静脈血栓塞栓症(VTE)を発症したがん患者に対する第Xa因子阻害薬イグザレルト、投与後6ヶ月以内の静脈血栓塞栓症(VTE)再発率は4%医学誌『Journal of Clinical Oncology』より


  • [公開日]2018.07.17
  • [最終更新日]2019.02.15
この記事の3つのポイント
・SELECT-D試験とは、肺血栓塞栓症(PE)や深部静脈血栓症(DVT)などを発症した固形がんまたは血液悪性腫瘍患者に対するイグザレルトとダルテパリンの静脈血栓塞栓症(VTE)再発率を比較した多施設共同無作為化試験である
・本試験の主要評価項目である無作為化6ヶ月後の静脈血栓塞栓症(VTE)再発率はイグザレルト群4%に対してダルテパリン群11%、イグザレルト群で静脈血栓塞栓症(VTE)再発のリスクは57%減少した
・本試験の副次評価項目である無作為化6ヶ月後の大出血または臨床的に意味のある非大出血(CRNM)発症率はイグザレルト群6%に対してダルテパリン群4%、イグザレルト群で大出血または臨床的に意味のある非大出血(CRNM)再発のリスクは83%増加した

2018年7月10日、医学誌『Journal of Clinical Oncology』にて静脈血栓塞栓症(VTE)を発症したがん患者に対する第Xa因子阻害薬であるリバーロキサバン(商品名イグザレルト;イグザレルト)は血液凝固阻止薬であるダルテパリンの代替療法になり得るかどうかを検証したSELECT-D試験の結果がWarwick Medical School University of Warwick・Annie M. Young氏らにより公表された。

SELECT-D試験とは、肺血栓塞栓症(PE)や深部静脈血栓症(DVT)などを発症した固形がんまたは血液悪性腫瘍患者(N=406人)に対して1日2回イグザレルト15mgを3週間投与後に1日1回20mgを6ヶ月投与する群(N=203人)、またはダルテパリン200単位/kgを1ヶ月間連日投与後に150単位/kgを5ヶ月間連日投与する群(N=203人)に無作為化に振り分け、主要評価項目として無作為化6ヶ月後の静脈血栓塞栓症(VTE)再発率、副次評価項目として無作為化6ヶ月後の大出血または臨床的に意味のある非大出血(CRNM)発症率を比較検証した多施設共同無作為化試験である。

本試験に登録されたイグザレルト群、ダルテパリン群それぞれの患者背景は下記の通りである。年齢中央値はイグザレルト群67歳(22-87歳)に対してダルテパリン群67歳(34-87歳)。性別は男性57%(N=116人)に対して48%(N=98人)。BMI中央値は26.7kg/m2に対して26.6kg/m2。ECOG Performance Statusはスコア0が29%(N=58人)に対して30%(N=61人)、スコア1が44%(N=90人)に対して47%(N=95人)、スコア2が26%(N=52人)に対して21%(N=43人)。

原発腫瘍診断時からの経過時間は6.4ヶ月に対して6.0ヶ月。原発腫瘍の種類は大腸がん27%(N=55人)に対して23%(N=47人)、肺がん11%(N=22人)に対して12%(N=25人)、乳がん10%(N=20人)に対して10%(N=20人)、膵がん9%(N=19人)に対して5%(N=11人)、卵巣がん6%(N=12人)に対して9%(N=18人)などである。

静脈血栓塞栓症(VTE)発症リスクの高いがんの占める割合はイグザレルト群、ダルテパリン群それぞれ83%(N=169人)に対して84%(N=170人)。発症した静脈血栓塞栓症(VTE)の種類は症候性静脈血栓塞栓症(VTE)47%(N=95人)に対して48%(N=98人)、肺血栓塞栓症(PE)19%(N=40人)に対して18%(N=38人)、深部静脈血栓症(DVT)25%(N=53人)に対して28%(N=57人)などである。

以上の背景を有する患者に対する本試験の結果は下記の通りである。主要評価項目である無作為化6ヶ月後の静脈血栓塞栓症(VTE)再発率はイグザレルト群4%(95%信頼区間:2%-9%)に対してダルテパリン群11%(95%信頼区間:7%-16%)、イグザレルト群で静脈血栓塞栓症(VTE)再発のリスクは57%減少した(ハザード比:0.43,95%信頼区間:0.19-0.99)。なお、静脈血栓塞栓症(VTE)を無作為化6ヶ月後以内に再発した患者はイグザレルト群8人、ダルテパリン群18人、合計26人であった。

副次評価項目である無作為化6ヶ月後の大出血または臨床的に意味のある非大出血(CRNM)発症率はイグザレルト群6%(95%信頼区間:3%-11%)に対してダルテパリン群4%(95%信頼区間:2%-8%)、イグザレルト群で大出血または臨床的に意味のある非大出血(CRNM)再発のリスクは83%増加した(ハザード比:1.83,95%信頼区間:0.68-4.96)。

なお、6ヶ月全生存率(OS rate)はイグザレルト群75%(95%信頼区間:69%-81%)に対してダルテパリン群70%(95%信頼区間:63%-76%)、無作為化6ヶ月後以内に死亡した患者はイグザレルト群48人、ダルテパリン群56人、合計104人であった。

以上のSELECT-D試験の結果よりAnnie M. Young氏らは以下のように結論を述べている。”ダルテパリンに比べてイグザレルトでは静脈血栓塞栓症(VTE)の再発率は低率ですが、大出血または臨床的に意味のある非大出血(CRNM)の再発リスクは高率であることが本試験より示されました。”

Comparison of an Oral Factor Xa Inhibitor With Low Molecular Weight Heparin in Patients With Cancer With Venous Thromboembolism: Results of a Randomized Trial (SELECT-D)(DOI: 10.1200/JCO.2018.78.8034 Journal of Clinical Oncology 36, no. 20 (July 10 2018) 2017-2023.)

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