EGFR遺伝子変異陽性進行性非小細胞肺がん患者に対する一次治療としての抗VEGF抗体薬アバスチン+EGFR阻害剤タルセバ併用療法、タルセバ単剤療法に比べて無増悪生存期間(PFS)を統計学的有意に改善する米国臨床腫瘍学会(ASCO 2018)より


  • [公開日]2018.06.26
  • [最終更新日]2019.02.15
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・NEJ026試験とは、EGFR遺伝子変異のある進行性非小細胞肺がん患者に対して抗VEGF抗体薬であるアバスチン+EGFRチロシンキナーゼ阻害剤であるタルセバ併用療法とタルセバ単剤療法有効性を比較検証した第III相試験である
・本試験の主要評価項目である無増悪生存期間PFS中央値はタルセバ+アバスチン併用療法群16.9ヶ月に対してタルセバ単剤療法群13.3ヶ月、タルセバ+アバスチン併用療法群で病勢進行または死亡(PFS)のリスクを統計学的有意に39.5%減少した
・本試験の安全性としては、タルセバ単剤療法よりもタルセバ+アバスチン併用療法群で多く発症が確認された治療関連有害事象(TRAE)は高血圧、蛋白尿であった

2018年6月1日より5日までアメリカ合衆国・イリノイ州・シカゴで開催された米国臨床腫瘍学会(ASCO 2018)にて、EGFR遺伝子変異のある進行性非小細胞肺がん患者に対する一次治療としての抗VEGF抗体薬であるベバシズマブ(商品名アバスチン;以下アバスチン)+EGFRチロシンキナーゼ阻害剤であるエルロチニブ(商品名タルセバ;以下タルセバ)併用療法とタルセバ単剤療法の有効性を比較検証した第III相のNEJ026試験(UMIN000017069)の結果が聖マリアンナ医科大学・古屋直樹氏らにより公表された。

NEJ026試験とは、EGFR遺伝子変異のある化学療法ナイーブ進行性非小細胞肺がん患者に対して1日1回タルセバ150mg+3週間に1回アバスチン15mg/kg併用療法を投与する群(N= 112)、または1日1回タルセバ150mg単剤療法を投与する群(N= 114)に無作為に振り分け、主要評価項目として無増悪生存期間(PFS)、副次評価項目として全生存期間OS)、奏効率(RR)、安全性などを比較検証した非盲検の第III相試験である。

本試験のフォローアップ期間中央値12.4ヶ月時点における結果、主要評価項目である無増悪生存期間(PFS)中央値はタルセバ+アバスチン併用療法群16.9ヶ月(95%信頼区間: 14.2-21.0ヶ月)に対してタルセバ単剤療法群13.3ヶ月(95%信頼区間: 11.1-15.3ヶ月)、タルセバ+アバスチン併用療法群で病勢進行または死亡(PFS)のリスクを統計学的有意に39.5%減少(ハザード比:0.605,95%信頼区間:0.417-0.877,p = 0.0157)した。

一方の安全性として、タルセバ単剤療法よりもタルセバ+アバスチン併用療法群で多く発症が確認された治療関連有害事象(TRAE)は高血圧、蛋白尿であったが、それ以外の治療関連有害事象(TRAE)発症率は両群間で統計学的有意な差は確認されなかった。なお、治療関連有害事象(TRAE)による死亡は1例も確認されなかった。

以上のNEJ026試験の結果より古屋直樹氏らは以下のように結論を述べている。”EGFR遺伝子変異のある進行性非小細胞肺がん患者に対する一次治療としてのタルセバ+アバスチン併用療法はタルセバ単剤療法に比べて無増悪生存期間(PFS)を改善し、忍容性も良好でした。以上の結果より、新しい標準治療の選択肢の1つとしてこの治療法は臨床で考慮されるべきでしょう。”

Phase III study comparing bevacizumab plus erlotinib to erlotinib in patients with untreated NSCLC harboring activating EGFR mutations: NEJ026.(ASCO 2018, Abstract No.9006)

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