脳転移のT790M変異型非小細胞肺がん患者に対するタグリッソは化学療法に比べて奏効率を改善医学誌『Journal of Clinical Oncology』より


  • [公開日]2018.08.13
  • [最終更新日]2019.02.15
この記事の3つのポイント
・脳転移を有する肺がん患者に対するタグリッソは有効である
奏効率化学療法30%に対してタグリッソは70%
・既治療のT790M変異肺がん対象の第3相臨床試験

2018年7月30日、医学誌『Journal of Clinical Oncology』にて治療歴のあるT790M変異型非小細胞肺がん患者に対するオシメルチニブ(商品名タグリッソ;以下タグリッソ)単剤療法有効性を比較検証した第III相のAURA3試験(NCT02151981)より、中枢神経系CNS)転移病変を有する患者群における有効性の結果がGuangdong Lung Cancer Institute・Yi-Long Wu氏らにより公表された。

AURA3試験とは、EGFRチロシンキナーゼ阻害薬による治療中もしくは治療後に病勢進行したT790M変異型非小細胞肺がん患者(N=416人)に対してタグリッソ単剤療法を投与する群(N=279人)、または化学療法(ペメトレキセド+カルボプラチン、またはペメトレキセド̟+シスプラチン併用療法を投与する群(N=140人)に2対1の割合で振り分け、主要評価項目として腫瘍が中枢神経系(CNS)に転移した患者における客観的奏効率(ORR)を比較検証した第III相試験である。

本試験に登録された中枢神経系(CNS)に転移した患者のタグリッソ群、化学療法群それぞれの背景は下記の通りである。年齢中央値はタグリッソ群58歳(34-82歳)、化学療法群59歳(20-79歳)。性別は男性45%(N=34人)、29%(N=12人)。人種はアジア人68%(N=51人)、80%(N=33人)、白人31%(N=23人)、20%(N=8人)。

Performance Statusはスコア0が29%(N=22人)、34%(N=14人)、スコア1が71%(N=53人)、66%(N=27人)。肺がんの種類は腺がん99%(N=74人)、100%(N=41人)。脳に対する放射線治療歴ありは37%(N=28人)、49%(N=20人)。

本試験の結果、主要評価項目である腫瘍が中枢神経系(CNS)に転移した患者における客観的奏効率(ORR)はタグリッソ群70%(95%信頼区間:51%-85%)、化学療法群31%(95%信頼区間:11%-59%)であった(オッズ比:5.13,95%信頼区間:1.44-20.6,P=0.015)。なお、腫瘍が中枢神経系(CNS)に転移した患者における病勢コントロール率DCR)はタグリッソ群93%(95%信頼区間:78%-99%)、化学療法群63%(95%信頼区間:35%-85%)であった。

腫瘍が中枢神経系(CNS)に転移した患者における無増悪生存期間PFS)中央値は、タグリッソ群11.7ヶ月(95%信頼区間:10ヶ月-未到達)、化学療法群5.6ヶ月(95%信頼区間:4.2-9.7ヶ月)、タグリッソ群で病勢進行または死亡のリスクが68%減少(ハザード比:0.15-0.69,P=0.004)した。

一方の安全性として、少なくとも1つの治療関連有害事象(TRAE)を発症した腫瘍が中枢神経系(CNS)に転移した患者はタグリッソ群97%、化学療法群95%、グレード3以上の治療関連有害事象(TRAE)はタグリッソ群4%、化学療法群32%であり、既存の患者における安全性プロファイルと一致していた。

以上のAURA3試験の結果よりYi-Long Wu氏らは以下のように結論を述べている。”中枢神経系(CNS)転移病変を有するT790M変異型非小細胞肺がん患者に対するタグリッソ単剤療法は、化学療法に比べて客観的奏効率(ORR)、無増悪生存期間(PFS)を良好に改善しました。”

CNS Efficacy of Osimertinib in Patients With T790M-Positive Advanced Non–Small-Cell Lung Cancer: Data From a Randomized Phase III Trial (AURA3)(Journal of Clinical Oncology, https://doi.org/10.1200/JCO.2018.77.9363)

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