリスト+デキサメタゾン併用療法を投与する群(Pd,N=57人)に1対1の割合で無作為に振り分け、主要評価項目として無増悪生存期間(PFS)、副次評価項目として客観的奏効率(ORR)、全生存期間(OS)などを比較検証した第2相試験である。

本試験に登録された患者背景は以下の通りである。

年齢中央値

EPd群=69歳(43-81歳)
Pd群=66歳(36-81歳)

性別

EPd群=男性53%(N=32人)
Pd群=男性61%(N=35人)

ISS分類による病期ステージ

EPd群=ステージIもしくはIIが88%(N=53人)、ステージⅢが12%(N=7人)
Pd群=ステージIもしくはIIが88%(N=50人)、ステージⅢが12%(N=7人)

染色体異常の有無

EPd群でDel17pもしくはt(4:14)もしくはt(14:16)有り22%(N=13人)、1q21有り42%(N=25人)
Pd群でDel17pもしくはt(4:14)もしくはt(14:16)有り25%(N=14人)、1q21有り47%(N=27人)

前治療歴中央値

EPd群=3レジメン(2-8)
Pd群=3レジメン(2-8)

造血幹細胞移植の治療歴

EPd群=52%(N=31人)
Pd群=58%(N=33人)

前治療歴の種類

EPd群=ボルテゾミブ100%(N=60人)、レナリドミド98%(59人)、メルファラン63%(N=38人)、サリドマイド42%(N=25人)、ドキソルビシン30%(N=18人)、カルフィルゾミブ15%(N=9人)、イキサゾミブ8%(N=5人)、ダラツムマブ2%(N=1人)
Pd群=ボルテゾミブ100%(N=57人)、レナリドミド100%(57人)、メルファラン63%(N=36人)、サリドマイド33%(N=19人)、ドキソルビシン26%(N=15人)、カルフィルゾミブ28%(N=16人)、イキサゾミブ4%(N=2人)、ダラツムマブ4%(N=2人)

両群間の患者背景に大きな偏りはなかった。

本試験の結果は以下の通りである。

■主要評価項目である無増悪生存期間(PFS)中央値はEPd群10.3ヶ月(95%信頼区間:5.6ヶ月-未到達)に対してPd群4.7ヶ月(95%信頼区間:2.8-7.2ヶ月)、EPd群で病勢進行または死亡(PFS)のリスクを46%統計学有意に減少(HR:0.54,95%信頼区間:0.34-0.86,P=0.008)した。

■副次評価項目である客観的奏効率(ORR)はEPd群53%(95%信頼区間:40%-66%)に対してPd群26%(95%信頼区間:16%-40%)、EPd群で3倍以上(ORR:3.25,95%信頼区間:1.49-7.11)の奏効を示した。

■全生存期間(OS)の結果は未成熟であるが、EPd群で死亡のリスク(OS)を38%減少(ハザード比:0.62,95%信頼区間:0.30-1.28)する傾向が確認されている。

■一方の安全性として、グレード3または4の治療関連有害事象(TRAE)発症率はEPd群57%に対してPd群60%、10%以上の患者で確認されたグレード3または4の治療関連有害事象(TRAE)は下記の通りである。好中球減少症はEPd群13%に対してPd群27%、貧血はEPd群10%に対してPd群20%、高血糖はEPd群8%に対してPd群7%、感染症はEPd群13%に対してPd群22%。

また、治療関連有害事象(TRAE)のための治療中止率はEPd群18%に対してPd群24%、治療関連死亡は両群間で1人も確認されなかった。

以上のELOQUENT-3試験の結果よりMeletios A. Dimopoulos氏らは以下のように結論を述べている。“複数治療歴のある再発難治性多発性骨髄腫患者に対するEPd併用療法はPd併用療法に比べて無増悪生存期間(PFS)を統計学有意に改善し、客観的奏効率(ORR)も非常に高率でした。”

Elotuzumab plus Pomalidomide and Dexamethasone for Multiple Myeloma(N Engl J Med 2018; 379:1811-1822 DOI: 10.1056/NEJMoa1805762)

ニュース 多発性骨髄腫 NCT02654132

山田創

製薬会社、オンコロジーメディアの運営を経て、フリーのメディカルライターへ転身。Twitterアカウント「@So_Yamada_」

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