BRCA1/2遺伝子変異陽性早期乳がん患者に対する術前化学療法としてのPARP阻害薬タラゾパリブ、病理学的完全奏効率(pCR)53%を示す米国臨床腫瘍学会(ASCO 2018)より


  • [公開日]2018.06.11
  • [最終更新日]2018.06.11
この記事の3つのポイント
・本試験はBRCA1/2遺伝子変異陽性HER2陰性早期乳がん患者に対する術前化学療法としてのPARP阻害薬タラゾパリブの有効性を検証した第II相試験である
・本試験の主要評価項目である残存腫瘍量(RCB)はタラゾパリブが投与された63%(N=12/19人)の患者でRCB0またはRCB1を達成した
・本試験の主要評価項目である病理学的完全奏効(pCR)またはRCB0を達成した患者はトリプルネガティブ乳がん患者8人を含む53%(N=10/19人)であった

2018年6月1日より5日までアメリカ合衆国・イリノイ州・シカゴで開催された米国臨床腫瘍学会(ASCO 2018)にて、BRCA1/2遺伝子変異のある早期乳がん患者に対する術前化学療法としてのポリ(ADP-リボース)ポリメラーゼ(PARP)阻害薬であるタラゾパリブ(talazoparib)単剤療法の有効性を検証した第II相試験(NCT02282345)の結果がThe University of Texas MD Anderson Cancer Center・Jennifer Keating Litton氏らにより公表された。

本試験は、BRCA1/2遺伝子変異陽性HER2陰性早期乳がん患者(N=20人)に対して術前化学療法として1日1回タラゾパリブ1mgを6ヶ月投与し、主要評価項目として残存腫瘍量(RCB)を検証した単群非盲検下の第II相試験である。なお、タラゾパリブによる術前化学療法後に手術、主治医判断による術後化学療法の治療を実施している。

本試験に登録された患者背景は下記の通りである。年齢中央値38歳(23-58歳)。BRCA遺伝子変異ステータスはBRCA1遺伝子変異陽性(N=16人)、BRCA2遺伝子変異陽性(N=4人)。乳がんのサブタイプはトリプルネガティブ乳がん(N=17人)、ホルモン受容体陽性乳がん(N=3人)。病期ステージI(N=5人)、ステージII(N=12人)、ステージIII(N=3人)。

以上の背景を有する患者に対する本試験の結果は下記の通りである。主要評価項目である残存腫瘍量(RCB)は63%(N=12/19人)の患者でRCB0またはRCB1を達成した。また、病理学的完全奏効(pCR)またはRCB0を達成した患者はトリプルネガティブ乳がん患者8人を含む53%(N=10/19人)であった。なお、本試験に登録された20人の内1人の患者ではタラゾパリブによる効果が確認されなかったため、術前化学療法として他の治療が実施されている。

一方の安全性として、タラゾパリブの投与により確認された治療関連有害事象(TRAE)は下記の通りである。グレード1または2の治療関連有害事象(TRAE)は吐き気、倦怠感、好中球減少症、脱毛、目眩、呼吸困難、グレード3は貧血、好中球減少症、尿路感染症、グレード4は血小板減少症であった。

以上の第II相試験の結果よりJennifer Keating Litton氏は下記のように述べている。”トリプルネガティブ乳がんを含むBRCA1/2遺伝子変異のある早期乳がん患者に対して、術前化学療法としてのタラゾパリブは高い病理学的完全奏効(pCR)を示し、副作用も管理可能であることが本試験により証明されました。”

2018 ASCO: Neoadjuvant Use of PARP Inhibitor Shows Promise in Early-Stage, BRCA-Mutated Breast Cancer(The ASCO Post 2018/6/5, ASCO 2018, Abstract No.508)

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