前治療歴のある転移性去勢抵抗性前立腺がん(mCRPC)患者に対するリムパーザ+ザイティガ併用療法、相同組み換え修復(HRR)遺伝子変異の有無に関係なく画像診断に基づく無増悪生存期間(rPFS)を延長する医学誌『The Lancet Oncology』より


  • [公開日]2018.06.12
  • [最終更新日]2018.07.05
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・Study 08試験とはタキサン化学療法による前治療歴のある転移性去勢抵抗性前立腺がん(mCRPC)患者に対するリムパーザ+ザイティガ併用療法、ザイティガ単剤療法有効性を比較検証した第II相試験である
・本試験の主要評価項目である画像診断に基づく無増悪生存期間(rPFS中央値はリムパーザ群13.8ヶ月に対してプラセボ群8.2ヶ月(ハザード比 0.65,95%信頼性区間:0.44-0.97,p=0.034)を示した
・事前に計画された探索的なサブグループ解析の結果、HRR遺伝子変異状況別の画像診断に基づく無増悪生存期間(rPFS)中央値はHRR遺伝子変異陽性、野生型HRR、部分的なHRR遺伝子変異陽性などステータスに関係なくリムパーザ群で画像診断に基づく無増悪生存期間(rPFS)の延長が示された

2018年6月4日、医学誌『THE LANCET Oncology』にて相同組み換え修復(HRR)遺伝子変異の有無に関係なく、タキサン系化学療法による前治療歴のある転移性去勢抵抗性前立腺がん(mCRPC)患者に対するオラパリブ(商品名リムパーザ;以下リムパーザ)+アビラテロン(商品名ザイティガ;以下ザイティガ)併用療法のザイティガ単剤療法に対する有効性を比較検証した第II相のStudy 08試験(NCT01972217)の結果がThe Christie and Salford Royal Hospitals・Noel Clarke氏らにより公表された。

Study 08試験とは相同組み換え修復(HRR)遺伝子変異の有無に関係なく、タキサン系化学療法による前治療歴のある転移性去勢抵抗性前立腺がん患者(N=142人)に対して1日1回リムパーザ300mg+1日1回ザイティガ250mg併用療法を投与する群(N=71人)、またはプラセボ+1日1回ザイティガ250mg併用療法を投与する群(N=71人)に無作為に振り分け、主要評価項目として画像診断に基づく無増悪生存期間(rPFS)、副次評価項目として2次治療までの無増悪生存期間(PFS2)、全生存期間OS)、健康関連クオリティオブライフなどを比較検証した国際多施設共同二重盲検下の第II相試験である。

本試験に登録された患者背景はリムパーザ群、プラセボ群それぞれ下記の通りである。年齢中央値はリムパーザ群70歳(65-75歳)に対してプラセボ群67歳(62-74歳)。人種は白人94%(N=67人)に対して94%(N=67人)、アジア人1%(N=1人)に対して0%。ECOG Performance Statusはスコア0が48%(N=34人)に対して54%(N=38人)、スコア1が51%(N=36人)に対して42%(N=30人)、スコア2が1%(N=1人)に対して1%(N=1人)。

前立腺特異抗原中央値は86μg/L(23-194)に対して47μg/L(21-199)。骨転移の広がり程度は骨のみ46%(N=33人)に対して46%(N=33人)、軟部組織のみ11%(N=8人)に対して15%(N=11人)、骨・軟部組織42%(N=30人)に対して38%(N=27人)。

骨転移個数は0個が7%(N=5人)に対して8%(N=6人)、1個が4%(N=3人)に対して6%(N=4人)、2-4個が34%(N=24人)に対して51%(N=36人)、5-9個が55%(N=39人)に対して35%(N=25人)。

HRR遺伝子変異ステータスはHRR遺伝子変異陽性が15%(N=11人)に対して14%(N=10人)、野生型HRRが21%(N=15人)に対して28%(N=20人)、部分的なHRR遺伝子変異陽性が63%(N=45人)に対して58%(N=41人)。前治療歴はドセタキセルが100%(N=71人)に対して100%(N=71人)、カバジタキセル(商品名ジェブタナ)が14%(N=10人)に対して13%(N=9人)、ザイティガが0%に対して1%(N=1人)。

以上の背景を有する患者に対する本試験の結果は下記の通りである。主要評価項目である画像診断に基づく無増悪生存期間(rPFS)中央値はリムパーザ群13.8ヶ月に対してプラセボ群8.2ヶ月(ハザード比 0.65,95%信頼性区間:0.44-0.97,p=0.034)を示した。

また事前に計画された探索的なサブグループ解析の結果、HRR遺伝子変異状況別の画像診断に基づく無増悪生存期間(rPFS)中央値は下記の通りである。HRR遺伝子変異陽性患者ではリムパーザ群17.8ヶ月に対してプラセボ群6.5ヶ月(ハザード比 0.74,95%信頼性区間:0.26-2.12)、野生型HRR患者ではリムパーザ群15.0ヶ月に対してプラセボ群9.7ヶ月(ハザード比 0.52,95%信頼性区間:0.24-1.15)、部分的なHRR遺伝子変異陽性患者ではリムパーザ群13.1ヶ月に対してプラセボ群6.4ヶ月(ハザード比 0.67,95%信頼性区間:0.40-1.13)、HRR遺伝子変異状況を問わずリムパーザ群で画像診断に基づく無増悪生存期間(rPFS)の延長が示された。

副次評価項目である2次治療までの無増悪生存期間(PFS2)中央値はリムパーザ群23.3ヶ月に対してプラセボ群18.5ヶ月(ハザード比 0.79,95%信頼性区間:0.51–1.21)、全生存期間(OS)中央値はリムパーザ群22.7ヶ月に対してプラセボ群20.9ヶ月(ハザード比 0.91,95%信頼性区間:0.60–1.38)を示した。

一方の安全性として、全グレードの治療関連有害事象(TRAE)発症率はリムパーザ群93%(N=66人)に対してプラセボ群80%(N=57人)の患者で確認され、最も多くの患者で確認されたグレード1または2の治療関連有害事象(TRAE)はリムパーザ群、プラセボ群でそれぞれ下記の通りである。吐き気はリムパーザ群37%(N=26人)に対してプラセボ群18%(N=13人)、便秘は25%(N=18人)に対して11%(N=8人)、背部痛は24%(N=17人)に対して18%(N=13人)。

また、グレード3以上の治療関連有害事象(TRAE)発症率はリムパーザ群54%(N=38人)に対してプラセボ群28%(N=20人)の患者で確認され、プラセボ群よりもリムパーザ群で多かったグレード3以上の治療関連有害事象(TRAE)は下記の通りである。貧血はリムパーザ群21%(N=15人)に対してプラセボ群0%、肺炎は6%(N=4人)に対して4%(N=3人)、心筋梗塞は6%(N=4人)に対して0%。なお、リムパーザ群の安全性プロファイルは概ね管理可能でありプラセボ群と比較してクオリティオブライフへの悪影響は見られなかった。

以上のStudy 08試験の結果よりNoel Clarke氏らは以下のように結論を述べている。”タキサン系化学療法による前治療歴のある転移性去勢抵抗性前立腺がん(mCRPC)患者に対するリムパーザ+ザイティガ併用療法は、ザイティガ単剤療法よりも画像診断に基づく無増悪生存期間(rPFS)をはじめ臨床的意義ある有効性を示し、その有効性はHRR遺伝子変異の状態とは無関係である可能性が示唆されました。”

Olaparib combined with abiraterone in patients with metastatic castration-resistant prostate cancer: a randomised, double-blind, placebo-controlled, phase 2 trial(THE LANCET Oncology, DOI: https://doi.org/10.1016/S1470-2045(18)30365-6)

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