この記事の3つのポイント
・既治療皮膚T細胞性リンパ腫患者を対象にポテリジオの有効性を検証した試験
・対象の病型は菌状息肉腫およびセザリー症候群
・ポテリジオ群がゾリンザ群に比べ無増悪生存期間を有意に改善した
2018年8月9日、医学誌『The Lancet Oncology』にて治療歴のある皮膚T細胞性リンパ腫(CTCL)患者に対する抗CCR4抗体薬であるモガムリズマブ(商品名ポテリジオ;以下ポテリジオ)単剤療法のヒストン脱アセチル化酵素(HDAC)阻害薬であるボリノスタット(商品名ゾリンザ;ゾリンザ)単剤療法に対する有効性を比較検証した第III相のMAVORIC試験(NCT01728805)の結果がStanford University School of Medicine・Youn H Kim氏らにより公表された。
MAVORIC試験とは、前治療歴のある再発難治性の皮膚T細胞性リンパ腫(CTCL)の主な病型である菌状息肉腫(MF)およびセザリー症候群(SS)患者(N=372人)に対して28日を1サイクルとして初回1サイクル目は1日目、8日目、15日目、22日目にポテリジオ1.0mg/kg、その後1日目、15日目にポテリジオ1.0mg/kg単剤療法を投与する群(N=186人)、または1日1回ゾリンザ400mg単剤療法を投与する群(N=186人)に1対1の割合で無作為に振り分け、主要評価項目として治験参加医師判定による無増悪生存期間(PFS)、副次評価項目として全奏効率(ORR)、奏効持続期間(DOR)などを比較検証した日本を含む国際多施設共同の第III相試験である。
本試験に登録された患者背景はポテリジオ群、ゾリンザ群それぞれ下記の通りである。年齢中央値はポテリジオ群64歳(54-73歳)に対してゾリンザ群65歳(56-72歳)。性別は男性59%(N=109人)に対して58%(N=107人)。人種は白人67%(N=125人)に対して73%(N=135人)、その他20%(N=37人)に対して14%(N=26人)。
ECOG Performance Statusはスコア0が57%(N=106人)に対して56%(N=104人)、スコア1が42%(N=78人)に対して44%(N=82人)、スコア2が1%(N=2人)に対して0%。病型の種類は菌状息肉腫(MF)56%(N=105人)に対して53%(N=99人)、セザリー症候群(SS)44%(N=81人)に対して47%(N=87人)。
臨床病期はステージIB-IIAが19%(N=36人)に対して26%(N=49人)、ステージIIBが17%(N=32人)に対して12%(N=23人)、ステージIIIA-IIIBが12%(N=22人)に対して9%(N=16人)、ステージIVA1が39%(N=73人)に対して44%(N=82ステージIVA2が10%(N=19人)に対して6%(N=12人)、ステージIVBが2%(N=4人)に対して2%(N=4人)。全身療法の前治療歴中央値は3レジメン(2-5)に対して3レジメン(2-5)。
主要評価項目である治験参加医師判定による無増悪生存期間(PFS)中央値はポテリジオ群7.7ヶ月(95%信頼区間:5.7-10.3ヶ月)に対してゾリンザ群3.1ヶ月(95%信頼区間:2.9-4.1ヶ月)、ポテリジオ群で病勢進行または死亡(PFS)のリスクを47%統計学有意に減少(HR:0.53,95%信頼区間:0.41-0.69,p<0.0001)した。
副次評価項目である全奏効率(ORR)はポテリジオ群28%(95%信頼区間:21.6%-35.0%)に対してゾリンザ群5%(95%信頼区間:2.2%-9.0%)、ポテリジオ群で奏効率は統計学有意に高率(RR:23·1,95%信頼区間:12.8–33.1,p<0·0001)であった。なお、病型別では菌状息肉腫(MF)患者における全奏効率(ORR)はポテリジオ群21%に対してゾリンザ群7%、セザリー症候群(SS)患者における全奏効率(ORR)はポテリジオ群37%に対してゾリンザ群2%であった。
奏効持続期間(DOR)中央値はポテリジオ群14.1ヶ月(95%信頼区間:8.4-19.2ヶ月)に対してゾリンザ群9.1ヶ月(95%信頼区間:5.6ヶ月-未到達)。なお、病型別では菌状息肉腫(MF)患者における奏効持続期間(DOR)中央値はポテリジオ群13.1ヶ月(95%信頼区間:4.7-18.0ヶ月)に対してゾリンザ群9.1ヶ月(95%信頼区間:5.6ヶ月-未到達)、セザリー症候群(SS)患者における奏効持続期間(DOR)中央値はポテリジオ群17.3ヶ月(95%信頼区間:9.4-19.9ヶ月)に対してゾリンザ群6.9ヶ月(95%信頼区間:6.9-6.9ヶ月)であった。
一方の安全性として、グレード3または4の治療関連有害事象(TRAE)発症率はそれぞれポテリジオ群41%(N=75人)、ゾリンザ群41%(N=76人)で確認され、主な重篤な治療関連有害事象(TRAE)の内訳は下記の通りである。ポテリジオ群では発熱4%(N=8人)、蜂巣炎3%(N=5人)、ゾリンザ群では蜂巣炎6%(N=3人)、肺塞栓症6%(N=3人)、敗血症3%(N=5人)であった。なお、ポテリジオにより敗血症、多発性筋炎を発症した2人の患者、ゾリンザにより肺塞栓症、気管支肺炎を発症した3人の患者で死亡が確認されている。
以上のMAVORIC試験の結果よりYoun H Kim氏らは以下のように結論を述べている。”前治療歴のある再発難治性菌状息肉腫(MF)およびセザリー症候群(SS)患者に対する抗CCR4抗体薬であるポテリジオはHDAC阻害薬であるゾリンザよりも無増悪生存期間(PFS)を統計学有意に改善しました。”
Mogamulizumab versus vorinostat in previously treated cutaneous T-cell lymphoma (MAVORIC): an international, open-label, randomised, controlled phase 3 trial(The Lancet Oncology, DOI:https://doi.org/10.1016/S1470-2045(18)30379-6)あなたは医師ですか。