第三世代ALK阻害薬ローブレナがALK陽性非小細胞肺がん適応にて承認


  • [公開日]2018.09.21
  • [最終更新日]2019.04.18

2018年9月21日、ファイザー株式会社は「ALKチロシンキナーゼ阻害剤に抵抗性又は不耐容のALK融合遺伝子陽性の切除不能な進行・再発の非小細胞肺癌」の効能・効果で、第三世代ALK阻害薬ロルラチニブ(商品名ローブレナ)の製造販売承認を取得したと発表した。なお、現在、ローブレナはいずれの国の規制当局でも承認を得ておらず、日本が世界に先駆けて承認を取得したとのこと。ローブレナは11月に開催予定の中央社会保険医療協議会にて、薬価が決められ発売される予定。

初めて「医薬品の条件付き早期承認制度」が適用

ローブレナは、既存のALK阻害剤で効果が得られなくなった患者さんの耐性メカニズムに注目し創製された第三世代ALK阻害薬で、耐性変異がみられる変異型ALKにも効果が期待される薬剤となる。日本も参加した国際共同第1/2相試験において、既存のALK阻害剤に抵抗性又は不耐容のALK陽性NSCLCに対する臨床的に意義のある抗腫瘍効果と忍容性が示されたことから、これらの結果を取りまとめ、2018年1月に国内における製造販売承認申請を行っていた。

さらに、ローブレナは、昨年10月に導入された「医薬品の条件付き早期承認制度」が適用され、優先審査の対象として、約8ヵ月間の審査期間を経て承認となった。承認条件は、医薬品リスク管理計画を策定し実施すること、全症例を対象に使用成績調査を実施し適正使用のためのデータ収集をすること、肺がん治療に精通した医師によって処方されるとともに本剤のリスク等について十分に管理・説明できる医療機関及び薬局においてのみ取り扱われるよう必要な措置を講じること、の3点。

同社取締役 医薬開発部門長であるマリエピエール・ガスティノー氏は、「第一世代のザーコリに続き、本日、第三世代のALK阻害剤であるローブレナの承認を取得したことを大変嬉しく思います。ローブレナは、ファイザー社が有する臨床経験に基づき、ALK阻害剤の耐性機序を解明し、かつ血液脳関門を通過できるように設計し、創製した薬剤です。国際共同第Ⅰ/Ⅱ相試験において、複数回のALK阻害剤の治療を受けた患者さんを含む全ての患者群で高い奏効率が認められ、頭蓋内腫瘍に対する効果も確認されました。獲得耐性や脳転移の出現によって既存の治療法では十分な効果が得られず、治療に難渋する患者さんへの新たな治療選択肢となることを期待しています。日本において条件付き早期承認制度の適用を受け、優先審査の対象となったことは、医療ニーズが高いことを評価されたものと考えております。また、本剤に関し、3,600名分を越える国内の患者さんたちの署名とともに、『早期承認の要望書』が厚生労働大臣宛てに提出されていることからも、ALK肺がん治療におけるアンメット・ニーズ解決の一助になると確信しております。」と述べた。

上記の『医薬品の条件付き早期承認制度』や『3,600名分を越える国内の患者さんたちの署名とともに、『早期承認の要望書』が厚生労働大臣宛てに提出』については以下を参照

ALK陽性肺がん、申請中の第三世代ALK阻害薬ロルラチニブが優先審査対象に ~制度開始後日本初。患者の想い、届く~

ローブレナについて

ローブレナは、第三世代ALK/ROS1チロシンキナーゼ阻害剤で、ALK融合遺伝子とROS1融合遺伝子の染色体再構成を有する非臨床肺がんモデルにおいて高い活性を示した。ローブレナは特に、他のALK阻害剤に抵抗性を示す変異腫瘍に対しても効果を発揮できるように、また、血液脳関門を通過できるように設計されている。

現在、第Ⅲ相CROWN試験(NCT03052608)が進行中。日本も参加している本試験は、ALK陽性転移性NSCLCに対するファーストライン治療薬としてのローブレナをザーコリと比較する非盲検無作為化群間比較試験となる。

第2相試験では、脳転移がない、あるいは無症候性の脳転移(治療歴の有無を問わない)を有する患者さん計275名を対象に、ローブレナの抗腫瘍活性と安全性を検討した。参加者は、バイオマーカー(ALK陽性またはROS1陽性)と前治療歴をもとに、6つのコホートに割り付けられた。主要評価項目は、独立中央判定(ICR)に基づく客観的奏効率(ORR)と頭蓋内ORR(IC-ORR)。本試験で得られた併合解析結果は以下の通り。

ALK陽性、未治療
ORRは90%(27/30; 95% CI: 74, 98)、IC-ORRは75%(6/8; 95% CI: 35, 97)

ALK陽性、クリゾチニブによる前治療歴あり(化学療法による治療歴を問わない)
ORRは69%(41/59; 95% CI: 56, 81)、IC-ORRは68%(25/37; 95% CI: 50, 82)

ALK陽性、クリゾチニブ以外のALK阻害剤による前治療歴あり(化学療法による治療歴を問わない)
ORR は 33%(9/27; 95% CI: 16, 54)、IC-ORRは42%(5/12; 95% CI: 15, 72)

ALK陽性、2または3レジメンのALK阻害剤による前治療歴あり(化学療法による治療歴を問わない)
ORRは 39%(43/111; 95% CI: 30, 49)、IC-ORRは48%(40/83; 95% CI: 37, 59)

ROS1陽性(前治療歴の有無を問わない)
ORRは36%(17/47; 95% CI: 23, 52)、IC-ORRは56%(14/25; 95% CI: 35, 76)

ローブレナの忍容性は概ね良好であった。有害事象の大部分は軽度から中等度で、ロルラチニブの減量や投与中断、または標準的な薬物療法によって管理可能であった。治療に関連する死亡はなく、薬剤関連の有害事象による中止率も低いものであった(3%)。最もよく認められた有害事象は以下の通り。

高コレステロール血症(81%)、高トリグリセリド血症(60%)、浮腫(43%)、末梢神経障害(30%)、体重増加(18%)、認知的変化(18%)、気分的変化(15%)、疲労(13%)、下痢(11%)、関節痛(10%)、AST増加(10%)

薬剤概要

製品名
ローブレナ®錠25mg/100mg
一般名
ロルラチニブ(Lorlatinib)
効能・効果
ALKチロシンキナーゼ阻害剤に抵抗性又は不耐容のALK融合遺伝子陽性の切除不能な進行・再発の非小細胞肺癌
用法・用量
通常、成人にはロルラチニブとして1日1回100mgを経口投与する。なお、患者の状態により適宜減量する。
製造販売承認取得日
2018年9月21日
製造販売元
ファイザー株式会社

参考:ファイザー社プレスリリース

文:可知 健太

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