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スマホアプリなどを活用したがん患者主体の情報取得に、医療専門家の役割は重要

[公開日] 2018.11.01[最終更新日] 2018.11.01

目次

スマートフォンやタブレットなどの情報通信技術(ICT)が普及した昨今、がん治療中の患者がより主体的に情報を収集し、自身の治療管理や疾患予防などの知識や理解を深め、専門家などと情報交換することが容易にできるようになり、関心度も高まっている。その一方で、ネット情報の信憑性や科学的妥当性には問題があることを浮き彫りにしている調査結果も報告されている。 スペインUniversitario Gregorio Maranon総合病院 Maria Sanjurjo-Saez氏らの研究グループは、600例を超えるがん患者を被験者として、ICTに対する意識や関心度、アプリ利用状況など横断的な実態調査を実施し、分析結果を2018年10月23日のJournal of Medical Internet Research(JMIR)誌オンライン版で発表した。現状の情報通信環境で、患者が品質の高い情報を取得・活用するために、ツールの推奨や妥当性の検証において医療専門家が果たす役割は大きいとしている。

計28問のアンケートに650人が協力

研究グループは2017年5月から7月、薬剤師や腫瘍専門医など多岐にわたる専門家からなる調査チームが質問票を作成し、治療期間中に来院した18歳以上のがん患者に配布した。質問票は3ブロックで構成される計28問で、ブロックA(9問)は社会人口学的特性について、ブロックB(12問)は健康関連情報を調べる時の情報通信技術の使用状況、ブロックC(7問)は利用する健康アプリに関するものであった。なお、同質問票はヘルシンキ宣言に基づきUniversitario Gregorio Maranon総合病院の倫理委員会が承認したものである。その結果、質問票を配布されたがん患者650人のうち611人(94.0%)の回答が分析対象となった。 分析対象611人の主な患者背景は、平均年齢は57.8歳(19歳から91歳)、女性患者の割合は61.9%(378人)、同居者がいる割合は89.5%(547人)、高等教育レベルを有する割合は40.7%(249人)、最も多いがん種は血液がんで29.2%(179人)、次いで乳がんが20.3%(124人)、大腸がんが18.5%(113人)であった。およそ半数(276人、45.1%)の患者が自身の健康状態を「良好」、48人(7.8%)は「極めて良好」と回答した。

約9割が健康関連情報に関心、約6割がネット検索、約半数は自身の病気に関する情報求めて

今回の調査で、82.7%(505人)がスマートフォンを所有しており、その約半数(44%)は毎日ネット検索をしていると回答した。611人中87.1%(532人)が健康関連情報に関心を持ち、75.5%(462人)は医療専門家に相談し、61.3%(375人)はインターネットでも情報を求めていた。 アクセス先はYouTubeやTwitterなどSNS、医学界専門の学術サイト、患者会や支援グループのサイトなどにいずれも20%程度で分散していた。情報収集する理由について、49.2%(301人)は疾患予防や健康なライフスタイル、ヘルスケアに関する情報が欲しいと回答、47.2%(289人)は自身の担当医から施されている治療について調べていることが分かった。ネット上の医療情報は検索しないと回答した被験者は21.1%(129人)いた。

ネット情報の信頼度はサイトの信頼性に依存、若齢者は受診前後の情報収集に積極的

インターネットで取得した情報について、「いつも」容易に理解できると回答したのは10.8%(66人)で、年齢が低いほど、あるいは中等・高等教育レベルを有する被験者ほど多かった。では、取得した情報を信用するかの質問については、「信用する」が13.7%(84人)、「信用しない」が21.1%(129人)で、「サイトによって信用するか否かを判断する」の55.0%(336人)が最も多かった。「信用しない」と回答したのは高齢者ほど多かった。 自身の病気や治療に関する情報を、担当医の診察を受ける前に調べておくと回答したのは21.1%(133人)で、受診後に調べると回答したのは、医師との面談の中で疑問が生じた場合のみに調べる被験者も含めて50.9%(311人)、いずれも年齢の低い被験者ほど多かった。

約8割が医療専門家推奨のアプリの利用を希望、対価発生で約4割は利用断念

611人中、56.7%(347人)はインターネットにアクセスし、42.8%(262人)は何等かのアプリを利用していたが、78.2%(470人)の被験者は健康関連アプリをインストールしているわけではなかった。インストールしていたのは20.3%(124人)であった。その上で、医療専門家が健康関連アプリを推奨したと仮定すると、81.5%(498人)がそれを「利用する」と答えた。だが、そのアプリのダウンロードに2.15ユーロ(約275円:がん患者向けアプリの平均価格)を支払う必要があるとしたら、39.6%(242人)は「利用しない」と答えた。支払っても「利用する」は16.7%(102人)、「たぶん利用する」は32.6%(199人)であった。 また、アプリの有料無料に関わらず、アプリを利用している被験者はやはり年齢の低い患者の方が多く、病気や治療に関する情報収集の他、診療のスケジュール管理や自身の症状の記録やモニタリングに活用していた。中等・高等教育レベルを有する被験者は、医療機関受診や専門家との面談のスケジュール管理の他、疾患予防、健康問題、ライフスタイルなどに関連するアプリを好んで利用する傾向にあった。 以上、がん患者のICT環境の実態調査から、診療スケジュールの管理や治療管理についての助言、医療専門家との情報交換などを目的として、ほとんどはスマートフォンを介したネット情報やアプリを活用しているということが把握できた。サイト、アプリを決定するための重要な条件は、無料でアクセスできること、医療専門家が推奨していることであった。こうした現状で、情報の正しい活用についての知識や経験を提供するため、医療専門家がプロバイダーとして積極的に関わっていくことが、患者の情報通信環境に貢献すると考えられた。
ニュース がん一般

3Hメディソリューション株式会社 執行役員 可知 健太

オンコロジー領域の臨床開発に携わった後、2015年にがん情報サイト「オンコロ」を立ち上げ、2018年に希少疾患情報サイト「レアズ」を立ち上げる。一方で、治験のプロジェクトマネジメント業務、臨床試験支援システム、医療機器プログラム開発、リアルワールドデータネットワーク網の構築等のコンサルテーションに従事。理学修士。

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