中枢神経系(CNS)に転移を有する未治療のEGFR遺伝子変異陽性進行性非小細胞肺がん患者に対するタグリッソ、無増悪生存期間(PFS)を統計学有意に延長する医学誌『Journal of Clinical Oncology』より


  • [公開日]2018.09.05
  • [最終更新日]2019.02.15
この記事の3つのポイント
・脳転移のある未治療EGFR陽性非小細胞肺がん患者が対象の第Ⅲ相試験
タグリッソ単剤療法の有効性を、他のEGFR阻害薬と比較し効果を検証した
・他のEGFR阻害薬と比較し、無増悪生存期間を統計学的に有意に延長した

2018年8月28日、医学誌『Journal of Clinical Oncology』にて中枢神経系CNS)転移のある未治療上皮増殖因子受容体(EGFR;以下EGFR)遺伝子変異陽性進行性非小細胞肺がん患者に対するファーストライン治療としてのEGFRチロシンキナーゼ阻害薬であるオシメルチニブ(商品名タグリッソ;以下タグリッソ)単剤療法の有効性を比較検証した第III相のFLAURA試験(NCT02296125)の結果がUniversity Hospital KU Leuven・Johan Vansteenkiste氏らにより公表された。

FLAURA試験とは、未治療EGFR遺伝子変異陽性進行性非小細胞肺がん患者(N=556人)に対して1日1回タグリッソ80mg単剤療法を投与する群、または標準EGFRチロシンキナーゼ阻害薬である1日1回ゲフィチニブ250mgまたは1日1回エルロチニブ150mg単剤療法を投与する群に無作為に振り分け、主要評価項目として無増悪生存期間(PFS)、副次評価項目として客観的奏効率ORR)、全生存期間OS)などを比較検証した二重盲検下の第III相試験である。

なお本結果では、FLAURA試験に登録された556人の内、ベースライン時点で脳転移の有無をMRIまたはCTにより測定が可能であった200人を対象にしている。200人の内、128人(タグリッソ群61人,標準EGFRチロシンキナーゼ阻害薬群67人)は中枢神経系(CNS)転移を有しており(または測定不能)、その内41人(タグリッソ群22人,標準EGFRチロシンキナーゼ阻害薬群19人)は1個以上の中枢神経系(CNS)転移を有していた。

本試験に登録された中枢神経系(CNS)に転移を有する患者の背景は下記の通りである。年齢中央値はタグリッソ群63歳(34-83歳)に対して標準EGFRチロシンキナーゼ阻害薬群63歳(39-85歳)。性別はタグリッソ群で男性38%(N=23人)、女性62%(N=38人)に対して標準EGFRチロシンキナーゼ阻害薬群で男性39%(N=26人)、女性61%(N=41人)。

WHO Performance Statusはタグリッソ群でスコア0が26%(N=16人)、スコア1が74%(N=45人)に対して標準EGFRチロシンキナーゼ阻害薬群でスコア0が40%(N=27人)、スコア1が58%(N=39人)。肺がんの組織学的分類はタグリッソ群で腺がん100%(N=61人)に対して標準EGFRチロシンキナーゼ阻害薬群で腺がん100%(N=67人)。

脳放射線の前治療歴はタグリッソ群であり25%(N=15人)に対して標準EGFRチロシンキナーゼ阻害薬群であり24%(N=16人)。ベースライン時点における中枢神経系(CNS)の標的病変の大きさはタグリッソ群で16mm(11-66mm)に対して標準EGFRチロシンキナーゼ阻害薬群で29mm(10-90mm)。中枢神経系(CNS)の標的病変の個数はタグリッソ群で1から3個77%(N=47人)、4個以上23%(N=14人)に対して標準EGFRチロシンキナーゼ阻害薬群で1から3個73%(N=49人)、4個以上27%(N=18人)。

以上のような背景を有する患者に対する本試験の結果は下記の通りである。主要評価項目である中枢神経系(CNS)に転移を有する(または測定不能)患者群における無増悪生存期間(PFS)中央値はタグリッソ群で未到達(95%信頼区間:16.5ヶ月-未到達)に対して標準EGFRチロシンキナーゼ阻害薬群13.9ヶ月(95%信頼区間:8.3ヶ月-未到達)、タグリッソ群で病勢進行または死亡のリスクを52%統計学有意に減少(HR:0.48,95%信頼区間:0.26-0.86,P=0.014)した。

副次評価項目である中枢神経系(CNS)に転移を有する(または測定不能)患者群における客観的奏効率(ORR)はタグリッソ群で66%に対して標準EGFRチロシンキナーゼ阻害薬群で43%(OR:2.5,95%信頼区間:1.2-5.2,P=0.011)。また、1個以上の中枢神経系(CNS)転移を有する(または測定不能)患者群における客観的奏効率(ORR)はタグリッソ群で91%に対して標準EGFRチロシンキナーゼ阻害薬群で68%(OR:4.6,95%信頼区間:0.9-34.9,P=0.066)。

以上の中枢神経系(CNS)に転移を有する患者群におけるFLAURA試験の結果よりJohan Vansteenkiste氏らは以下のように結論を述べている。”中枢神経系(CNS)に転移を有する未治療のEGFR遺伝子変異陽性進行性非小細胞肺がん患者に対するファーストラインとしてのタグリッソ単剤療法は、他の標準EGFRチロシンキナーゼ阻害薬群よりも無増悪生存期間(PFS)を統計学有意に延長しました。”

CNS Response to Osimertinib Versus Standard Epidermal Growth Factor Receptor Tyrosine Kinase Inhibitors in Patients With Untreated EGFR-Mutated Advanced Non–Small-Cell Lung Cancer(Journal of Clinical Oncology, https://doi.org/10.1200/JCO.2018.78.3118)

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