前治療歴のある進行再発上皮性卵巣がん患者に対する抗PD-1抗体薬キイトルーダ単剤療法、全奏効率(ORR)は8%とあまり高くない米国臨床腫瘍学会(ASCO 2018)より


  • [公開日]2018.07.03
  • [最終更新日]2019.02.15
この記事の3つのポイント
・KEYNOTE-100試験とは、前治療歴のある進行再発上皮性卵巣がん、卵管がん、原発性腹膜がん患者に対して抗PD-1抗体薬であるキイトルーダ単剤療法の有効性を検証した第II相試験である
・本試験の主要評価項目である全奏効率ORR)は患者全体で8%、コーホートA群で7.4%、コーホートB群で9.9%であった
・本試験の副次評価項目である病勢コントロール率DCR)は患者全体で37.2%、コーホートA群で37.2%、コーホートB群で37.4%であった

2018年6月1日より5日までアメリカ合衆国・イリノイ州・シカゴで開催された米国臨床腫瘍学会(ASCO 2018)にて、進行再発上皮性卵巣がん、卵管がん、原発性腹膜がん患者に対する抗PD-1抗体薬であるペムブロリズマブ(商品名キイトルーダ;以下キイトルーダ)単剤療法の有効性、安全性を検証した第II相のKEYNOTE-100試験(NCT02674061)の中間報告がDana-Farber Cancer Institute・Ursula A. Matulonis氏らにより公表された。

KEYNOTE-100試験とは、前治療歴のある進行再発上皮性卵巣がん、卵管がん、原発性腹膜がん患者(N=376)に対して3週間に1回キイトルーダ200mg単剤療法を投与し、主要評価項目として全奏効率(ORR)、PD-L1発現レベルに準じた全奏効率(ORR)、副次的評価項目として奏効持続期間(DOR)、病勢コントロール率(DCR)、安全性などを検証した第II相試験である。なお、PD-L1の発現レベルはCPS(=【[PD-L1陽性の腫瘍細胞+リンパ球+マクロファージ数]/全細胞数】×100) により測定している。

また、本試験は下記の2コーホートに分かれている。コーホートA(N=285人)では前治療歴3レジメン以下の化学療法の前治療歴があり、前回プラチナ製剤による治療終了後から再発治療開始までの期間(PFI)または前回化学療法終了後から再発治療開始までの期間(TFI)が3カ月以上~12カ月までの進行再発上皮性卵巣がん、卵管がん、原発性腹膜がん患者を対象にしている。

コーホートB(N=91人)では前治療歴4~6ラインの化学療法の前治療歴があり、前回プラチナ製剤による治療終了後から再発治療開始までの期間(PFI)または前回化学療法終了後から再発治療開始までの期間(TFI)が3ヶ月以上の進行再発上皮性卵巣がん、卵管がん、原発性腹膜がん患者を対象にしている。

本試験に登録された全体の患者背景は下記の通りである。年齢中央値61歳(25-89歳)。ECOG Performance Statusはスコア0が64%(N=242人)、スコア1が36%(N=134人)。卵巣がんの種類は高悪性度漿液性腺がん(HGSC)75%(N=283人)、類内膜腺がん7%(N=28人)、低悪性度漿液性腺がん(LGSC)6%(N=21人)、卵巣明細胞腺がん5%(N=19人)、その他12%(N=25人)。

前治療歴は1レジメン23%(N=85人)、2レジメン32%(N=121人)、3レジメン21%(N=79人)、4レジメン11%(N=42人)、5レジメン以上13%(N=49人)。

以上の背景を有する患者に対する本試験の結果は下記の通りである。主要評価項目である全奏効率(ORR)は患者全体で8%(95%信頼区間:5.4%-11.2%)、コーホートAで7.4%(95%信頼区間:4.6%-11.0%)、コーホートBで9.9%(95%信頼区間:4.6%-17.9%)であった。

また、奏効率(RR)の内訳は完全奏効(CR)が患者全体で1.9%(N=7人)、コーホートAで1.7%(N=5人)、コーホートAで2.2%(N=2人)、部分奏効(PR)が患者全体で6.1%(N=23人)、コーホートAで5.6%(N=16人)、コーホートAで7.7%(N=7人)であった。

もう1つの主要評価項目であるPD-L1の発現レベルに準じたCPS1未満群、CPS1以上群、CPS10以上群の全奏効率(ORR)は下記の通りである。コーホートAのCPS1未満群(N=107人)で3.7%(95%信頼区間:1.0%-9.3%)、CPS1以上群(N=147人)で10.2%(95%信頼区間:5.8%-16.3%)、CPS10以上群(N=60人)で16.7%(95%信頼区間:8.3%-28.5%)であった。

コーホートBのCPS1未満群(N=34人)で8.8%(95%信頼区間:1.9%-23.7%)、CPS1以上群(N=50人)で10.0%(95%信頼区間:3.3%-21.8%)、CPS10以上群(N=22人)で18.2%(95%信頼区間:5.2%-40.3%)であった。

以上のPD-L1の発現レベルに準じた全奏効率(ORR)の結果より、コーホートA、コーホートBともにCPS10以上群で奏効率は良好であり、また完全奏効(CR)が確認された7例全てがCPS10以上であった。

副次評価項目である病勢コントロール率(DCR)は患者全体で37.2%(95%信頼区間:32.3%-42.3%)、コーホートAで37.2%(95%信頼区間:31.6%-43.1%)、コーホートBで37.4%(95%信頼区間:27.4%-48.1%)であった。奏効持続期間(DOR)中央値は患者全体で8.2ヶ月(1.8-12.3ヶ月)で、奏効した65.5%の患者で6ヶ月以上の効果が持続していた。

一方の安全性としては、5%以上の患者で確認された全患者群における全グレードの治療関連有害事象(TRAE)発症率は73.1%(N=275人)で、その内訳は下記の通りである。疲労33.8%(N=127人)、吐き気15.4%(N=58人)、食欲減退10.6%(N=40人)、食欲減退10.6%(N=40人)、甲状腺機能低下症10.6%(N=40人)、下痢10.1%(N=38人)、痒み8.2%(N=31人)、皮膚障害7.2%(N=27人)、嘔吐5.6%(N=21人)、5.3%(N=20人)、関節痛5.3%(N=20人)、甲状腺機能亢進症5.3%(N=20人)であった。

以上のKEYNOTE-100試験の中間報告の結果より、Ursula A. Matulonis氏らは以下のように結論を述べている。”治療歴のある進行再発卵巣がん患者に対するキイトルーダ単剤療法の全奏効率は8%とあまり良好ではなかった。しかし、奏効持続期間(DOR)中央値は8.2ヶ月を示し、奏効を示した65.5%の患者で6カ月以上効果が持続した。”

Antitumor activity and safety of pembrolizumab in patients with advanced recurrent ovarian cancer: Interim results from the phase 2 KEYNOTE-100 study.(ASCO 2018, Abstract No.5511)

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