局所進行性食道扁平上皮がん患者に対する術前化学放射線(CRT)+手術、全生存期間(OS)を統計学有意に改善する医学誌『Journal of Clinical Oncology』より


  • [公開日]2018.08.21
  • [最終更新日]2018.08.21
この記事の3つのポイント
・食道がんの患者さんを対象とした、術前化学療法有効性を比較した第Ⅲ相試験
主要評価項目全生存期間OS)、副次評価項目R0切除
・手術単独療法に比べ全生存期間(OS)、R0切除率ともに統計学有意に改善する

2018年8月8日、医学誌『Journal of Clinical Oncology』にて局所進行性食道扁平上皮がん患者に対する手術単独療法に比べた術前化学放射線+手術併用療法の有効性を検証した第III相のNEOCRTEC5010試験(NCT01216527)の結果がSun Yat-sen University Cancer Center・Jianhua Fu氏らにより公表された。

NEOCRTEC5010試験とは、切除可能局所進行性食道扁平上皮がん患者(N=451人,ステージIIBまたはステージIII)に対して術前化学放射線+手術併用療法を実施する群(N=224人)、または手術単独療法を実施する群(N=227人)に1対1の割合で無作為に振り分け、主要評価項目として全生存期間(OS)、副次評価項目としてR0切除後の無病生存期間DFS)、R0切除率、安全性などを比較検証した多施設共同非盲検下の第III相試験である。

なお、術前化学療法としては21日を1サイクルとして1日目、8日目にビノレルビン25mg/m2+1日目にシスプラチン75mg/m2または1日目から4日目にシスプラチン25mg/m2併用療法を2サイクル投与し、放射線療法としては1回2.0Gyを計40.0gy実施している。

本試験に登録された患者背景は術前化学放射線療法(CRT)群、手術単独療法(S)群それぞれ下記の通りである。年齢中央値は術前化学放射線療法群56歳(31-70歳)に対して手術単独療法群58歳(35-70歳)。性別はCRT群で男性84.8%(N=190人)、女性15.2%(N=34人)に対してS群で男性78.0%(N=177人)、女性22.0%(N=50人)。

KPSはCRT群でスコア90が99.6%(N=223人)、スコア100が0.4%(N=1人)に対してS群でスコア90が98.2%(N=223人)、スコア100が1.8%(N=4人)。BMI中央値はCRT群で22±2.87kg/m2に対してS群で22±3.48kg/m2。腫瘍部位はCRT群で近位部11.6%(N=26人)、中央部70.5%(N=158人)、遠位部17.9%(N=40人)に対してS群で近位部9.7%(N=22人)、中央部70.5%(N=160人)、遠位部19.8%(N=45人)。

臨床病期はCRT群でステージIIIBが16.1%(N=36人)、ステージIVが83.9%(N=188人)に対してS群でステージIIIBが16.3%(N=37人)、ステージIVが83.7%(N=190人)。以上のように両群間おける患者背景の偏りはなかった。

上記背景を有する患者に対する本試験の結果は下記の通りである。主要評価項目である全生存期間(OS)中央値はCRT群100.1ヶ月(95%信頼区間:74.6-125.6ヶ月)に対してS群66.5ヶ月(95%信頼区間:39.7-93.3ヶ月)、CRT群で死亡(OS)のリスクを29%統計学有意に減少(HR:0.71,95%信頼区間:0.53-0.96,P=0.025)した。

なお、それぞれの1年全生存率(OS rate)、2年全生存率(OS rate)、3年全生存率(OS rate)はCRT群90.0%(95%信頼区間:85.2%-93.3%)、75.1%(95%信頼区間:68.8%-80.4%)、69.1%(95%信頼区間: 62.4%-74.8%)に対してS群86.2%(95%信頼区間:80.9%- 90.1%)、72.5%(95%信頼区間:66.1%-77.9%)、58.9%(95%信頼区間: 52.0%-65.3%)であった。

副次評価項目であるR0切除率はCRT群98.4%(N=182人)に対してS群91.2%(N=207人)、CRT群でR0切除率は統計学有意に高かった(P=0.002)。また、R0切除をした患者群(N=389人)における無病生存期間(DFS)中央値はCRT群100.1ヶ月(95%信頼区間:49.7-150.6ヶ月)に対してS群41.7ヶ月(95%信頼区間:19.0-64.4ヶ月)、CRT群で再発または死亡(DFS)のリスクを42%統計学有意に減少(HR:0.58,95%信頼区間:0.43-0.78,P<0.001)した。

一方の安全性として、NCRT群において確認されたグレード3または4の治療関連有害事象(TRAE)は血液関連有害事象54.3%(N=121人)、非血液関連有害事象7.2%(N=16人)で、その主な有害事象は下記の通りである。白血球減少症48.9%(N=109人)、好中球減少症45.7%(N=102人)。なお、術後合併症発症率は不整脈(CRT群13%、S群4.0%)以外においてはCRT群、S群の両群間で統計学有意な差はなかった。

以上のNEOCRTEC5010試験の結果より、Jianhua Fu氏らは以下のように結論を述べている。”局所進行性食道扁平上皮がん患者に対する術前化学放射線+手術併用療法は、手術単独療法に比べて全生存期間(OS)を統計学有意に改善する傾向を示しました。”

Neoadjuvant Chemoradiotherapy Followed by Surgery Versus Surgery Alone for Locally Advanced Squamous Cell Carcinoma of the Esophagus (NEOCRTEC5010): A Phase III Multicenter, Randomized, Open-Label Clinical Trial(DOI: 10.1200/JCO.2018.79.1483 Journal of Clinical Oncology)

×

この記事に利益相反はありません。

局所進行性食道扁平上皮がん患者に対する術前化学放射線(CRT)+手術、全生存期間(OS)を統計学有意に改善する医学誌『Journal of Clinical Oncology』より


  • [公開日]2018.08.21
  • [最終更新日]2018.08.21
この記事の3つのポイント
・食道がんの患者さんを対象とした、術前化学療法有効性を比較した第Ⅲ相試験
主要評価項目全生存期間OS)、副次評価項目R0切除
・手術単独療法に比べ全生存期間(OS)、R0切除率ともに統計学有意に改善する

2018年8月8日、医学誌『Journal of Clinical Oncology』にて局所進行性食道扁平上皮がん患者に対する手術単独療法に比べた術前化学放射線+手術併用療法の有効性を検証した第III相のNEOCRTEC5010試験(NCT01216527)の結果がSun Yat-sen University Cancer Center・Jianhua Fu氏らにより公表された。

NEOCRTEC5010試験とは、切除可能局所進行性食道扁平上皮がん患者(N=451人,ステージIIBまたはステージIII)に対して術前化学放射線+手術併用療法を実施する群(N=224人)、または手術単独療法を実施する群(N=227人)に1対1の割合で無作為に振り分け、主要評価項目として全生存期間(OS)、副次評価項目としてR0切除後の無病生存期間DFS)、R0切除率、安全性などを比較検証した多施設共同非盲検下の第III相試験である。

なお、術前化学療法としては21日を1サイクルとして1日目、8日目にビノレルビン25mg/m2+1日目にシスプラチン75mg/m2または1日目から4日目にシスプラチン25mg/m2併用療法を2サイクル投与し、放射線療法としては1回2.0Gyを計40.0gy実施している。

本試験に登録された患者背景は術前化学放射線療法(CRT)群、手術単独療法(S)群それぞれ下記の通りである。年齢中央値は術前化学放射線療法群56歳(31-70歳)に対して手術単独療法群58歳(35-70歳)。性別はCRT群で男性84.8%(N=190人)、女性15.2%(N=34人)に対してS群で男性78.0%(N=177人)、女性22.0%(N=50人)。

KPSはCRT群でスコア90が99.6%(N=223人)、スコア100が0.4%(N=1人)に対してS群でスコア90が98.2%(N=223人)、スコア100が1.8%(N=4人)。BMI中央値はCRT群で22±2.87kg/m2に対してS群で22±3.48kg/m2。腫瘍部位はCRT群で近位部11.6%(N=26人)、中央部70.5%(N=158人)、遠位部17.9%(N=40人)に対してS群で近位部9.7%(N=22人)、中央部70.5%(N=160人)、遠位部19.8%(N=45人)。

臨床病期はCRT群でステージIIIBが16.1%(N=36人)、ステージIVが83.9%(N=188人)に対してS群でステージIIIBが16.3%(N=37人)、ステージIVが83.7%(N=190人)。以上のように両群間おける患者背景の偏りはなかった。

上記背景を有する患者に対する本試験の結果は下記の通りである。主要評価項目である全生存期間(OS)中央値はCRT群100.1ヶ月(95%信頼区間:74.6-125.6ヶ月)に対してS群66.5ヶ月(95%信頼区間:39.7-93.3ヶ月)、CRT群で死亡(OS)のリスクを29%統計学有意に減少(HR:0.71,95%信頼区間:0.53-0.96,P=0.025)した。

なお、それぞれの1年全生存率(OS rate)、2年全生存率(OS rate)、3年全生存率(OS rate)はCRT群90.0%(95%信頼区間:85.2%-93.3%)、75.1%(95%信頼区間:68.8%-80.4%)、69.1%(95%信頼区間: 62.4%-74.8%)に対してS群86.2%(95%信頼区間:80.9%- 90.1%)、72.5%(95%信頼区間:66.1%-77.9%)、58.9%(95%信頼区間: 52.0%-65.3%)であった。

副次評価項目であるR0切除率はCRT群98.4%(N=182人)に対してS群91.2%(N=207人)、CRT群でR0切除率は統計学有意に高かった(P=0.002)。また、R0切除をした患者群(N=389人)における無病生存期間(DFS)中央値はCRT群100.1ヶ月(95%信頼区間:49.7-150.6ヶ月)に対してS群41.7ヶ月(95%信頼区間:19.0-64.4ヶ月)、CRT群で再発または死亡(DFS)のリスクを42%統計学有意に減少(HR:0.58,95%信頼区間:0.43-0.78,P<0.001)した。

一方の安全性として、NCRT群において確認されたグレード3または4の治療関連有害事象(TRAE)は血液関連有害事象54.3%(N=121人)、非血液関連有害事象7.2%(N=16人)で、その主な有害事象は下記の通りである。白血球減少症48.9%(N=109人)、好中球減少症45.7%(N=102人)。なお、術後合併症発症率は不整脈(CRT群13%、S群4.0%)以外においてはCRT群、S群の両群間で統計学有意な差はなかった。

以上のNEOCRTEC5010試験の結果より、Jianhua Fu氏らは以下のように結論を述べている。”局所進行性食道扁平上皮がん患者に対する術前化学放射線+手術併用療法は、手術単独療法に比べて全生存期間(OS)を統計学有意に改善する傾向を示しました。”

Neoadjuvant Chemoradiotherapy Followed by Surgery Versus Surgery Alone for Locally Advanced Squamous Cell Carcinoma of the Esophagus (NEOCRTEC5010): A Phase III Multicenter, Randomized, Open-Label Clinical Trial(DOI: 10.1200/JCO.2018.79.1483 Journal of Clinical Oncology)

×

この記事に利益相反はありません。