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1p/19q欠失のないグレード2/3神経膠腫(グリオーマ)患者に対するテモダール+抗VEGF抗体薬アバスチン、テモダール単剤に比べて全生存期間(OS)を改善しない

[公開日] 2018.08.27[最終更新日] 2018.08.27

この記事の3つのポイント ・1p/19q欠失のない再発神経膠腫患者対象の第Ⅱ相試験 ・テモダール+アバスチン併用療法の有効性をテモダール単剤療法と比較検証した ・テモダール単剤療法群と比較し、有効性は認められなかった
2018年8月13日、医学誌『The Lancet Oncology』にて1p/19q欠失のないグレード2または3再発神経膠腫(グリオーマ)患者に対する抗VEGF抗体薬であるベバシズマブ(商品名アバスチン;以下アバスチン)+テモゾロミド(商品名テモダール;以下テモダール)併用療法の有効性を検証した第II相のTAVAREC試験(NCT01164189)の結果がErasmus MC Cancer Institute・Martin J van den Bent氏らにより公表された。 TAVAREC試験とは、初回放射線療法、化学療法、または化学放射線療法後に再発した1p/19q欠失のないグレード2または3神経膠腫(グリオーマ)患者(N=155人)に対して4週を1サイクルとして1日-5日目にテモダール150–200 mg/m2単剤療法(N=77人)を最大12サイクル投与する群、または4週を1サイクルとして1日-5日目にテモダール150–200 mg/m2を最大12サイクル+2週を1サイクルとして1日目にアバスチン10mg/kg併用療法を病勢進行まで投与する群(N=78人)に無作為に振り分け、主要評価項目として12ヶ月全生存率(OS)、副次評価項目として無増悪生存期間(PFS)、客観的奏効率(ORR)などを比較検証した多施設共同の第II相試験である。 本試験に登録された患者背景は下記の通りである。年齢中央値は単剤群で43.1歳(34.5-49.0歳)に対して併用群で44.6歳(33.9-53.8歳)。性別は単剤群で男性58%(N=45人)、女性42%(N=32人)に対して併用群で男性73%(N=57人)、女性27%(N=21人)。 WHO分類によりPerformance Statusは単剤群でスコア0が44%(N=34人)、スコア1が45%(N=35人)、スコア2が10%(N=8人)に対して併用群でスコア0が40%(N=31人)、スコア1が49%(N=38人)、スコア2が12%(N=9人)。WHO分類による臨床病期は単剤群でグレード2が52%(N=40人)、グレード3が47%(N=36人)に対して併用群でグレード2が55%(N=43人)、グレード3が44%(N=34人)。 遺伝子関連ステータスは単剤群でMGMT遺伝子プロモーター領域のメチル化66%(N=51人)、IDH遺伝子変異陽性69%(N=53人)に対して併用群でMGMT遺伝子プロモーター領域のメチル化51%(N=40人)、IDH遺伝子変異陽性62%(N=48人)。以上のように両群間の患者背景に大きな偏りはなかった。 本試験の結果、主要評価項目である12ヶ月全生存率(OS rate)は単剤群61%(80%信頼区間:53%-69%)に対して併用群55%(80%信頼区間:47%-69%)を示した。なお、全生存期間(OS)中央値は単剤群14.8ヶ月(95%信頼区間:12.9-16.9ヶ月)に対して併用群12.9ヶ月(95%信頼区間:10.6-16.3ヶ月)を示した。 副次評価項目である無増悪生存期間(PFS)中央値は単剤群6.3ヶ月(95%信頼区間:5.5-8.5ヶ月)に対して併用群5.9ヶ月(95%信頼区間:5.6-8.2ヶ月)。客観的奏効率(ORR)は単剤群44%(95%信頼区間:33%-57%)に対して併用群52%(95%信頼区間:40%-64%)。奏効持続期間(DOR)中央値は単剤群5.7ヶ月(95%信頼区間:3.0-8.6ヶ月)に対して併用群5.6ヶ月(95%信頼区間:3.0-5.9ヶ月)。 一方の安全性として、グレード3または4の治療関連有害事象(TRAE)発症率は下記の通りである。グレード3または4の血液関連有害事象(TRAE)としては好中球減少症が単剤群8%(N=6人)に対して併用群15%(N=11人)、白血球減少症が単剤群4%(N=3人)に対して併用群7%(N=5人)、血小板減少症が単剤群11%(N=8人)に対して併用群17%(N=13人)、リンパ球減少症が単剤群11%(N=8人)に対して併用群17%(N=13人)、貧血が単剤群3%(N=2人)に対して併用群0%。 グレード3または4の非血液関連有害事象(TRAE)としてはALT上昇が単剤群4%(N=3人)に対して併用群3%(N=2人)、低カルシウム血症が単剤群3%(N=2人)に対して併用群1%(N=1人)、低ナトリウム血症が単剤群0%に対して併用群12%(N=9人)、高カリウム血症が単剤群8%(N=6人)に対して併用群1%(N=1人)、神経系障害が単剤群13%(N=10人)に対して併用群23%(N=17人)、発作が単剤群7%(N=5人)に対して併用群10%(N=8人)などであった。 以上のTAVAREC試験の結果よりMartin J van den Bent氏らは以下のように結論を述べている。”治療歴のある1p/19q欠失のないグレード2または3再発神経膠腫(グリオーマ)患者に対し、テモダール+アバスチン併用療法はテモダール単剤療法に比べて全生存期間(OS)を改善しませんでした。” Bevacizumab and temozolomide in patients with first recurrence of WHO grade II and III glioma, without 1p/19q co-deletion (TAVAREC): a randomised controlled phase 2 EORTC trial(The Lancet Oncology, DOI:https://doi.org/10.1016/S1470-2045(18)30362-0)
ニュース 脳腫瘍 テモゾロミド

山田創

製薬会社、オンコロジーメディアの運営を経て、フリーのメディカルライターへ転身。Twitterアカウント「@So_Yamada_」

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